第8話:美術館長殺人事件!
前回の続きです。
時刻、0:30。ほんの30分前に、水利美術館にてダイヤモンドが盗まれた。
真はダイヤモンドを最後に触れた時の事を思い出していた。
時刻は5時間半前の19:00に遡る。
宮下警部は、ダイヤモンドを台座に置いてフタをし、しっかりと鍵を掛けて封をした。
その時、ダイヤモンドはまだ目の前にあったのは言うまでもない。
それから5時間が経過した0:00に、こうしてまんまと盗まれてしまったと言う事だ。
「クソッ!怪盗556目!」
宮下警部は怒鳴った後、
「絶対捕まえてやる!」
と付け足した。
「宮下警部。」
ダイヤモンドが盗まれてからずっと声を出さなかった真がに口を開いた。
「何だね!」
「ダイヤモンドは何処へ消えたんでしょうね?」
真は全て解った様な口ぶりで言った。
「それが解ったら苦労しねえよ!」
宮下警部は怒っていた。
「お怒りの所、申し訳ないが、怪盗556は貴方ですよ。」
真の言葉に宮下警部は、一瞬顔色を変えたが、直ぐに冷静さを取り戻し、何を言っている、と言い返した。
とぼける宮下警部に、真はこう言った。
「あの時、最後にダイヤモンドを触ったのは、あんただ。
ダイヤモンドがガラスにすり替えられたのは、その時で間違い無い。
そして、あんたはガラスを台座に置く時、例の手紙を一緒に置いたんだ。
そうなんだろ、宮下警部・・・いや、宮下警部に変装した怪盗556さんよ!」
「面白い推理だ。だが、ダイヤモンドが何処にあるかが解らなくては、俺を犯人にする事は出来んな。」
「あんたの右ポケットの中だ。」
「何!?」
宮下警部は手を右ポケットに突っ込む。
「い、嫌だなぁ。何も入って無いよ?」
「いや、入っている筈よ。」
どこからともなく、綾の声が美術館内に響いた後、綾と捜査一課の警部が姿を現した。
「何でお前が?それに、警部まで?」
真が目を点にして訊ねる。
「近辺で殺人事件があってね。それで、犯人の足取りを追ったら、此処に辿り着いたと言う訳。」
綾はニッコリと笑って答えた。
「捜査三課宮下 小五郎警部。
水利美術館館長、水利 光夫殺害の容疑であんたを逮捕する。」
そう言って、警部は令状を出し、開いて見せた。
それと同時に、綾が真相を語る。
「昨日の夕方、貴方は館長にダイヤモンドを水利公園まで持って来させ、ダイヤモンドを奪い取って刺殺し、怪盗556の名を騙って予告状を霧崎 真宛てに送りつけ、恰も怪盗556がダイヤモンドを盗む様に見せかけた。現場残された凶器のナイフから、貴方の指紋が検出されたわ。それに、血文字で556・・・小五郎と残されていた。
恐らく、殺害の動機は、館長から家宝であるダイヤモンドを取り返す為。違いますか?」
綾が語り終えると、宮下はしゃがみ込んで床に手を付けてこう言った。
「アイツが悪いんだ!家の家宝を盗みやがって!だから殺してやったのさ!
本当は、本当は、怪盗556がダイヤを盗んで自殺する、と言う結末だったんだが、巧くいかないものだな。」
「やはり、館長が556だったのね。
それはそうと、刑事である貴方が、犯罪に手を染めるなんて・・・。」
「ダイヤを取り返す為なら何だってする。俺はそう決めたんだ!」
プチン!
堪忍袋の緒が切れた綾は、宮下の顔面を思い切り蹴ってやった。
ボキッ!
宮下の前歯が折れた。
が、そんな事は、綾にはどうでも良かった。
「宮下さん、最初から館長が556だと解っていたんなら、どうしてあそこで逮捕しなかったんですか!?」
「それだけでは許せなかったんだ!いっそ、この手で、この手で!」
宮下はそう言うと、涙を流して泣き出した。
その後、宮下は警部に署まで連行され、館長殺害事件は静かに幕を閉じた。
何やってんだ俺?
怪盗殺して意味あんのか?
また、新たな怪盗を出さなくては・・。