私のお姉様
私のお姉様は、王太子殿下の婚約者候補でした。ハッピーエンドです。
私は、公爵家の次女。
お姉様は王太子殿下の婚約者候補です。とても美しくて、私の自慢のお姉様。
そして、妹もおりますの。可愛い、可愛い妹は、大分歳が離れています。
女ばかりの公爵家、お姉様は小さな頃から王太子エイルマー様の婚約者候補として、沢山勉強をしていました。
父上も母上も、お姉様を大切に育てましたが、やはり時間には限りが御座います。お姉様は寝る間も惜しんで、勉強をしたのです。
私は、公爵家を継ぐ為にお姉様と共に勉強をしました。マナー、教養、ダンスのレッスン、いつもお姉様と一緒。でも、お姉様には敵いません。お姉様は努力の人なのです。
学園に入学してからも、お姉様は努力していました。他の婚約者候補の皆様とも、交流を深めていたのです。
お姉様の他に、三人の王太子妃候補の方がいらっしゃいます。どの方も美しく、可愛らしく、教養のある方ばかり。他の候補者の方を蹴落とす等と、醜い感情は持ち合わせておりません。
私はいつも剣を持ち、お姉様達を警護致します。ドレスも勿論好きなのですが、お姉様をお守りするのが生き甲斐なのです。
小さい頃から、剣術を習い、公爵家を守る為に鍛えておりました。騎士団の方々には劣りますが、お姉様達をお守りする位なら出来ますわ。
「今日もアーネスティン様は素敵ね」
髪を結び、動きやすい様に男装する私は、彼女達から褒められて、微笑んでしまいます。
「明日から、隣国の王女様がいらっしゃるのよね」
公爵家のイヴェット様が仰ります。
「とても愛らしい方とお聞きしました」
伯爵家のエヴァンジェリン様です。
「エイルマー王太子殿下と一緒に過ごされるのですよね」
同じく伯爵家のパトリシア様。
「エイルマー様が一番の適任者ですから」
お姉様が一番ステキ。
皆様が楽しみにされていた、隣国の王女様はとても小さく、華奢で庇護欲を唆る方でした。
エイルマー様は日に日に彼女との時間を増やして行きます。
お姉様達がエイルマー様に、サフィラ王女と二人きりで会う事のない様、お願いしても
「大丈夫だよ、私の婚約者になるのは四人の内の誰かだから」
と、笑われたそうです。
*****
次第にお姉様の様子が、変わって行きました。何処か不安そうなのです。
最初は、エイルマー様とサフィラ王女が二人きりにならぬ様、ランチの時間は必ず婚約者候補のどなたかが一緒だったのですが、いつの間にか王女と二人で頂く様になったそうです。
王女はエイルマー様がお気に召したのでしょう。いつでも、何処へでも着いて行かれます。
たった二週間の事でした。しかし、エイルマー様は王女に夢中になり、公務をお姉様一人に任せたのです。お姉様は今までも、エイルマー様のお手伝いをしておりましたから、難しい事ではありませんでした。
しかし、エイルマー様の信用は少しずつ傾いて行きました。
ある日、王妃殿下からお茶会に誘われました。お姉様は、私を騎士の代わりに連れて行きます。
「リディアお姉様、大丈夫ですか?」
「有難う、アーネスティン。大丈夫よ」
私はお姉様の手を取り、エスコートします。
王妃殿下の大好きなお部屋に通され、お茶会が始まりました。
「リディア、、、エイルマーが勝手な事をしている様ね、、、」
「サフィラ王女殿下をお持て成しするのは、エイルマー殿下のお仕事ですから」
「貴方や他の候補者達と、一緒に昼食を摂っていないそうじゃない」
「王女殿下のご希望です」
お姉様は不安そうに笑います。
「私は、リディアに王太子妃になって貰いたいわ。貴女が一番努力をしていたし、相応しいと思うの」
「有難う御座います」
「でも、最終的に選ぶのはあの子、もし、エイルマーが他の候補者を選んだ際は、こちらで貴女のお相手を探します。貴女方は長い時間、王太子妃になる為に沢山の時間を犠牲にしたのですからね。もし、気になる方がいたら教えて頂戴。私が出来る限り力になります」
お姉様はニコリと笑いました。
それから一週間後、隣国の王女殿下は自国に帰られました。これからは、元の生活に戻ると安心したのに、エイルマー様は何処か呆けて、気の抜けた人になっていました。
