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自己紹介と駒が動き始める気配

極悪ホステスの第三話です。

お楽しみいただけると幸いです。

そういえばすっかり私の自己紹介を忘れていたわ。


私の名前は佐々木夢子。源氏名はキャバ嬢の時は姫香でホステスの時は百合絵。バカみたいな名前よね。夢って言っても転生前は悪夢だったわ。


親はろくに働きもしないろくでなしで毒親で何かにつけて私を折檻して、貧乏で、学校では風呂に入れなくて臭いからっていじめられて。食事は1日に1度、給食だけ。夏休みや冬休みは地獄だった。


高校は行かずに中学卒業と同時に家出して年齢ごまかして夜の店で働いて、18歳になった時に新宿のキャバクラで働いたら私って意外と顔が良かったらしくてすぐに1位。


そこで礼儀作法を学んで22歳くらいで銀座のクラブへ。そこでお客様をたぶらかして金を搾取する方法と教養を身に着けて、資金を稼いで自分の店を開こうかなって時に元カレに刺殺されて終わり。つくづくツイてないわよね。


そして気づいたら、だいたい同じ境遇で金があるシャムロック伯爵家の長女・クラリスに転生してた。


親は妹のベティばっかり溺愛しててクラリスは最低限の礼儀作法と勉強はしているもののあとはメイドと同じ扱い。そしてクラリスが18歳の時に政治的なつながりの為にウィリアムズ公爵家の次男・ヨアン・ウィリアムズと政略結婚。


でもそこにも義妹で養子の愛されヒロイン・ヘレナがいて。ヘレナは金髪で青い目でイノセントで可憐で愛されるのもよくわかる。


クラリスはというと茶髪にケアをすればそれなりに綺麗になるだろうけど、痩せすぎだし、肌のケアをしていないからソバカスもあるしでまあ男から見れば貧相なブス。長男のナサニエルも次男のヨアンもヘレナの方が可愛いみたい。義父も義母も。


ーーで、私は公爵家の屋敷に身一つで追い出されるように嫁に出され、そこでいっちばん狭い部屋で暗くてじめじめするところに住まわされて、仕事は事務だけど、風邪を引こうがどうしようが働かされて、食事は固いパンにチーズにミルク。こればっか。


でもね、私は銀座で一晩で500万稼いだこともある女。男をたぶらかすなんてチョロいわけ。まあ伝説の一晩で1000万稼いだ女には及ばないけど。


私がクラリスに転生したからには3年経たずに私が主になってやろうと思って昨日から作戦開始したわけ。


昨日の舞踏会はなかなかだったでしょ?



さて、ここまで自己紹介したところで食事が来たわ。お付きのメイドのマチルダが応対してる。私は転生してその日の夜にマチルダの弱味を握った。

人を動かすのは簡単。弱味を握るか、金を渡せばいい。私はとりあえず弱味を握ってマチルダに言うことを聞くようにさせ、これから金が好きに使えるようになれば金で釣るつもり。


マチルダと応対しているのはデリアとジョアンナみたい。こいつら私のこといじめてたのよね。まあクラリスだけど。でも私クラリスの記憶もあるから。


私はデリアとジョアンナに「デザートはケーキにしてね。お義父様に太れって言われたらしいから」と言って手を振った。

2人はビクビクしながら「はい」と言って出て行ったのが痛快。実は私、あの2人の弱味も知ってるの。あとは出す時期を考えるだけ。


マチルダがテーブルに置いてくれた盆を見て私は「あらまあ」と声を上げた。

昼食兼朝食かしら?柔らかそうなパンにバターに果物の盛り合わせにサラダにスープに美味しそうに焼かれた肉にゆで卵に炭酸水とオレンジジュースがついている。


こんなの伯爵家でも食べたことないなあと思いつつ、ナイフとフォークを持ち、ゆっくり味わった。お肉がこうばしくて美味しい。そう思っているとマチルダが声をかけた。


「午後から奥様とヨアン様、ナサニエル様、ヘレナ様が集まってクラリス様のドレスとアクセサリーとお化粧品などを買うそうですのでお風呂に入ってお待ちください」

「ああそう、分かったわ」


私はあのヘレナ一筋の兄弟のことだからどうせテキトーに1着2着ドレスを買って、アクセサリーもショボいのを1個くらいだと思っていたからいつもの普段着でいいかと考えていた。

奥様は優しいっちゃ優しいが助けてはくれない役に立たない奴。テキトーに応対してさっさと終わらせようと私は食事の続きに入った。


ケーキを食べて、お風呂に入って、クローゼットにある3着のドレスのうち、まあこれでいいかと丈の合っていないところどころほつれた安い茶色のドレスを着て待っていると、なんだか15で家を飛び出して、初めて入った夜の店で店の備品のボロいドレスを着て、100均で揃えた化粧品で接客していたことを思い出した。


10代って無茶するわよね、と思いつつ、まああそこのママには最低限の礼儀作法を教えてもらったからよしとする、と考えているうちに部屋に奥様とヘレナとシスコン兄弟が入ってきた。

私は頬杖をついて溜息を吐き、マチルダに説明してもらったように気絶特有の頭痛に困っております、という仕草で迎えた。


「クラリス、大丈夫?」

「はい、お義母様」


私は弱弱しい態度でこの無能の奥様を見た。目を見れば何を考えているのかだいたいは分かる。


この女は無害、と思ったところでヘレナをちらりと見た。この女は腹黒。しかしバカ。義兄2人の溺愛に調子乗ってるだけ。長男ナサニエル、めんどくさそう。まあ当たり前よね。ーーで、我が夫ヨアン。私のせいで可愛いヘレナとのお茶会の時間が無くなって不機嫌。ちょっと心配。バカな男。

私は瞬時に4人の様子を判断し、無害な義母に朝食の礼をした。


「お義母様、今日はごちそうをありがとうございます。実家でもあれほどのものは食べたことがございません。なんとお礼を申し上げればよいか...」

「そんな、いつもの朝食でしょう?」

「いえ、わたくしはいつもは固いパンとチーズを食べております。毎食」


正直に言うと奥様の驚きと同情が4割上昇。ヘレナ、びっくりしているフリをしている。演技が甘いわよ。ナサニエル、へーえ、アンタの指示だったの。ヨアン、割とびっくり。私は分析し、続けた。


「お義父様にも言ったのですが驚いてらして...、皆さまはいつもは違うものを食べていらっしゃるのですか?」

「デザイナーが来たようだよ、クラリス」


公爵の名前を出した途端焦るあたりツメが甘いわねナサニエル。ーが、こいつは用心しないとね。私は弱弱しく「はい、お義兄様」と頭痛に耐えているように微笑み、ドレスを見た。




お読みいただきありがとうございました。

次は今日の夕方に更新したいと思います。


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