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誘拐

一条綾女の依頼を終了させてから十日。

世界でも数えるほどしかいないSクラスの悪魔狩人である天川優の前には当人である一条綾女が姿を現していた。

お化け町などと言われる薄気味悪い場所に幼子が一人で来たのだ。



「・・・体の方は大丈夫なのか? そして何でここが分かった?」

一条綾女は病弱であった。

それを慮っての言葉である。

綾女の顔色は悪い。

「みんながおしえてくれました。」

そう言って表を指さす。

そこには浮浪児たちがいる。

(クラスの女どもが可愛いは正義って言ってたな・・・。)

綾女の愛らしさにほだされたのだろう。

普段の浮浪児たちなら絶対にしない事である。

「で? 何でここが分かった?」

なんとなく察しはついている。

「れいかお姉ちゃんが教えてくれました。」

(やっぱり! あのクソアマ・・・!)

病弱な人間をいつまでも立ちっ放しにしている訳のも行かない。

ましてやそれが子供となれば尚更だ。

優は自宅に上げる事にした。



「体の方は大丈夫なのか?」

きょろきょろと優の自宅を見回す綾女の注意を自分に向けるために問いかける。

「はい!」

元気に返事はするが顔色の悪さが気になる。

(何があった?)

悪魔将軍が憑りついていたために病弱であったが、それが祓われた事で生来の健康を取り戻しつつある。

だが、いきなりは元気にならない。

少しずつ健康を取り戻さなければいけないのだ。

そんな中で心労は最も避けなければならない事。

ジュースとお菓子を出しながら用件を聞く。

「それで、どうして俺の所に? 遊びにでも来たのか?」

そうすると綾女の顔がくしゃくしゃになる。

「れいかお姉ちゃんをさがしてください!」



優は装備を整え始める。

身に付ける防具は軽くて丈夫な繊維ケブラーで作られた特殊な防護スーツ。

その上にセラミック製のプロテクターを身に付ける。

左腰には霊山で採れた神聖な鉄で鍛造し呪術で強化した日本刀。

ナックルガード付きファイティングナイフをバックサイドホルスターに収納する。

左足首にアンクレットホルスターを取り付け予備の銃としてベレッタM84Fを。

右太腿にはレッグホルスターを付けて大型の軍用拳銃デザートイーグルを入れる。

そしてメインウェポンとしてサブマシンガンH&KMP5PDWを持つ。

(めんどくせぇ事になって来たな・・・。)

それでもこうして準備を整えた。

「嬢ちゃん。一之瀬家に行くぞ。」

麗華を姉と慕うこの可愛い依頼人の頭をそっと撫でながら優はバイクに跨る。

勿論、一条綾女も乗せて。



優達を出迎えたのは一之瀬家の老執事だった。

「天川様、来ていただいて申し訳ございませんが本日の所はお引き取り下さい。」

「麗華嬢ちゃんの誘拐でてんやわんやの大騒ぎなのは分かる。俺も早々に帰りてぇがそうするとこの小さいお嬢ちゃんが泣くからそうもいかねぇ。麗華の嬢ちゃんがいなくなった詳しい状況を聞きてぇんだよ。ただでさえ今夜は満月だ。何の根拠もねぇがこういう日に限って馬鹿が生贄を使って召喚の儀式とかやらかすんだよ。麗華の嬢ちゃんが生贄に選ばれた可能性が高い。」

「・・・旦那様に聞いてまいります。」

「こっちも一応高い金払って幾ばくかの情報を得ている。それを提供しよう。」



一之瀬家は警察が集まっていた。

優はその中に見知った顔を見つけて声をかける。

「冴子の姐さん。」

「!? すぐちゃん! 何でここに!?」

両手で一条綾女を抱え上げる。

「この小せぇ嬢ちゃんに泣かれた・・・。」

「世界最強の悪魔狩りでも泣く子には勝てなかった?」

「仰る通りで・・・。」

げんなりとする優を冴子と呼ばれた女性が笑う。

「それでその小さな依頼人に一之瀬麗華嬢をさがして欲しいと頼まれたわけね?」

「あぁ、早くしないと麗華の嬢ちゃんがヤバいかもしれない。」

「? どういう事?」

「私立清明学院は厳格な学校だ。なんせお金持ちのガキどもが掃いて捨てるほどいるから敷地内に出入りする人間を徹底的に監査する。にも拘らずさらったのが誰か分からない。当然内部犯を疑っているが誰が犯人か見当もつかない。ただただ、時間が経過する。」

「その通りよ。容疑者は何百人もいる生徒と先生達。しかも何処に行ったかも分からない。身代金の要求が無いから対応も出来ない。困ってるのよ・・・。」

「大枚はたいて手に入れた情報、欲しくねぇか?」

「!?」

「実は清明学院の怪談話に秘密の地下室ってのがある。」

「怪談話とは胡散臭いはねぇ・・・。」

「所がこの怪談話、魔術的な観点から見ると非常に理に適っているんだ。」

「・・・・・・。」

「俺はこれから清明学院に入り込んでその怪談話の真相を探る。」

「そんな装備で入ったら騒ぎになるから私の方から学院に連絡入れて便宜を図ってもらえるようにするわ。」

「ありがとう。それともう一つ。」

「?」

「重村幸男と言う教員を調べろ。」

「しげむらゆきお?」

「裏社会から手に入れた情報だがこいつ強烈な悪魔信仰者だ。」

「何ですって!?」

「ガサ入れした方がいい。」

「分かったわ。すぐちゃんも気を付けて!」

冴子と呼ばれた女性は各員に指示を出す。

携帯電話でも色々と連絡を取っている。

「さて、綾女の嬢ちゃんはここで待ってるんだ。」

「・・・れいかお姉ちゃんは?」

「俺が連れ帰る。」

「・・・分かりました。」

「良い子で待ってろ。」

優は綾女の頭を撫でて一之瀬邸を後にした。



清明学院は異様な静けさに包まれていた。

(人払いの法を使ったな・・・。逆を言えばこの中心地に麗華の嬢ちゃんがいる可能性が高いってなもんよ! 手間が省けるぜ!)

天川優はこの異空間になり始めた清明学院の敷地に足を踏み入れた。

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