**********
私は隣国の王女、サフィラの事が忘れられなかった。三週間、彼女と過ごした。食事も二人で摂った。私が仕事で移動する時も、視察になるからと着いて来た。実際仕事の邪魔はしない。静かに横に立ち本格的な話しになると、距離を置いてくれた。
私は気を使う彼女を好ましく思ったし、同時に申し訳無く思った。
残り二週間は彼女に私の国を知って貰おう。公務はリディアがいるし大丈夫だ。そう思う様になった。
サフィラは可愛らしかった。私の婚約者候補者達は、身長も高くスラリとしていた。美しい部類だろう。サフィラは小さくて愛らしい。私がいなければ、私が支えなければ、と思ってしまう。
婚約者候補の彼女達には無い、癒しがあった。
「エイルマー様っ!」
と呼ぶ声も鈴の様だった。
彼女が隣国に帰り、一週間。私は父に相談した。
「サフィラ王女と婚約したいのです」
王の眉尻が上がった。
「四人の候補者はどうした」
「、、、どの女性も美しいのですが、サフィラ王女の素晴らしさには敵いません。王族とあって、所作も完璧ですし、教養もあります」
「彼女達よりも?」
「はい」
*****
数日後、隣国よりサフィラ王女の輿入れを打診された。王女が父王に泣き付いたのだ。それにより、王女との婚約が現実的になった。
*****
婚約者候補の女性達を城に呼び、私は彼女達にサフィラ王女と婚約した事を話した。
王と王妃は玉座から静かに見守った。
四人の女性達は動揺も見せず、静かにカーテシーをする。承知したと言う事だ。
王妃から
「長い間、ご苦労でした。貴女方の婚約相手はこちらで探しましょう」
と言われ、四人は深々と膝を折る。
**********
お姉様達が謁見の間に入られてから、長い時間が経ちました。重々しい扉が開き、四人が出て来ると、私は静かに近寄ります。
「アーネスティン、、、」
「お姉様、、、」
ポロリと一粒涙を溢されました。
「エイルマー様は酷い方です。婚約者にサフィラ王女を選びました」
イヴェット嬢が教えて下さいました。
「お姉様達が努力していた事をご存知なのに、、、何故、、、」
「王女の愛らしさに、心を奪われたのでしょう」
エヴァンジェリン嬢が言いました。
「隣国の王女ですもの、私達より得る物があるのですわ」
パトリシア嬢です。
「それでも、お姉様達の努力を水の泡にして良いとは思えません」
「アーネスティン、サフィラ王女もエイルマー様に心酔しているのです。私達がどんなに頑張っても、この婚約は覆せないわ」
お姉様は小さく笑いました。
「せめて、貴女方のどなたかであれば、私もこんな気持ちにはなりませんでしたのに、、、」
「サフィラ王女はどの様な方なのですか?」
「社交的よ。所作は美しいし、ダンスも上手。でも、政治や経済の話には疎い様ね」
「そう言えば、隣国の第三王女では無いかしら、、、ほら。勉強がお嫌いで、、、処遇を持て余していると言う、、、」
「その様な方とエイルマー様が結婚なさって、大丈夫なのですか?」
「まぁ、大丈夫では無いでしょう。今までもリディア様がお隣にいらっしゃったから、上手く行っていたのですもの」
「それでは、お姉様や皆様を側妃に迎え、仕えさせる事もあり得るのですか?」
「、、、そうね、、、いずれそうなるかも知れません」
「ダメですっ!そんなの許せません!」
「アーネスティン、、、」
「お姉様が王太子妃になれないのなら、エイルマー様に義理立てする必要はありません。私達を先に裏切ったのはエイルマー様です!お姉様にはもっと良いお相手を探します!」
「そうですわ。私達の努力を蔑ろにする様な王太子など、助ける必要はありません。断固側妃は拒否致しましょう!」
「で、でも、、、相手は王太子殿下ですよ、、、。もし、その様なお話しを頂いたら、お断り出来ないと思います」
「お話しを頂く前に、結婚しましょう。王妃様が協力して下さいます」
「あの、、、私は、、、」
パトリシア様が小さな声で言いました。
真逆、即妃になりたいとか?!
