筋肉の国
マッチョの方、不快にさせてましたら、すみません。
筋肉の国に至る説明ですので、さら~と読んでください。
筋肉の国は、山の上にある。
大陸を南北に走る巨大山脈の東側の端に、ひっそりとある。
標高は分からない。わたくしは前世の曖昧な記憶を引っ張りだす。下界を望む感覚を比べてみて、富士山よりは低いだろうか、と思う。
東端は遠く海を望むものの、とぉーーっても高い崖が海とその隣国との交流を阻む。とぉーーっても、というのは聞いた話で、実際に見たことはないからからだ。危険だから近づくなと言われているし、そもそもわたくしは、山を下りたこと(つまり国から出たこと)がない。
そう、わたくしに限らずこの国の人々は滅多に下界に行かない。交流がない訳ではない。最低月一度は行商がやってくるし、多くはないがフラ~~と旅人もやってくる。
我々は喜色を浮かべて彼らを歓迎し、色々な話をせがんでいる。
興味深そうに熱心に彼らの話を聴いている。
にもかかわらず、下界へ行かない。
まあ、気持ちは分かる。
下界は怖い所、というイメージが徐々にに形成されてしまったのだ。
強盗・誘拐・殺人・爆発・内乱・国王暗殺・帝崩御に伴う飢饉・戦争、あと魔女とか……。
色々な国に行ってみたいけど、正直、治安の悪い所には行きたくない。
この国の人々は穏やかで平和で清潔で治安も良いとなると、尚更行きたくなくなる。話を聞くだけで満足する、ことにする。
そんな限られた人達との関わりだけで、国民は下界の人々も『筋肉至上主義』だと勘違いしている。
行商も旅人も何故かマッチョだからだ。多分、この山の上の国に来る為には必然的に山を登り降りしなければならないからだろう。
あまりにも長い間マッチョばかりやって来るから、一時期わたくしの頭の方がおかしいのかと、本気で思った。
即ち、この国がマッチョなのではなく、この世界がマッチョなのだと……。
だが。
杞憂に終わった。
この国だけがマッチョだった。
ああ、良かった……のか?
|山の上の<マッチョ>国は建国二百五十年程の歴史の浅い国だ。
元々は地図にも載ってないような小さな集落だった。
どこぞの国を追われた戦士(王子とか騎士とか諸説ある)が、山へ迷い込み、塔に囚われた姫(集落の長の娘)を助け、感謝され、婿にと望まれ、そこへ戦士を慕う仲間が追いかけてきて、皆でここに腰を落ち着けることとなった。
彼らは追っ手を恐れて、常に身体を鍛えた。
愛する人を守るため、新しい家を守るため、彼らは今まで以上に剣を振るった。
険しい山道も、薄い空気も彼らを助けた。
そして、彼らは見事な筋肉を手に入れたのだ。
結局 追っ手は現れなかったが、鍛練を止めることはなかった。
筋肉は脈々と承け継げられ、今に至る。
彼らの血をより濃く承け継いだのが、イリアの周りを取り囲む騎士達だった。
拙い文章ですが、読んでくださって有り難うございます♪
建国150年程を250年程に変更しました。2016.1.27
二ヶ所書き足しましたが、内容は大して変わりません。2016.2.22