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明日のうたが聴こえる  作者: 人見くぐい
第一章 幼稚園編
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02 入園式の日

幼稚園はいつも遊ぶ場所とは別のほうにあって、お母さんと買い物へ行く商店街を通る。


初めての場所で本当は私も不安だったけど、カズ君に大丈夫と言ったので頑張って平気にしていた。


やがてたくさん桜の花が咲いている幼稚園が見えてきた。入口には看板があって『にゅうえんしき』って書いてある、とカズ君のお母さんが教えてくれた。


その看板の前でも写真を撮ることになったけど、私達の前にもお父さんに連れられて来ていた子が写真を撮ろうとしていた。


その子はカズ君よりももっと背が小さくて、全然日に焼けてない白い顔にパッチリした目をしていて、少し茶色く長めの髪だけどカズ君と同じ半ズボンで……男の子だ。


でもその子はお父さんがいくら優しく話しかけても、ちっとも笑わない。


写真を撮り終わった後、私達へ小さく頭を下げてから建物へ入っていった二人を見て、私のお母さんとカズ君のお母さんは何か話していた。




「あら、二人とも同じ組じゃない」


お母さん達がそう言って、胸にピンク色の縁取りをしてある名札をつけてくれる。


「よかったね」


「えへへ……」


私とカズ君は顔を見合わせて笑った。ピンク色の名札は『はなぐみ』だ。


『はなぐみ』のお部屋にいくとたくさんイスがあったけど、まだあまり人はいなかった。


私とカズ君は並んで座った。


「つじむら かずのり」


私はカズ君の名札に書いてある字を読んだ。


ずっと『カズ君』だったので変な感じがする。


「よし、や……」


カズ君もマネをして私の名札を読もうとしたけど、つまってしまった。


「よしやま みき、だよ」


だから先に自分で言う。


「そっかぁ~難しいなぁ」


だけどカズ君は気にしないで、笑いながら感心している。


カズ君とそんなお話しをしている間に、お部屋には段々人が集まってきた。


それにちょっとビックリしたのか、カズ君はヒザの上にある両手をギュッとしてお話しをやめてしまった。




カズ君がお話しをしなくなったので、私は首を動かして周りを見てみる。すると少し離れたところに、入口で見たあの子がいるのに気がついた。


誰ともお話しをしないでいるその子は、ズボンじゃなければ女の子に見える。


後ろを振り返ると、お母さん達があの子のお父さんとお話しをしていた。


(あれ? 知ってる人なのかなぁ)


そう思ってカズ君に聞いてみたら、「知らない人だよ」と返ってきた。


しばらくして人がいっぱいになると、朝のテレビで見るお姉さんみたいな女の先生がやって来た。そして『お名前を呼びますから元気よくお返事してね』と、先生は言った。


私はもちろんだけど、カズ君も頑張って元気よく返事が出来た。


でもあの子はあまり元気な声じゃなかった。『なるみ れい君』と呼ばれていたけど、名前もちょっと女の子みたい。




それから入園式と先生のお話しを聞いて、今日はお帰りだった。


お母さんのところに行くと、あの子とお父さんもいた。

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