「パトリシア様がエイルマー様の側妃を希望されるなら、お引き止めする事はありません。むしろ、好都合
「違いますっ!結婚を約束した幼馴染がいるのです!」
「まぁっ!」
「あらっ!」
「ステキ、、、」
「で、ですから、私は王妃様に協力頂かなくても大丈夫です」
「彼は、パトリシア様を待っているのですか?」
「、、、はい。私は最後に選ばれましたし、伯爵家と申しましても、エヴァンジェリン様とは違います。父と母、それから幼馴染の家と話し合い、王太子妃が決まるまで婚約はしないで、待つと約束して頂いています」
「それならば、早く婚約者の元に行かなければならないわ。パトリシア嬢、此処でお話しに参加している場合ではありません。今すぐ、婚約者の元に行かれた方が宜しくてよ」
「有難う御座います」
そう言ってパトリシア嬢は静かに立ち上がり、深々とお辞儀をしました。
「また、お茶会を致しましょう。その時は、色々聞かせて下さいね」
私は、パトリシア様をお見送りする為に、エスコートします。
*****
「エヴァンジェリン様はどなたかお相手がいらっしゃるの?」
「いえ、私は父にも母にも、必ず王太子妃になる様に言われていたので」
「まぁ、、、」
「あの家を出る理由があれば、どの様な方でも構いません。勿論好条件で有れば有るだけ、あの人達は喜びますけどね」
「どの様な殿方がよろしいの?」
「仕事が出来る方が良いですわ。領地を愛し、民を愛している方ならどの様な方でも。私を愛して下されば、尚嬉しいです」
「イヴェット嬢は?」
「あら、私は必要有りませんわ。王太子妃候補の間も釣書は沢山届きましたの。お父様も、王太子妃に選ばれるのはリディア嬢だろうと仰っていました。常に釣書と睨めっこをしておりましたから、きっと一番良い男性を選んでいると思います。それに、もし、我公爵家に側妃の打診などしようモノなら、父上がエイルマー王太子殿下を返り討ちにすると思いますわ」
と、にっこり笑う。流石公爵家のお嬢様、逞しいですわ。
「エイルマー様が側妃を求めるならば、リディア嬢です。貴女は私と違い、物腰も柔らかく、知識も豊富です。エイルマー様を立てる事も忘れません。お気を付けあそばせ」
私もそう思います。それに、お姉様が一番、エイルマー様に特別な感情を持っていた様に思います。
だからこそ、、、だからこそ、私は王太子殿下を許せません。
「それでは、王妃殿下に新しいお相手を探して頂くのは、エヴァンジェリン嬢とお姉様ですね」
「あの、、、」
エヴァンジェリン嬢が声を上げる。
「国外でお相手を探された方が宜しいかと思います」
「、、、そうですね。エイルマー様がリディア嬢の必要性に気付いて、側妃に迎えたくなれば、手段を選ばないかも知れません。国外で身分の高い方、、、どなたかいらっしゃらないかしら」
お姉様は静かに話を聞いています。
「セフィラ王女に婚約者はいなかったのですか?」
私は疑問に思った事を聞いてみた。
「そうねぇ、どうだったかしら、、、あのお年ですし、いらっしゃったんじゃないかしら」
「そのお相手、、、どうなったんでしょう、、、」
「お父様に調べて頂こうかしら」
イヴェット嬢がニヤリと笑いました。
「私も父上に相談します」
**********
隣国の公爵家から、釣書が届いた事に驚いた。同封された手紙には、エイルマー王太子の婚約者候補であった事が、書かれている。
面白い。
私の元婚約者が結婚する相手は、隣国のエイルマー王太子だ。
一度此方に招待しよう。
丁度花祭りもある。親交を深めておいても問題は無い。
**********
「アーネスティン、リディアに隣国の公爵家から招待状を頂いたのだが、
「行きますっ!」
「アーネスティン、最後まで聞きなさい。一月後に開催される花祭りに招待すると言う話だ。長い間学園を休む事になるが、卒業は出来るだろうね?」
