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明日のうたが聴こえる  作者: 人見くぐい
プロローグ
3/88

03

静かなギターのアルペジオが流れる。


そのイントロにファンの悲鳴に似た歓声が上がった。


それを追うように静かに流れる歌声。


更に高く上がった歓声は一瞬にして落ち着く。


そして会場が一つになって歌いだした。


ちょっと緊張してる? でも、高い声はどこまでも伸びやかに。低い声は深く深く……。


この歌はデビュー曲。


客席に誰もいないライブハウス時代も、『THE END LIVE』の時も……どのライブでも必ず歌っていた曲。


曲調が変わった。


一転して激しい嵐のようなドラムソロ。続くギターも荒々しく攻撃的。


だけど演奏の激しさと比べ、歌はバラードのようだ。


穏やかで、優しくて、どこか切なくて……KAZUそのもの。


曲が進むと始めに感じたぎこちなさは、もう完全に感じなかった。


歓声も相まって、会場は本当に揺れている。


よかった。もう大丈夫。12年のブランクを感じさせない、それどころか以前より迫力あるステージに、心からそう思った。


彼らの胸の内には色々あるかもしれないけど、単純に彼らの音楽を聴ける事が嬉しい。 私こそ彼らにお礼を言わなければいけない。


彼らがステージを終えた時、笑顔で……迎えて……。


…………。


目元を指先で軽く触れる。いつの間にか自分が泣いている事に気づいた。





解散後、辛い現実を忘れる為に、ひたすら働いた日々。


再結成という嬉しい仕事でも、必ず成功させなければ……というプレッシャー。


でも彼らの歌で、張り詰めていた心が解けたようだ。


だから涙は拭かずに、彼らの歌を聴こう。もう少しだけこのままで居たい。


まだ、一曲目。


彼らが戻るまでに、涙は十分乾くから。


私は流れる涙をそのままに、その場を立ち尽くしていた。

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