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明日のうたが聴こえる  作者: 人見くぐい
第一章 幼稚園編
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01 私とカズ君

「空き地までキョーソー! よ~い……ドンッ!」


お兄ちゃんが大声で叫ぶと、私はすぐに走り出した。


ちょっと遅れてカズ君。タカ兄ちゃんは自分で10を数えてから走る。


外へ遊びに行く時は、いつもかけっこ。


一番小さい私とカズ君が最初にスタートする。


カズ君のお兄ちゃんのタカ兄ちゃんが次。年が一番上の私のお兄ちゃんが最後に走り出す。


でもどんなに一生懸命走っても一位はお兄ちゃん。二位はタカ兄ちゃんで三位が私。そして少し遅れてカズ君、と決まっていた。


息が苦しくてハアハアとしていると、お兄ちゃんが「今日はジャングル探検ごっこをしよう」と言った。


「やったあ!」


私もカズ君も大賛成。


「トオル兄ちゃんが隊長で、僕が副隊長」


すぐにタカ兄ちゃんが役を決めた。


『ジャングル』はもう少し先にあって、ススキとか背の高い枯れ草とかがいっぱい生えている所だ。


探検ごっこをするとお母さんは「すり傷だらけ!」って怒るけど、面白いから大好きだった。




家の周りは高い建物が全然ないから、空が広くて大きく見える。少し家を離れれば、田んぼや畑や空き地が遠く見えなくなるまで続いていた。


私の住んでいる所は『いなか町』と呼ばれる小さい町だ。


近所の子供達は男の子も女の子も年も関係なく、夕方になるまで表を走りまわって遊んでいた。


特にお隣りの家のタカ兄ちゃんとカズ君とは仲良しで、四人は兄弟のようだった。それにカズ君と私は誕生日も近くて、気がつくといつも一緒。


だけどかけっこをすると私のほうが早いし、木登りも私のほうが高く登れた。背だって私のほうが大きかったから、カズ君は「ミキちゃん待って~」と後からくっついて来ることが多い。だからずっと私がお姉さんだと思っていたくらいだ。


でもカズ君は全然気にすることなく、いつもニコニコしている。その顔を見ていると、私も一緒にニコニコしたくなるのだ。


そんなカズ君と私は、この春から幼稚園へ行くことになった。




「ほら二人ともこっち向いて……はい、チーズ!」


初めて幼稚園へ行く日、私とカズ君は家の前で写真を撮っていた。カズ君のお家の人も一緒だ。


「こわくないかなぁ……」


カズ君はまた小さい声で言った。


「こわくないよ、大丈夫」


私も小さい声で言うと、つないでいた手に力を入れた。


タカ兄ちゃんが幼稚園に入ったばかりの時、『行きたくない!』って大騒ぎしたことがあった。かけっこも早く力もあって、たまに私達へイジワルもするくらい強いタカ兄ちゃんがそんな風になるなんて、とっても不思議だった。


いつの間にか普通に行けるようになったけど、弟のカズ君にしてみたら幼稚園はこわいところとなってしまったらしい。


「私も一緒だから平気だよ」


私がそう言うと、カズ君はちょっとホッとしたように笑う。


そんなカズ君を見ていると、同じ年なのに「お姉さんだからしっかりしないといけないな」と思ってしまうのだ。

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