さあ、賽は投げられてよ?
極悪ホステスの最新話です。
楽しんでいただけると幸いです。
ところでこの間、私のほかにまた女の子が王妃陛下の補佐官としてやってきた。
名前はオーロラ・マルティネス。
そう、アリステア・マルティネス侯爵の妹。年は16歳。なんでも天才でこの国で唯一男子しか入れない大学に若干13歳で入学し、2年で飛び級して卒業。
マルティネス侯爵家らしい金色の眼が特徴的で美しくて、黒髪で、女だけどパンツルック。
凛としていて主人公として完璧な女。物事はきっぱりと言うわ。
ここまで書いたら分かるでしょ?そう、主人公交代ってわけ。
私クラリスは悪女として断罪されるためにそのルートを歩くことになった。
私は彼女と初対面してメアリー・スーじゃんって吹き出しそうになったわ。
メアリー・スーは説明がめんどいから調べてね。
もうグエンも男の補佐官も王妃陛下も皆彼女に夢中よね。でも私は普通に仕事してた。
オーロラが褒められようが賞賛されようがどうでもいい。なんだったらこの際私をクビにしてくれて結構よ。ていうかこの仕事したくねえし。
私は急に冷たくなった王妃陛下に何食わぬ顔で書類を渡し、仕事を終了した。王妃陛下は私の書類を見て「クラリス」と呼び掛けたので私は陛下の元へ行った。
「なんでしょうか王妃陛下?」
「これからはオーロラのやり方でやって。これを参考にして。こっちの方が分かりやすいわ」
「かしこまりました」
私は丁寧に礼をしてオーロラの書類を手に取り、ちゃっちゃと直して陛下に渡した。陛下の眼を見ると満足そうだった。
グエンたちはニヤニヤ笑っている。オーロラが主人公になったから私が悪役で皆彼女の味方。
王妃陛下も陛下もガルシア大公もアレキサンドルもオーロラの味方になって彼女をチヤホヤしだした時、私とオーロラは偶然廊下で2人対峙した。彼女は余裕たっぷりで言ったわ。
「ごきげんよう、クラリス嬢。王妃陛下が溜息を吐いていらっしゃいましたよ。『クラリスでは役に立たない』って」
オーロラの発言に私はピンと来たけどわからないフリをして「そうですの」と普通に答えた。
「ねえ、どうするおつもり?この仕事はあなたのような人ができるような簡単な仕事ではないの。さっさとお辞めになったら?」
「はあ、そうですか。ではオーロラ嬢の方から王妃陛下にそう進言しておいてくださいませ」
ガキの相手ってなんでこうクソダリーんだろって思いつつも私は眉一つ動かさず答えた。
オーロラは少しタジタジしてた。まあ当たり前よね、16歳の小娘と中身32歳の女じゃあ余裕が違いすぎる。経験値も。
オーロラがなおも攻撃してきそうだったので私は「ああいけない、そろそろ時間だわ」と言ってオーロラに丁寧に礼をして去った。まるであなたのことを尊敬しておりますよっていう風にね。
本来ならバカにされてると思うんだろうけど、仕事で会った時に私の方を見て勝ち誇った顔してた。あ、バカだこいつ。
オーロラはそれからも舞踏会なんかで攻略対象の男たちを攻略し出したから、私はこれは早めに手を打った方がよさそうねと少し考えて、言おうと思っていたことをあえて黙っていることにした。
そしてしばらく経って、「あなたじゃ話にならないわ」と王妃陛下が言ってきたから私は謹んで仕事をクビになり、王宮の掃除婦になったの。
そして前は一月に一度だったのが週に一度家に帰るようになったの。そして手紙書いたり本読んだりしてた。
舞踏会に行けば笑い者ね。だってどう見ても左遷だし。
グロリア様は心配そうに私たちを見ていた。私は公爵家で皆の様子を確かめ、まだここまではオーロラの力は及んでいないということを知って、ヨアンを部屋に呼び出した。
「なんだいクラリス?」
「今日あなたをさらっていくわ」
私の申し出にびっくりしていたけど、彼はフ、と微笑んで「わかったよ」と言ってきた。
「どうせ私は男らしくもあれない男だ。君に従っている方がいいかもな」
「よろしいことね。ではすぐにでもイーシーア女王国へ向かうから準備して。どうせこの家はナサニエルが継ぐわ。なにも問題はないはずよ。ヘレナもね」
「そうだね、ーー手紙は出したの?」
「ええ。王宮にいるときに。ヘレナを使ってね」
「君もヘレナも見違えたな」
「女だからってなめてると痛い目見るのよ?ヨアン」
「分かったよ、クラリス」
そうして私たちは公爵に許しを得て(めっちゃ簡単だった。だって王宮の名誉ある仕事失っておかんむりだったし)2人でイーシーア女王国へ行ったの。
ガルシア大公もアレキサンドルも両陛下も私の賞賛要員でなくなったから止めなかった。
ラッキーと思ってイーシーア女王国へ行き、オーサ女王陛下に謁見したの。
そしたらオーサ女王陛下が『女らしい』カッコイイ笑顔で私を迎えてくれて、それでヨアンと2人そろってイーシーア女王国の人間になったの。
ヨアンは男がドレスを着ることに最初は抵抗感があったみたいだけど、元々なよなよした男だったから数か月で慣れて、趣味も経済や政治の話からは遠のいて、編み物したり刺繍したり、料理し始めたわ。
半年経ったら女みたいな顔つきで笑うようになっていた。逆に私は男みたいに笑うようになったわ。
オーサ女王の侍従としてオーサ女王に付き従い、陸軍参謀として参加するようになった。
イーシーア女王国って軍事国家だから、女が皆とんでもない武闘派で過激なのよね。えげつない戦略の数々を考え、日々領土を拡げるために会議してた。
私はそれを聞きながら、戦況を確かめ、今か今かと待っていた。
ヘレナは修道女になるって言ってさっさと教会に入ったわ。公爵は止めたらしいけど、ヘレナとしてはどうしても神の為に祈り、貧しい人々の為に活動したかったんだって。その様子は後で話してあげる。
それで1年経った頃、ヘレナの言ったとおり、白い薔薇が赤い薔薇と争い始めたわ。
さてここで答えを教えてあげる。皆は左翼とか右翼って知ってる?
右翼はこの世界でいえば伝統と秩序と王政を支持する団体。議会の右側に座ってるから右翼。白とも呼ばれる。
なぜかっていうと、元の世界で皆、フランス革命のことは習ったわよね?あの時のフランスの王家の紋章が白い百合だったから白。
反対の左翼は革新、改革派。色は赤。これはロシア革命で流された血を表して赤って呼ばれたようになったらしいの。まあ一説にはだけどね。
この世界の話って結局は元の世界の創作物でしょ?それも素人の。だから色とかはあんまり考えないのよね。元々話浅いし。
これでエラディア王国はてんやわんや。オーロラが主人公になったものの、まだ作者も大筋を決めていなかったみたいだからうまいこと騎士団長のアリステアを兄に持つオーロラを動かせなかったみたいね。
逆ハーだし。とりあえず今はオーロラを出さずにことを進めているみたい。
ここが絶好のチャンスだと思って私はオーサ女王陛下に進言したわ。
「陛下、エラディアを攻めるならば今でございます」
ってね。
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次は明日に更新します。




