13 レギュラー
カズ君たち野球チームのメンバーは反省会があるというので、私は一足先に家へ帰った。
しかし私は部屋でじっとしていられず、外でカズ君の帰りを待った。
カズ君は頑張ったけど試合は負けたので、今日出ていた人はレギュラーになれないのではないか、と心配になったのだ。
しばらくして日がだいぶ暮れた頃、ようやく埃だらけのカズ君が帰ってきた。
「どうしたの?」
ちょっと驚いているカズ君の表情からは、結果が読み取れない。
「だって……」
私の細い声を聞いて、カズ君はようやく待っていた理由に気がついたようだ。
結果を聞くのをためらっている私に、ニッコリ笑ってピースをした。
「夏の大会はレギュラーだよ」
「ホント?!」
私は思わずカズ君の両手を取ると思いっきり上下に振った。
「カズ君、おめでとう!」
「あ、ありがとう」
「やっぱり活躍してたもん。レギュラーになって当然だよ」
「そうかな」
カズ君は思ったより冷静なのが不思議だった。
「あれ、嬉しくないの?」
「そんなことないよ。でも、あの……手を洗ってないからさ、あんまり綺麗じゃないよ」
「え?」
私はずっとカズ君の両手を握り締めていたのだけど、カズ君はそれを気にしていたらしい。ホコリなんて気にならないのに。
しかしそう言われてしまったので、静かに手を離した。
「今日は応援ありがとう。おかげで全力がだせた」
「ううん、カズ君が頑張って練習したからだよ」
カズ君が改めて背中を伸ばして頭を下げるので、私は首を振りながら答える。
「それにレイ君が来られなくなったから、二人分応援したの」
最後はノドが痛くなるくらい、大きな声で声援を送った。
「そうなんだ。レイ君には明日の朝報告する」
「朝練ないから私も一緒に行くね」
「それならレイ君も早く出てくるから、ゆっくり話せるよ」
カズ君の言葉に二人で顔を見合わせ、クスクス笑ってしまう。
そんなことを話しているうちに暗くなったので、それぞれ家に帰った。
その夜改めて思い返してみると、カズ君の手に触れたのは幼稚園の時以来だった気がする。
あの時は私と同じような手だったのに、今はマメだらけのしっかりした手だった。たくさんの練習を重ねてきたからだろう。
もう私が守ってあげるような手ではない。
(背丈も50m走も……そのうち抜かされるのかな)
そう考えると、また少し寂しくなった。
「おはよう」
「おはよう、レイ君」
店の前にはめずらしくすでにレイ君が待っていた。
「おはよう」
私とカズ君の姿を見ても、無表情のままあいさつをする。
「調子悪いの?」
「……別に」
私が心配して声を掛けても返事は素っ気無い。
しかしカズ君の結果は気になっていたらしく、短く「どうだった?」と聞いてきた。
「レギュラーになれたよ」
「おめでとう」
今のレイ君にしては精一杯喜んでいるようだけど、声は暗くすぐに俯いて一人で歩きだしてしまった。
「変だね」
「大丈夫かな」
二人で心配したが、レイ君は学校に行く気らしい。