「お姉様は問題無く卒業出来ますわ。寧ろ、1日も早く此方を離れた方が宜しいかと思います」
「卒業式に出席させないのか?」
「卒業式には出席して頂きます」
お姉様は、隣国に行く為に、最後の履修を前倒しで終わらせました。先生方とイヴェット嬢達に協力して頂き、後はレポートを提出するだけです。
レポートは、彼方から期日までに届く様に調整致します。
「儂も一緒に行かなくて大丈夫なのか?」
「大丈夫です」
「しかし、やはり、、、」
「父上。私が一緒に行くのですから、心配はありません。仮にも貴方の後継者ですよ?」
「相手の方にもお会いしたいし、、、」
父上は、お姉様が大好きだから心配なのですね。しかし、貴方が動くとエイルマー様の耳に入るかも知れないのです。
「父上は、エイルマー王太子殿下にお姉様が隣国の公爵様とお会いする事がバレない様、上手く誤魔化して頂かないと困ります。それに、父上大好きなルシールが、寂しがりますよ?」
*****
私達は、1日も早く隣国に着く様、荷物が纏まり次第、馬車で出発致しました。
私達と入れ替わりに、サフィラ王女が入国した事はイヴェット様のお手紙で知りました。
卒業式の翌日に婚約式を行い、半年後には結婚式を行うそうです。
隣国と言っても、馬車で一週間、数人の侍女と騎士達を連れての移動になります。
私は、自国を出発する前に公爵様にお手紙を書きました。
花祭りをとても楽しみにしている事、早目に隣国に入り、暫くは宿屋に宿泊し市井を楽しむ事、公爵様にお会いする事がとても待ち遠しい事を書きました。
一週間の馬車の旅で、漸く隣国に着き、予約していた宿屋に向かう途中、公爵家の使いと言う騎士が、馬で迎えに来ました。
「公爵家のお屋敷に、お部屋を準備しております。どうぞ、私に着いて来て下さい」
私は書状と家紋を確認して、彼に着いて行く事にしたのです。
お姉様は、公爵家のお屋敷に着くと、案内をしてくれた騎士をじっと見つめました。
背の高い騎士は、お姉様の視線に気付き、少しだけ微笑んだのです。
**********
騎士は私達を部屋に案内すると、長旅で疲れているだろうと、侍女を二人置き、身支度が整ってから応接室に案内する様、侍女に伝えました。
二人の侍女が湯殿に案内し、久しぶりに大きなお風呂に入りました。
髪や身体の汚れを落とし、綺麗なドレスに袖を通すと、やはり身が引き締まります。身支度が整い、応接室に案内して頂くと、先程の騎士が正装をして立っていました。
お姉様はすぐに立ち止まり、美しいカーテシーをなさいます。
「先程は有難う御座いました。リディア=シャノンです。花祭り、とても楽しみにしております」
「ノルベルト=ガスコインです。貴女の事を知りたくて、招待状を送りました。素晴らしい時間を過ごせる事を、楽しみにしています」
騎士はガスコイン公爵だったのですね、、、。
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リディア嬢は美しい人だった。王太子妃候補、しかも筆頭だった女性。話題も豊富で、会話も楽しかった。何故、隣国のエイルマー王太子は彼女を手放したのだろうか。
私の元婚約者サフィラ王女は、可愛いだけの詰まらない女だった。勉強が嫌いで難しい話しになるとフイッといなくなってしまう。それでは、私のパートナーは務まらない。来客を持て成す事も、妻の仕事なのだから、、、。
年齢も若過ぎた、まだ学生で私とは十歳も離れている。遊びたい盛りなのだろう。結婚相手が私では不満も多かったに違いない。
王女との婚約は王命だった。こちらから断る事も出来ず、諦めていたのに、彼女は隣国に留学すると言う名目で遊びに行き、恋に落ちた。
父王に泣き付き、私との婚約を破棄して、隣国の王太子を仕留めた。とんでもない好条件でも提示したのだろう。
