悪食なる者 Ⅰ
「【護ルベキ者】」
スキル【護ルベキ者】はHGと呼ばれる数値を参照して、HGが高いほど防御力が上がる結界を作り出すスキルだ。そして、魔力がある限りこの結界は消えない。
「【HG視認】」
そしてこのスキルはそのHGを視認できるようになるスキルだ。肝心の数値は―――
「はは⋯」
乾いた笑みが俺の口から零れ落ちる。
HG50000だって?
なんたる幸運。
これならよほどのことがない限り⋯。
油断していたと思う。少なくとも、油断していい相手じゃなかったんだ。
「ゴハッ!?」
苦しい。
心臓を直接締め付けられたような痛み。
嘘だろコイツ。俺の、結界を蹴り一発で破ってきやがった。
「あれ?なんかある」
「おらぁ!」
結界に阻まれた自分の攻撃に戸惑っているのか動きを止めたギイナ目掛けて、ゴルトとユーサの剣が襲う。
だが、ギイナが後退したことであっさりと躱されてしまう。
「シュウサ。いけるか?」
「【護ルベキ者】の全体発生はもう無理。それどころか【勇撃】とかも無理」
あの蹴り一発でもう魔力がすっからかんだ。
だけど、あの攻撃はカキアの結界じゃ防げない。
「ゴルト」
「なんだ?」
「俺の命、預けていいか?」
魔力は心臓で作られている。だから魔力の枯渇は危険だ。一気に減ればそれだけで死ぬリスクがある。今度【護ルベキ者】を使ってギイナの攻撃を防いだら俺は絶対に死ぬ。
だが、使わなければみんな死ぬ。
だからゴルトに託す。
「もちろんだ」
「オッケ。じゃあ頼んだよ!【護ルベキ者:武具付与】!」
ゴルトの盾が、聖なる光に包まれていく。
ゴルトが持つスキル【ジャストリフレクション】【ジャストガード】でガードした場合。【護ルベキ者】の魔力消費は適用されない。まあミスったら俺死ぬけどね。
そして、次の瞬間。
ゴルトの盾が青く光る。
【ジャストガード】が成功したエフェクトだ。
ゴルトを除いた三人の攻撃が、ギイナに命中する。
「⋯⋯っ!」
ギイナが顔をしかめたような気がした。
「ユーサ。あれ、できるか?」
「ああ、”あれ”?」
よし。
「みんな。フォーメーションSだ!」
「「「了解!」」」
「今だ!」
「【勇撃】!」
「【強撃】!」
「【業炎球】!」
何度目かわからない青いエフェクト。
そろそろか。
「⋯⋯チッ」
ギイナが煩わしそうに舌打ちする。
何度も何度も攻撃を防がれれば誰でも苛つく。
そうなった時、取る行動は一つ。別の人を狙えばいい。ギイナはゴルトから標的を変え、カキアへと狙いを定める。
その拳は、誰の介入すらも許さずカキアを穿つ。
事はできなかった。
「は?」
弾け飛ぶ青いエフェクト。
先程までカキアがいた場所にはゴルトがいて、ゴルトがいた場所にはカキアがいる。
「スキル【影縫《転移》】!」
ユーサの影を用いたその技はスキル単体ではなく、ユーサの努力が可能とした最高の能力!
即ち、転移だ。
ゴルトが絶対防御してくれる。
ユーサが絶対回避させてくれる。
カキアが絶対回復してくれる。
あまりにも他人頼りのこの作戦は、非常に苛つく。それでも、俺らしい。
「ははっ!今の見たかよ!めっちゃギリだったぜ!」
「集中しろ!」
希望が見えてくる。勝てるかもしれない。
「【明日ヘノ光】!」
眩い光がギイナに傷をつける。
「【煌撃】!」
いける。確実に削れてきている。
勝つぞ!
HG:敵対心、対象への負の感情の数値




