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明日のうたが聴こえる  作者: 人見くぐい
プロローグ
2/88

02

突然スタッフの動きが、さらに慌しくなった。 やっとシステムの不具合が直ったらしい。


彼らもステージの袖に集まって来た。 私が今出来る事は、笑って送り出す事だけだ。




サポートメンバー達がステージに向かう。 口々に「いってきます」と声をかけてくれる。


私も「いってらっしゃい」と送り出す。


KENが手を振りながらステージに向かう。


私も手を振り返して送り出す。


ヘルプの森谷さんも手を振ってくれ、ステージに向かう。


私も会釈をしながら手を振り送り出す。


SCHUは投げキッスしてくれたな。 少し胸の奥が痛んだ。


RAYLAが……レイが近づいてくる。


リーダーとしてずっとトラブルの対応をしていたせいか、すでに少し疲れた顔だった。


そのままレイはステージに……と思ったら、私の前で立ち止まる。


無言で私をじっと見ていたが、目をそらし呟いた。「ありがとう」と。


私は思わず息を呑んだ。 謝罪とか、感謝などの言葉をこの男の口から聞くのは、滅多にないことだったから。


「めずらしい言葉、聞いたな」


「ふふっ……そうね」


後から来たカズも同じ意見のようだ。 その言葉に私は吹き出してしまった。


「バ、バカにするな。言うときは言うさ」


照れている時のクセで、早口で口ごもりながらそう言うと背を向ける。


「ぶっ倒れるまで帰って来ないでね~」


私は笑いながらレイの後姿に声を掛け、送り出す。 その言葉にレイは振り返りもせず、左手をヒラヒラさせながらステージに向かった。


「あいつは……いつもオイシイとこ持ってくなぁ」


「え?」


「なんでもない」


最後に残ったカズは何か言ったようだけど、よく聞き取れなかった。


「美紀」


「なぁに?」


「自分も言おうと思ってた。色々……ありがとう」


そう言うと、子供の頃から全く変わらない優しい笑顔を見せた。


「なに言ってるの。私は私のやるべき仕事をしただけ」


「さすが『敏腕マネージャー』」


「だれかさんは『猛獣使い』って言ったけどね」


「そんなコト言ってたなぁ……」


私が肩をすくめながら言うと、カズは苦笑する。


その後、一瞬沈黙した。 周りの音が聞こえない。 あんなに押し寄せていた熱気も感じられない。


時が止まったようだ。 というより止めていたかったのかもしれない。


彼とはもうこんな風に話せる日は来ないと思ってたから。


「さて、と……」


そう呟きながらカズはサングラスを取り出してかけると、KAZUになった。


「行ってきますか」


「いってらっしゃい!」


KAZUは右手を軽くあげてステージに向かう。


私もあの頃のように手を振って見送った。

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