宰相子息とイリア1
宰相子息視点の?話です。
イリア14歳。兄、宰相子息25歳。
筋肉の国は平和な国だ。
多くの人は『水と安全はタダで手に入る』と思っている。
下界では日常茶飯事である、強盗・殺人・性犯罪・放火・詐欺・誘拐などの凶悪犯罪なんぞ、ここでは終ぞ聞かない。あってもスリやケンカなどの軽犯罪で、死ぬまで関わらない人も珍しくない。
騎士が存在しているのも、必要に迫られてではなく、習慣や憧れが主な理由だ。
「こんなんでいざという時、大丈夫かしら?」と要らぬ心配をする貴族のイリアでさえ、護衛を付けて出歩いたりしない。何時でも何処へでも一人で出掛けるし、周りもそれが普通だと思っている。勿論護衛が付く時もあるが。
前世で一般人だったイリアには大変有り難いこの国の常識だった。
ただ、王族には、実際には護衛を必要としていないにしろ、諸外国への『見栄』の為に『飾り』として護衛と従者を付けていた。
イリアは王族ではなく、貴族に生まれたことを感謝している。
こんなに平和で緑豊かで穏やかな国民が多い美しい国に生まれた幸運に、心の底から感謝している。
宰相子息は二十五歳になる。
東の町を治める侯爵家の長男で姉が二人(既婚)と弟がいる。
宰相職を継ぐべく父の補佐をしている。
祖父も曾祖父も宰相だったため伯爵家は宰相家とも呼ばれている。
宰相補佐と兼業騎士が今現在の仕事で、王都にある別宅に一人で暮らしている(しかし、ここ最近は母親が『結婚』の二文字を連れ立って泊まりに来るので大変迷惑している)ので帰宅時間も短く済むし、東西南北の町への山の登り降りもないので楽だし、自分で言うのは何だが女性の扱いには長けているので誘いはひっきりなしだし、と、自由を謳歌していた。
母や姉二人が「結婚」「結婚」「結婚」と口煩くても、自由を謳歌していた。
と、いうか。
母と姉二人が『結婚』と言う度に結婚に対して嫌悪感が増していった気がする。言われる度に意固地になって「まだ結婚はしない」と思うようになっていった。
だから、逆に『求婚』されまくっている彼女に興味が出た。
妹に対する溺愛っぷりが半端ないといわれる北の侯爵令息の妹だとしても、会ってみたいと思った。
ただそれだけだった。
話をするべく彼女が一人になる時を狙う。彼女の側に誰も居ない時を狙う。特にあの兄が居ない時を狙うっ!
彼女は悪友が訓練所に居る時(自らの鍛練であったり他の騎士の教育であったり)に見学に来ることが多いようだ。最も悪友は数年前に、副団長職に就いて以来事務仕事が増え、今日のように王城内の騎士団室で机に向かっていることが多くなった。
つまり、ココが狙い所な訳だ。
今日のような日、彼女は生まれ育った北の町で友人と遊ぶか、この王都で買い物をするか、だ。
そして今日は王都に来ていると思われる。
なぜなら『氷の帝国』から来た行商が王都で店を開けるからだ。
彼女はまず間違いなくコレ目当てに王都へ来る。仮に悪友が訓練所に居たとしても、コレをメインに悪友をついでに王都へ来ただろう。
南にある『氷の帝国』の行商は南の町を抜けて、ここ王都へ来、再び南の町を抜けて国へ帰るのだ。つまり、南の町と王都でしか店を開かない。彼女は北の町に住んでいるので王都に来ないと、氷の帝国の商品を購入することが出来ない。
だから、お買い物好きな彼女は絶対に王都へ来る。
これが、ここ一月で(己個人の)部下を使って調べた彼女の情報である。
プライバシィィィィィッ!!!
前話と矛盾している所があったので直しました。
申し訳ございませんでしたぁぁぁ!
王族には護衛と従者が付く、宰相子息には姉二人と弟がいる、書き足しました2016.8.31