第12話:6年前との繋がり(後編)
綾はロビーの椅子に座り込んで、事件の事を考えていた。
(4年前の事件の被害者のパソコンにあったリスト・・・。
これって、単なる偶然なのか?)
「警部!」
と、部下の魚住が、血相を変えてやって来た。
警部は彼の顔を見ると、
「そんなに慌てて、どうしたんだね?」
「先程の件ですが・・・。」
と、途中まで言うと、警部の耳元に口を当てがって囁いた。
すると警部が、
「本当かねそれはっ?」
と、驚いた。
「どうかしたんですか?」
綾は二人に訊ねる。
「あっ、さっき、君が言ってた<坂田 恒吉>の事なんだが、とんでも無い事が解った。」
「とんでも無い、事?」
「殺された坂田氏は、過去にとんでもない事をやらかしています。」
「だから、そのとんでもない事って言うのは?」
「──殺人だ。」
そう言う警部に続いて、
「他にも、窃盗や麻薬所持で逮捕されています。」
魚住はそう言った。
「(成る程・・・。)
坂田が殺人罪で捕まったのって何時ですか?」
「六年前です。」
魚住は即答した。
「被害者の名前は?」
「小山 三郎──気になって、被害者の事を調べたら、そこにいる二人と接点がありました。」
魚住はそう言って、三上と三枝を示した。
綾は三上と三枝の方をチラッと見ると、彼らの所に行き、
「あの、お聞きしたい事があるんですが・・・。」
「何かな?──お嬢ちゃん。」
三枝は綾に顔を向けると、そう聞いた。
「小山 三郎・・・──ご存知ですよね?
確か、6年前に殺された、と。」
綾の言葉に、二人は驚き、顔色が変わる。
「どっ、どうしてその事をっ?」
と、三上。
「あの刑事さんが調べてくれました。」
そう言って、綾は魚住を指差した。
二人はチラッと魚住を見ると、綾の方に向き直った。
直後、綾は再び口を開いた。
「三上さんに三枝さん、──これは、私の推測にしか過ぎませんが・・・──6年前、坂田さんは、ある人物から覚醒剤を買い、使用。
そして、小山さんを殺害してしまった・・・。」
綾は一旦、口を閉じると、再び口を開いた。
「この事が原因で、坂田氏は殺された。
──恐らく、犯行はこう。」
犯行こうだ。
犯人が坂田を部屋に呼び出し、ロープで首を絞め、吊して殺害。
直後、部屋を出て、逃げる。
「確か、関係者専用通路に、外に出る非常口がありましたよね?」
綾の問いに三枝が、
「ああ、あったよ。」
と応え、
「じゃあ、犯人はそこを通って?」
と、三上が訊く。
「その通りです。」
「って事は、外部犯の犯行?」
「いいえ、内部の人間による犯行です!」
その言葉に、警部、魚住、他多数が驚き、綾の方を見る。勿の論で、三上と三枝も驚いている。
「三上 晴子さん──小山さんは、貴女の恋人だったんじゃないんですか?」
「そうだけど・・・──それが何か?」
一瞬の沈黙の後、
「坂田さんを殺害したのは、三上 晴子さん・・・──貴女です。」
と、綾は言った。
「ちょっ、ちょっと待ってくれよ!
俺と晴子は外にいたんだぜ?どうやって殺害するんだよ?」
「三枝さん──彼方ならどうやりますか?」
「俺だったら?」
うーん、そうだな──と、考え込む三枝。
「やっぱり、呼び出して殺すかな?」
「その後は?」
「逃げるしか無いよ?」
「何処から?」
「非常口から。」
三枝が言った後、綾は魚住にこう言った。
「非常口の鍵見てきて。」
すると魚住は、関係者専用通路に入って行った。
「──さて、彼が見に行ってる間に、密室の謎を解き明かしましょう。」
綾はそう言って、全員を現場に移動させた。
「ここに、テグスがあります。」
綾はテグスを見せると、
「これを鍵に巻き付けます。」
そう言って、それを鍵とドアノブの隙間に通し、鍵に巻き付けた。
そして、両端を持ち、外に出ると、扉の下に出来た隙間に通し、テグスを引っ張った。
すると、勝手に鍵が回転し、掛かった。
直後、綾は扉を開けようとするが、鍵が掛かっている為、当然だが開かない。
「警部、開けて下さい。」
そう言われ、警部は鍵を開けた。
同時に、綾が入って来る。
「今ので密室を作ったのは・・・──三枝さん、貴方ですね?」
その言葉に、皆の視線が三枝に行く。
「三枝さん──貴方は、三上さんと共に、この殺人を犯したのです。共犯者としてね。」
「それは無理だと思いますよ?」
何時からいたのか、魚住がそう言った。
「ほえ?」
「今、非常口の扉を見て来たのですが、内側からも外側からも、専用の鍵を使わないと開かない見たいですよ。」
(えっ?
