|南の次男坊《正騎士》とイリア4
王子の章より話数が多いですが、王子より正騎士の方がお気に入りという訳では、ありません。たまたまです。
本日2話目になります!
南の次男坊が心の中で「よしっ!」と呟いたことなど、お見通しのようだ。鬼教官に睨まれた。ご丁寧に妹を抱き締めてから。
「一人で、ちゃんと家まで帰れるな」
一人で、の部分をやけに強調した。
それは妹に向けて言ってはいるが、これは南の次男坊に「送るな」と牽制している。そんな兄の心を知ってか知らずか、妹はクスクスと楽しそうに笑う。
「まあ、お兄様。わたくしもう十二歳ですわよ」
「だから、心配なんだよ」
兄は軽くため息をついた。つられて、南の次男坊もため息が出た。
十二歳から十三歳へ。
少しずつ大人の階段を登って行く・・・。
それが、心配なんだと彼のため息は語っているようで。
何故か南の次男坊の胸もチクリと疼いた気がした。
鬼教官は他の騎士にも王城に戻る旨を伝える為、丘を下りて行った。
「さあ、貴方も訓練に戻られたら?わたくしは帰りますわ」
北の令嬢はパンパンと手を叩いて促した。
「いや、送る」
鬼教官の「送るな」という視線は見なかったことにしよう。
「結構ですわ!」
北の令嬢は言い淀む。少し逡巡してから南の次男坊を見た。
「――正騎士を目指すなら、ちゃんと鍛練を積むべきですわよ!!」
南の次男坊は喫驚して北の令嬢をまじまじと見た。
服を着たおかげだろう、今度は目を反らされなかった。
やっぱり、照れていたんだな。
と、いうか。
「――覚えていたのか。」
昔、そういう話をしたこともあった。確か・・・鬼教官が酷い苛めに遇いながらも、正騎士になった時だ。奴の事は、昔から苦手だったが、その時は少し尊敬したのだ。あの時、正騎士に対する憧れが目標に変わった。
「当たり前ですわ。貴方ったら潤んだ目でお兄様を見てましたもの!」
「そんな目でなんか見てない」
即否定する。
「見てました!」
「見てな」
頑として否定する。
ちょっと呆れた目で見られた。
「・・・まあ、ともかく。貴方も正騎士になるんでしたら、お兄様のように努力なさいっ!!」
まったく。こいつは。
何が何でも奴に繋げやがる。
これだから――
「ブラコンは」
「なっ!!?」
あ。
すげー。
顔、真っ赤。
兄が「酷い目」にを「苛め」に変更さました。2016.2.22