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ただ咳をする  作者: haremame
廻編 第一章 星に願いを 月に幸せを
2/5

勇気って何?

「行くぞっ!」



悔菜が使ったスキルは斬撃を広範囲に飛ばすスキルだ。威力も高く、使い勝手はかなりいい。


その技のお陰で敵の数が92から60まで減った。



「俺ぁ、洒落臭いのは気に入らねえんだ!【我武者羅】!」



ゴルトがゴブリンキングに単騎で攻撃を仕掛ける。



「シュウサ!こいつは俺が惹きつけとくぞ!」



「頼んだ!」



ゴルトの強みは崩されない鉄壁の守りと逆境に燃える不屈の心だ。ゴルトならキングの猛攻も防げる。


さて⋯。



{ゲギャギャギャ}



俺の前にゴブリン達が10体前後集まってくる。確かに、このパーティの中で一番強いのは俺だ。警戒されるのは仕方ない。だけど。



「俺を止めるには足りないぞ」



ゴブリン達は、腰から上を両断されて崩れ落ちていく



「【勇撃(ゆうげき)】」



俺は勇者のスキルを扱う。


周りのゴブリンたちも少し恐れているようで後退していく。でも、いいの?俺ばっかりに注目して。



「【アサシネイト】」



「ナイスユーサ!」



「まあね」



【アサシネイト】。

相手の認識から外れたときにのみ使える高威力の技。威力はものすっごく高い。でも、強い敵が相手だと認識外に行けないから使えないのが玉に瑕だな。それでも強いのはちょっとずるい。



「シュウサ!そろそろ来れるか!」



「ああ!」



そろそろゴルトが限界らしい。


チラッと周りを見ればユーサとカキアが他のゴブリンを抑えてくれている。悔菜は少し囲まれているな。必要ないと思うけど助けに行こう。



「【勇撃】!」



「シュウサ君!」



「ゴルトの方に向かうぞ!」



「わかった!」



ユーサ達の方も終わりかかっている。



「ぐぬぬぬ⋯⋯」



恐らくは何かの骨で作られた大剣はゴルトの持つ立派な鋼の盾を裂いてしまう。



「ぬおっ!?」



「ゴルト君!?」



「ユーサ!」



「【影縫】!」



{グア!?}



キングの影がまるで意思をもったかのようにキングの足に纏わりついていく。それを振り払おうとキングが身動ぎするが、元からそうであったかのように動かない。



「【命勇撃(めいゆうげき)】⋯!」



スキル【勇撃】。

相手の罪に応じて威力が変動する攻撃スキル。

素の威力も去ることながら、凄まじい火力を持つスキルだ。

【命勇撃】は【勇撃】の進化スキル。威力は、【勇撃】の倍以上に昇る。俺の最高火力だ。


キングはその一撃を防ごうと骨の大剣で受け止めるが、その剣すらも斬り飛ばしキングを両断する。



「よし、依頼完了!」






ギルドへの報告が終わったあと。



「修理費も払ったし、キング討伐で国から褒美も出たし、美味しいものでも食べに行こうか。」



「いいね。賛成」



「そうだね。ピャザ(ピザみたいなもの)でもどうだい?」



「いいですね。たまにはそういうのもいいかもしれませし」



「俺はなんでもいいぜ」



「じゃあ、なにか食べに行くか!」



俺達はその後ピャザをたらふく食べた。




その日は突然来た。いつもの朝、いつもの日常。

冒険者ギルドの扉を開けた瞬間。この世界に脅威がいることを思い知らされた。



「こ、これは⋯⋯」



そこにいつものように活気あふれる姿はない。



「回復ポーション持って来い!有りったけだ!」

「怪我の消毒用にマナスライムのエキスを!」

「在庫がない!狩りに行かなくちゃ!」

「おい!追加で重症者が3人!」

「そんな!?ここだけじゃ足りないぞ!」

「回復魔法使えるやつは手伝え!」

「誰か教会から聖職者呼んでこい!」



何が起きているのかわからない。

ただ、ここで助けなくちゃ。



「カキアは俺と怪我人に回復魔法を!悔菜は教会まで人を呼びに行ってくれ!ゴルトは怪我人を運ぶのを!ユーサは魔物の狩りを頼んだ!」



「「「「了解!」」」」



「【上位範囲回復設置】!【範囲回復設置】!」



「【勇情】!」



この街の冒険者ギルドはこの世界の中でもかなり大きい建物だ。その床一面に怪我人が並べられている。何があったんだ?


っ!そんな事考えてるひまじゃない!救うんだ!

目の前の人を!



「おい、嘘だろ」



周りの喧騒も聞こえないほど集中していた俺の耳にすら突き刺さる絶望の声。



「ギルドマスターが⋯」



「は?」



ギルドマスター。

文字通りギルド内で最強の人物が選ばれる冒険者の憧れ。そのギルドマスターが、瀕死の重体で運ばれてきた。



「カキア!ギルマスを重点的に治療しろ!絶対に死なすな!」



「わ、わかりました!」



ギルマスの強さは一騎当千だ。それこそ勇者の俺ですら凌ぐほど。死なせるわけにはいかない。それに⋯⋯⋯恩もある。



「魔、王⋯⋯」



そんなギルドマスターが放った言葉に、俺は耳を疑った。魔王、魔王?魔王にやられたのか?



「頼んだ⋯⋯⋯シュウ、サ」



ギルドマスターは、この世を去った。




アダツギルドマスター。

俺達がこの街に来てから家を貸してくれたり、ご飯を奢ってくれたり、武器をくれたり。変に抜けてるところがあったけど頼りになる人だった。


俺は、父親のように慕ってた。というか、俺達全員そう思ってた。



「みんな。話がある」



そう言って俺は、みんなを集めた。



「俺は本格的に勇者として魔王討伐を目指そうと思う」



「OK、でどこ行くんだ?」



「だよね〜。で、どこに行くんだい勇者様?」



「大変そうですけどね」



「なんとかなるよ」



「あ〜、やっぱわかる?」



「ん?そりゃ当たり前だろ。ついてきてくれるかって聞こうとしたろ」



バレてたか。



「わかりやすいよね〜シュウサ君って」



「だね〜」



な、なんかみんなに負けた気がする。



「みんなお前に付いていくってことだよ」



そっか。そっかぁ。



「こんな不甲斐ない俺に、命を預けてくれるか?」



「おうよ!」



「着いてくさ。どこまでもね」



「頑張りましょう」



「やってみなくちゃわからないってね」



大きな科学実験かよ。よし、それじゃあ。



「行くか!」



ギルドマスター。

あなたの頼み(クエスト)、引き受けました。







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