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狂信者

(ここは・・・。)

いつの間にやら眠っていた様だ。

一之瀬麗華は周りを見渡す。

全く覚えが無い。

空気も何か饐えた臭いがする。

とてもまともに呼吸など出来ない。

そんな麗華に声をかける者が現れた。

「おや? お目覚めかな? 我が眠り姫?」

振り向くとよく知る人物がいた。

「重村先生?」

「ふふふ、今日からは悪魔と呼ばれることになるがね。」

「! 重村先生は悪魔信仰者なのですか!?」

「人を超える力を持つものに憧れを持ってしまっただけだよ。」

「少しも理解できません!」

「何と愚かな。そんな事では私の儀式の支障になるかもしれない・・・。やはり眠ったままで執り行うか?」

「何を言ってるのですか!?」

「君には難しいだろうが簡単に言うと君を生贄にして悪魔召喚を行う。」

「・・・先生は悪魔に生まれ変わるつもりですか?」

「その通りだ。そして私は魔神となり新しい世界を創る。」

「何故そんな事を・・・。」

「・・・君に言っても分からんよ。」

麗華と教員の重村幸男が睨み合うことしばし。

ふと顔を重村が逸らす。

「どうやらギルドが動いたらしい。侵入者だ。やっと見つけた穢れ無き聖女と言う生贄を取り戻しに来たようだ。最も君は逃げる事が出来ない。魔術で足枷を付けたからね。後は時間が来るのを待つだけだ。」

そう言って気味の悪い笑みを浮かべる。



その頃優は犬や猫、飼育されていたウサギなど数多の悪魔化した動物たちを刀で斬り伏せていた。

「ええぃ! 次から次へと! 退けぇ! 木っ端ぁぁぁぁぁ!」



「先生は何故こんなことを・・・。」

「暇つぶしに話してやろう・・・。私には腹違いの妹がいた。だが霊子に対して親和性も抵抗力も低い為に蔑ろにされた。そして虐めに会う様になった。その虐めはどんどん苛烈さを増していき心が壊れ始めた。」

「悪魔化したんですね・・・。」

「そうだ! 社会に何か悪い事をしたわけでもない! 普通に暮らそうとしていただけなのに霊子の親和性と抵抗力が低いというだけで虐められて心が壊された! 悪魔化したときは理性も残さない悪魔となりギルドの討伐対象として狩り殺された! その後死骸は魔術の媒体として使われた! 分かるか! 遺影しかない葬儀を取り扱う遺族の気持ちが! 分かるか! 死した後も亡骸を辱められた遺族の気持ちが! 分かるか! 身内から悪魔化した人間が出るとどうゆう目に遭うか!」

「虐めを行った者達はどうなったんですか・・・?」

「何食わぬ顔で生きていたよ。」

麗華は言葉に引っ掛かりを覚えた。

「生きて『いた』?」

「そうだ。生きて『いた』。過去形だ。個人的に制裁を加えてやったよ。」

「何をされたのですか!」

「生贄として悪魔の供物にした。彼らは約束を破らない。その証拠に私は膨大な魔力と魔術の知識を手に入れた。」

「その代り人間を止める事になるんですよ!」

「先ほど言ったはずだよ。私は魔神になると。新しい世界を創ると!」

「狂ってる! 先生は狂ってる!」

「狂ってるにはこの世界も同じだ。」



「確かに同感だね。」

重村と麗華の会話に割り込む者が現れるた。



「ギルドの手の者か!」

重村の目の先には全身黒一色の背の高い男がいた。

「人払いの法をかけていたはずなのになぜここが!」

全身黒一色の背の高い男、天川優が不敵に笑う。

「あんな雑な魔術じゃ俺の目を誤魔化す事なんか出来ねぇよ! おかげで術の中心地を簡単に割り出せたぜ! 途中の雑魚共が鬱陶しかったけどな。」

そう言って抜身の刀で自分の方を叩く。

「アンタの人生には同情はする。だが、それだけだ。やっちゃいけねぇ事をやったんだ。覚悟は出来てるだろ? 首を貰うぜ? それとも先にそこの暗がりにいる木偶人形どもを片付けようか?」