俺とした事が!
ちゃんと調べもせずに、憶測だけで!
待てよ?
──そう言えば・・・。)
『俺、亀山 大地ってんだけど、この二人、事件の時フロントになんかいなかったぜ。』
「(亀山 大地・・・まだアリバイを聞いていない。)
亀山さん・・・──事件の時、貴方はどちらにおられましたか?」
「俺っ?
俺は、模型ショーの準備をしていたよ。」
亀山がそう答えると、綾がニヤニヤして、
「おかしいですね。」
「何がおかしいんだ?」
「貴方、先ほどこう言ってましたよね。
『この二人、事件の時フロントになんかいなかったぜ。』
この証言、今の証言と食い違っているのですが、どう言う事ですか?」
「あっ、いやっ、それはっ?」
冷や汗を垂らし始める亀山。
「亀山さん──坂田さんを殺害したのは、本当は貴方じゃないんですか?」
綾がそう言うと、
「今度は間違い無いんだろうね?」
と、警部が嫌な顔をして聞いた。
「今度は自身ありますよ。」
綾は自信満々の顔でそう言う。
「亀山さん──貴方は<模型ショーの準備をしていた>と、さっき言いました。
しかし、模型ショーが行われる筈の会場の準備室と、フロントはかなり離れている。
それなのに、どうして貴方が、フロントに人がいない事を、知っていたのですか?
それを知る事が出来たのは、事件の時にフロントの前を通った犯人だけだ!」
「バカバカしい。
証拠はあるのか?」
「証拠?
桐山さん──言って下さい、事件当時見た者を。」
綾の言葉に桐山は、亀山を指差した。
「私見たわ。
亀山君がそこの通路から飛び出して来るの!
何だろうと思いながら、休憩室に向かったら・・・。」
「鍵が掛かっていて、鍵を開けたら、中で坂田氏が亡くなっていた、と?」
「ええ。」
「そんなの証拠になんかならんぞ!」
「知ってますか?
人の首を絞めると、手に後が残ると言うのを。」
「そんなもん残ってる訳ねえだろ!」
そう言って、亀山は手のひらを綾に見せつけた。
「あん時、手袋してたんだからな!」
はい、自ら証言してくれました。
「亀山さん、墓穴を掘りましたね。」
「何っ?」
「貴方は今、こう言いました・・・──手袋をしていた、とね!」
その言葉に、亀山は冷や汗をタラタラと垂らし、膝を落とした。
「アイツが悪いんだ!
6年前、俺の女を殺したばっかりに!」
「殺した?
坂田氏はもう一人殺害したんですか?」
「確かに、坂田氏は二人の人を殺してます。
しかし、片方は証拠不十分により、無罪を得ています。」
そう言ったのは、手帳を開いて喋っている魚住だ。
「亀山さん──そんな事して、亡くなった恋人は喜ぶのですか?」
「仇を討って貰って喜ばない被害者なんていねえよ。
それに、俺は彼女が死に際に残した事を実行しただけだし。」
「残した事?」
「坂田を殺せ・・・──真智子はそう言ったんだ!
殺して何が悪いっ?」
そう言って、亀山は綾を睨み付けた。
パシンッ!
亀山に歩み寄った桐山が、彼の頬を引っぱたいた。
「最低!
そんな人だとは思わなかったわ!」
「桐山・・・。」
「6年前に坂田君に殺されたかなんだか知らないけど、何時までも過去を背負ってんじゃないわよ!」
そう言って、亀山を睨み付ける桐山。
「お前に俺の気持ちが解るかっ?」
「解るっ、解るよ!
今、私は貴方を憎んでる、殺したい程憎んでる。」
「何故?」
「坂田君を殺されたからよ!」
「お前、アイツの事・・・。」
それから暫く、沈黙が続き、
「刑事さん──自首、させてくれないか?」
亀山はそう言った。
「最後にやりたい事やってからにしたいんだ。」
「そうか、なら少しだけ待とう。」
警部はそう言うと、魚住を連れて去って行った。
その後、亀山は模型ショーを開き、無事に終えると警察に行った。
げっ、タイトルと内容、全然噛み合ってねえじゃん!
でも、解決したんだし、まぁ良っか。
てか、こんな解決の仕方だけど、文句ある人はその場で挙手して私書箱におくれ(送れ)