やれやれと呆れ、仕事に没頭している内に隣国から釣書が届いた。いつもなら興味が無かったが、美しい釣書の表紙に目を奪われた。興味本位で中身を読むと、隣国の王子エイルマーの、王太子妃候補だったと書いてある。
面白い。
そう思った。一度会う価値は有るだろう。気に入らなければ、縁が無かったと断れば良い。
それにしても、リディア嬢は美しかった。
そして、騎士に扮した私を見抜いたのも素晴らしかった。
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花祭り当日まで、私達は市井を視察しました。ガスコイン公爵に騎士を着けて頂いた為、私もドレスを着て街を歩きます。
お姉様と二人での視察はとても楽しくて、妹のルシールも連れて来れば良かったと、後悔する程。
次回は、ルシールも一緒に連れて来ましょう。
「お姉様、ルシールにお土産を買わないといけませんね」
「そうね、あの子だけ連れて来る事が出来なかったから、沢山お土産を買いましょう」
私達は朝から街に出て、昼過ぎには戻って来ます。お姉様の卒業レポートを仕上げる為に。
ノルベルト様は外出の無い日は、必ず3時にお姉様をお茶に誘います。ほんの30分程ですが、その気遣いがお姉様には嬉しかった様子。
一週間程すると、お姉様はノルベルト様を待つ様になりました。
お姉様は、エイルマー様が好きでした。幼い頃から彼の為に、生きて来たのです。彼しか知らず、彼の為に全てを注ぎ、そして捨てられました。
ノルベルト様はお姉様より6つ程年上で、同じ歳のエイルマー様より随分大人でした。エイルマー様を支えてばかりいたお姉さまにとって、ノルベルト様は包容力があり、頼りになる男性。恋に落ちない訳がありません。
側から見た二人は、とても良い感じでした。ああ、、、このまま結婚してしまえば良いのに、、、。
*****
花祭りを明日に控え、私達はお部屋で寛いでいました。お姉様のレポートも郵送済みです。
ノルベルト様が花束を持って来ました。
「レポートは終わった?」
「はい、無事に郵送も致しました」
彼は近付いたお姉様の指先に触れ、そっとキスをします。
「リディア嬢に」
と言って花束を渡しました。
「ステキ、、、」
と、じっくり花を見るお姉様。ノルベルト様はお姉様を優しく見つめます。ああ、、、美男美女、眼福です。
「このお花はチューリップですか?」
「そう、少し品種改良しているんだ」
「初めて見ました。花弁はチューリップなのに、開き方が違うのですね。別のお花にも見えますし、やっぱりチューリップ、不思議だわ」
嬉しそうにノルベルト様を見上げ、彼と目が合い頬を染めるお姉様、、、可愛い、、、。
「どうですか?ノルベルト様、私のお姉様はステキでしょう?」
「ええ、今すぐにでもプロポーズしたい程に」
お姉様は更に顔を赤くして、花束で顔を隠しました。
*****
夕食時、私はノルベルト様に、相談を持ち掛けました。
「花祭りが終わりましたら、私達はお姉様の卒業式の為に帰ります。ノルベルト様はどうされますか?」
「私も参加出来るのかな?」
「お姉様の婚約者としてなら」
「ふむ」
「お姉様と一緒に王太子妃候補だった、公爵家のイヴェット嬢から手紙が届きました」
そう言って、執事に手紙を渡します。
「読んでも?」
「お願いします」
暫く目を通してから、手紙を畳みます。それを執事が預かり、私の元に返しに来ました。
「上手く行っていない様だね」
「側妃の話しが出たそうです。まずはお姉様にお話しがあるでしょう。多分、卒業式に出席する為に自国に戻れば、すぐ」
「私の所に来ている事は?」
「知らないと思います。父には内緒にして頂いております。こちらには、花祭りを見に行くと話してあるので」
「では、リディア嬢の卒業式に婚約者として出席しようか」
「有難う御座います。父にもその様に手紙を書きます」