「・・・行け! 僕どもよ! 奴を殺せ!」

暗がりから人が出て来る。

否、人だったものが出て来る。

女子高生らしいが体のいたるところに損壊が見られる。

腐敗集もする。

これを見た麗華は饐えた臭いの正体を知り胃の中の物を吐き戻す。

「こいつらは?」

優の問いかけに重村は嬉しそうに答える。

「俺の妹を虐めて心を壊して悪魔化させた馬鹿女共さ! 」

「なるほど・・・。テメェが手に入れたのは死霊魔術の知識か・・・。」

優は左手でアンクレットホルスターからベレッタM84Fを抜くと哀れな動く死体に向かい弾丸を放つ。

青白い光の尾を引いてそれぞれの額に弾丸が撃ち込まれ続ける。

額に刻まれた印を破壊する事で物言わぬ亡骸に戻したのだ。

これには重村の方が驚く。

脳にまで達するように施された額に刻まれている印は生ける屍にする魔術の根源である。

それを知り正確にその印だけを銃弾で破壊した事に脅威を感じた。

死霊魔術に精通している者ならともかく昨今の狩人ならそんな事など知らない。

重村の目の前にいる若い狩人、天川優は排除すべき存在だと確信した。



(天川様が私を助けに来てくれた?)

一之瀬麗華はハンカチで口を拭きながら事の成り行きを見守るしかなかった。

だが、心が温かかった。

来て欲しいと心の中で願っていた。

そうしたら本当に来てくれた。

依頼かも知れない。

そう思うと少し悲しい。

それでも目の前の状況は変わらない。

天川優が助けに来てくれた。

(私、この状況を喜んでる?)

自分の心境に戸惑いつつ事の成り行きを見守る事にした。



優のベレッタM84Fが火を噴く。

弾丸は重村に向かって着弾する。

両膝を打ち抜き逃げれない様にした後、心臓に三発鉛玉を打ち込む。

ただ、それだけ。

重村幸男は床に倒れる。



「大丈夫か!? 何か酷い事をされなかったか!?」

優はすぐに一之瀬麗華の傍に駆け寄り身の心配をする。

「私は大丈夫です。助けていただきありがと・・・!」

麗華はあまりの事に言葉を失う。

優は気配で察する。

「心臓に三発も鉛玉を喰らって生きてる人間なんざいやしない。テメェ、もう人間を止めていたんだな・・・。」

優が振り返った先には重村幸男が立ち上がっていた。



「私の計画を邪魔などさせない・・・。」

「計画?」

眉を寄せる優に麗華が代わりに答える。

「重村は悪魔に生まれ変わる事で魔神になり世界を創り変えようとしています!」

「自我と人の姿を保ったまま悪魔になんか普通は成れねぇ! やめろ!」

「私は神となる!」

途端に地下室が光の奔流に飲み込まれる。



(クソッタレ!!)

優は内心で悪態をつき一之瀬麗華の身の安全を確保に奔る。

「破亜ァァァァァァァァァァァ!!」

気迫の籠もる声を上げる。

優の体が漆黒に包まれる。

「破亜ぁ!」

魔神『黒騎士』となり麗華に覆いかぶさる。

「天川様!!」

『喋るな! 舌をかむぞ!』

魔力による障壁を張りながら光の奔流が止むまで麗華を庇い続けた。



辺り一面が瓦礫の山となっていた。

そこに三対の巨大な純白の羽が翻り瓦礫の山を吹き飛ばす。

その羽は漆黒の甲冑を纏った存在から伸びていた。

『麗華の嬢ちゃん! 大丈夫か!?』

「・・・私は大丈夫です。」

麗華はしばし光り輝く純白の羽に魅入られていた。

(天使みたい・・・。)

『怪我もねぇようだし良しとしたいがあれを何とかせにゃならん!』

黒騎士となった優の視線の先には人、猫、犬、鼠、虫、色々な物が混ぜこぜになった吐き気を催す化け物が鎮座していた。



優はレッグホルスターからデザートイーグルを取り出し鉛玉に自分の魔力を纏わせて化け物に向かい連射する。

デザートイーグルはアクションエクスプレス弾と言うマグナムより強力な弾丸を使っているためハンドガンでは最強クラスの威力を誇る。その分強烈な反動もあるが魔神化した優にとってはたいした反動では無い。

装弾数七発全弾を命中させてその度に爆砕させるがたいして効果が無い。

『再生能力が早すぎる!』

「天川様・・・。」

『麗華の嬢ちゃん。離れてろ。久方ぶりにトコトン凶暴にならにゃぁならん!』

悪魔にあり損ねた未知の化け物と魔神『黒騎士』との壮絶な戦闘が幕を開けた。

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