|公爵家嫡男《側近》とイリア2
引き続き側近視点語りです。
13歳なのに小学生の作文みたい……自分の文才の無さが憎いっ!!
殿下が少女に一歩近付きました。
対して少女は一歩下がりました(いえ、座っているので肩を退きました)。
目に見えて殿下は青くなりました。殿下は何も言えなくなってしまったようですが、僕もびっくりして言葉もありません。
だって、殿下が女性に避けられるなんて!
殿下は女性から積極的なアプローチを受けてます。殿下もさらりとそれに乗ります。
笑い掛けられれば微笑み返し、喋り掛けられれば耳を傾け相槌をうち、腕を組まれれば腰に手をやってエスコートします。僕が赤くなるくらい自然にスマートに女性をエスコートします。
殿下は女性に慣れてますしモテます。
影で『女ったらし』などと口さがない事を言われてますが、女性がほっとかないんてす、仕方ないでしょう。
なので殿下は女性に避けられた事がないのです。
恐らくこれが初めてです。
僕は何とお声を掛けていいのか分かりませんでした。
ただ、殿下がふらふら~と心ここにない足取りで丘を下って行くのを(護衛の騎士は無言で追い掛けます)、目の端に留めながら彼女に問い掛けました。
何故彼女が殿下を避けたのか正直気になりますが、僕は殿下の従者ですし公爵家の人間として、好奇心で避けた理由を問うのは恥ずかしい行いです。心の隅にでも避けて置きましょう。
「あのっ。『ねっちゅうしょう』という病は水を飲んでいれば大丈夫なのですか?他に気を付けることはありますか?」
彼女は濃い紫色の大きな瞳をさらに大きく瞬かせて、そして明るく笑いました。
「ええ。熱中症は暑い時家の中でも外でも罹ります。熱くなった体温を下げる為に水分が必要ですの。喉が渇いてなくても水を飲むようになさって。団扇で扇いだりして涼しく過ごすと良いですわ」
「ありがとうございます!」
言って頭を下げれば。
「どういたしまして」
と、彼女も頭を下げました。
優しげな笑顔は本当に女神さまみたいで、先程感じた『残念』という気持ちはどこかへ消えてしまいました。そしてその笑顔が僕だけに向けられたことが、何故か嬉しくて、でも誰にも知られたくなくて、僕は努めて無表情になるよう頑張りました。でも、追い付いた護衛の騎士に、ぎょっとした目で見られたので・・・上手く表情を作れなかったようです。
彼女の名前はイリアというそうです。北の侯爵令嬢だそうです。
「イリア・・・さま」
イリアに医学的知識はないので、ニュースを思い起こしながら、こんな感じ~と説明しております。皆さんも熱中症には気を付けて下さい!
ありがとうございました♪
少女を彼女に訂正しました。2016.2.22