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明日のうたが聴こえる  作者: 人見くぐい
プロローグ
1/88

01

さまざまな声が広いホール内を響き渡る。


彼らの想いを語る声。


彼らの名前を呼ぶ声。


彼らの歌を口ずさむ声。


まるで、嵐の前に吹く強風を受ける木々のさざめきのよう。


同時に彼らの登場を待つ人達の熱気も、このステージの袖まで押し寄せている。





私はこの雰囲気が大好きだった。


決してステージへ出る事のない私が、ファンの期待を実感出来る数少ない機会だから。


どんな規模でもライブの準備には様々な苦労があり体力も神経も磨り減るが、この空気を肌で感じると疲れなんて消し飛んでしまう。


しかし実は、すでに開演時間を1時間以上も過ぎてしまっている。


ステージで使う機材のトラブルが解消されず、バタバタしている……なんて生易しいものじゃなく、私の周りではまさに戦場だった。


これから各関係者にお詫びまわりに行かなければ……と思うと、ため息が出そう。


そんな事よりもファンにとても申し訳なくて、見えるはずも無いけど客席に向かって頭を下げる。


ごめんなさい、1時間も待たせて。


いいえ、待たせていた時間は1時間だけじゃない。


12年。


あの苦しくて辛い解散から12年、ファンはずっと待っていてくれた。


しかし何度も浮かんだ再結成の話を頑なに拒んだ彼らの心を癒すには、それほど時間が必要だったのだ。



今回の再結成を時好意的に取り上げてくれたメディアもある一方、メンバー同士の確執や不仲説を書き立てられる事もあった。


ネガティブな記事はこちらから発信する情報で完全に否定したが、本当のところ……彼らの仲が完全に回復しているのか、一番彼らに近しい私ですら分からない。


12年前、彼らの間に色々と複雑な想いがあったのは間違ないのだから。


でも、『もう一度一緒にやりたい』と言った時の彼らの表情に嘘はなかった。

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