「私からも正式に、婚約したい旨を伝えるよ。良いね、リディア」
お姉様は嬉しそうに微笑み
「はい、お願い致します」
と返事をしました。
*****
翌日は朝から身支度です。
準備された衣装は、町娘風のドレス。
「可愛い、、、」
お姉様は嬉しそうです。
「貴族の衣装だと、周りが緊張するからね。これなら、汚れても気にならないし、朝から晩まで楽しめるよ」
コルセットの無い衣装が、最初は少し不安でしたが
「慣れると楽ね」
とお姉様が笑うので、安心しました。
私達は花祭りで、色々な物を楽しみました。食べる物も飲む物も、必ず花が飾ってあるし、お店にも沢山の花が飾ってあります。女性達の衣装には花柄が多く、男性も胸元に布で作った花を差しています。
「ノルベルト様、ステキですね」
お姉様が幸せそうに呟きました。
「みんなが楽しそうで嬉しい、、、」
お姉様、、、私はお姉様が嬉しいと感じる事が、嬉しいです。ノルベルト様と結婚したら、なかなかお会いする事は出来ませんが、私はお姉様が大好きです、、、。
*****
夜まで街で花祭りに参加して、私達は大分疲れておりました。部屋を暗くして、ベッドでウトウトしていると、誰かがノックをしています。きっとノルベルト様でしょう、、、。
お姉様がベッドから抜け出し、上着を羽織る気配がします。そっと扉を開けたのでしょう。廊下の明かりが入って来ました。
「アーネスティン、、、」
私は深い眠りに着きそうで、小さな返事しか出来ません。
「アーネスティン、ノルベルト様と少し散歩をして来るわ」
どうぞ、どうぞ、、、二人で甘やかな時間をお過ごし下さい、、、
扉が閉まり、廊下の明かりが途切れ、部屋は暗くなりました。
*****
そして、いよいよ卒業式の日を迎えました。ノルベルト様は多くの仕事を熟し、私達の後から、早馬で駆けつけて下さいました。
一晩休息を取り、二人は卒業式の為に正装します。急な事だったので、お揃いの衣装には出来ませんでしたが、ノルベルト様は白いタキシード、お姉様は持っていたドレスの中から、一番ノルベルト様の色に近い物を選びました。
私はお姉様を警護する騎士に扮します。ルシールと色味を合わせました。
「アーネスティンお姉様、ステキ!」
小さなお姫様も可愛らしいドレスを着て、お姉様の卒業式に参加します。
「リディア、、、良いね」
「はい」
私は見守るだけでした、ノルベルト様がお姉様を守ってくれる。そう思うと、怖い物はありませんでした。
*****
私達の学園は四年制、公爵家と伯爵家のみが入学する事が出来るのです。その為、生徒数が少なく、全学年卒業式とパーティーに参加し、その家族、婚約者も出席出来ます。
卒業式を終え、1時間の休憩を置いてから卒業パーティーになります。
私達家族の元に、エイルマー様が近付いて来ました。
「リディア嬢、随分久しぶりだね」
お姉様はカーテシーをします。
「長い間学園を休んでいたから心配したよ。君に話したい事があったのに、なかなか会えなくて困っていたんだ」
「エイルマー王太子殿下、儂の娘の婚約者を紹介させて頂きたい」
父上がズイッと前に出た。側妃の話が出る前に、婚約者を紹介するつもりだ。
「隣国のノルベルト=ガスコイン公爵と縁が有りまして、婚約を結びました。まだ、書類だけの婚約ですが、卒業後には正式に婚約式と結婚式を考えております」
エイルマー様の動きが止まりました。
「ノルベルト=ガスコイン公爵?」
彼と腕を組むサフィラ王女が名前を復唱すると、エイルマー様は彼女の方を見ます。
「私の元婚約者です」
彼は父上の顔を見て、お姉様の顔を見ました。
私の後ろから
「リディア=シャノン嬢と婚約しました。ノルベルト=ガスコイン公爵です」
と美しく挨拶をすると、エイルマー様は
「婚約おめでとう」
と引き攣りながら言いました。
**********
リディアが婚約?!
そんな話は聞いていない。母上に婚約者を紹介して欲しいと願ったのは、エヴァンジェリンだけだった。
だから、私は彼女が憔悴したまま、私から声が掛かるのを待っているのだと思っていた。
学園を休んでいるのも、隣国の花祭りを見に行くと嘘を吐いているのだと思っていた。私がサフィラと婚約したから、彼女は打ちひしがれて、部屋から出られないものだと、、、
婚約者、、、?
*****
サフィラは何も出来ない王女だった。ただ、可愛いだけの王女。
三番目の王女と言えど、公務は出来ると思っていた。しかし、難しい話になるとその場から逃げ、都合が悪いとニコニコ笑う。
以前、何処かの姫が可愛いだけで、使い物にならないと聞いていたが、それが彼女の事だった。
母上には、リディアで無くて良いのかと、何度も確認された。父上からは、サフィラの父王から身に余る条件を提示されたと聞いた。
もう、後には引けない。
リディアを側妃に迎え、助けて貰おうと思っていたのに、、、隣国の貴族と婚約、、、しかも、サフィラが婚約破棄した相手、、、。
ダメだ、、、。
他の候補者も既に相手が決まっている。パトリシアは結婚した。エヴァンジェリンの婚約者は母上の紹介だ。イヴェットに側妃なんて、話をしただけで公爵の怒りを買う、、、。
私は一体どうしたら良いんだ、、、
いるでは無いか、、、一人、、、
「アーネスティン、、、」
**********
エイルマー様が私に気付いた様です。
「エイルマー王太子殿下、、、真逆、私に側妃になれと仰いませんよね?イヴェット様を差し置いて、私に声を掛けるなんて、信じられませんもの」
「あ、、、い、や、、、」
「それに、私は王太子妃教育を受けておりませんから、お役に立てるとは思いません。何卒、可愛い婚約者様をお大事にされて下さい」
「、、、」
「えー、、、無理ぃ、、、。エイルマーが、リディア嬢がいるから大丈夫って言ったんだよ?私に、外交とか無理、、、リディア嬢に戻って貰って?」
サフィラ様、、、その様な会話は、もう少しボリュームを落とすか、別室でお願いします、、、。
私は思わず、腰に差した剣に手を掛けました。
ああ、今すぐ、この剣を鞘から抜いて、王太子殿下を斬り付けたいっ!怒りに震えそうになる。
こんな王女がお姉様の代わりに選ばれたのか、、、
そう思いながら、深呼吸をする。一度閉じた目を静かに開くと、エイルマー様は青い顔をしていた。
この場で剣を抜く事など無いのに、、、。
穏やかな音楽が流れて来る。卒業パーティーが始まる合図だ。
「殿下、始まりましたわ」
サフィラ王女が彼の腕を引き、会場の真ん中に向かう。
私達は二人の後ろ姿を見ていました。
「アレが次の国王か、、、」
父上がポツリと呟きます。
「アーネスティンお姉様っ!ダンスの時間ですよ!私と踊ってくれる約束です!」
ずっと大人しくしていたルシールが、待ち切れず叫びます。
「お待たせ致しました、お姫様。今宵、貴女の貴重な時間を、是非私とお過ごし下さい」
私はルシールの手を取りながら、ダンスを申し込みます。
彼女は、丁寧なカーテシーをして応じました。
「私達にも、あんなに可愛い子が出来ると良いね」
ノルベルト様が、お姉様の手を取りダンスに誘います。
「では、儂達も」
父上が母上を誘い、私達は時間が許す限りパーティーを楽しみました。
お幸せに




