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ちょっとしたたくらみ

極悪ホステスの最新話です。

今回はクラリスは出てきません。

お楽しみいただけると幸いです。

「兄さんは昼間のクラリス嬢を見たか?クラリス・ウィリアムズ嬢」

「いや、見ていないな。アメリアをなだめるのに大変でな」


ガルシア大公はワインを飲みながら兄であるベンジャミン2世に尋ねた。ベンジャミン2世は「アメリアの話では相当無礼な娘だったと聞くが?」とガルシア大公に尋ねると、彼はカラカラと笑った。


「そうとも、無礼も無礼だ!イーシーア女王国の女王、オーサ陛下に側近の侍従か陸軍参謀にならないかと誘われたことに腹を立てたアメリアがクラリス嬢の頬を打ってな。そして彼女はどうしたと思う?『あなたのようにその場その場の機嫌で態度を変える感情で動くようなお人がイーシーア女王国のオーサ女王陛下の目に留まらないのは当然』と言ったんだ!眉一つ動かさず、冷静に、皆にはっきり聞こえる声量でね!私は初めてアメリアが手を引っ込めた瞬間を見たさ」

「そうだったのか」

「ーーそれを加味して、兄さんはどう思う?」


ガルシア大公のニヤニヤした悪戯っぽい笑顔にベンジャミン2世は「どうとは?」と尋ねた。


「彼女はこうも言っていた。『わたくしは無礼な態度の方には地位に関係なく対応します』ともね。これで民主国家のシャンデア・キンギス王国のドルトフ一家と社会民主国家のドォルデン国王室の皆は彼女の味方さ。イーシーア女王国はうちのように貴族と平民でしっかり立場が分かれているが、イーシーア女王国は女権制だから女の騎士道をなによりも大切にする。あの場でどちらがより騎士に見えただろう?」

「ほう」

「私は彼女に話しかけて間近で見たが、あれはただの令嬢じゃないね。調べたところ、クラリス・ウィリアムズはシャムロック伯爵家にいた頃はメイドのような扱いを受けて、時には虐待もあったそうだ。それで最初は弱弱しい女だったらしいが、オルコット公爵家の一人娘、グロリア・オルコット嬢になぜか師事し、ああなったということだ。ーーが、私はそれは真実ではないと思うね」

「なぜそう思う?」


ベンジャミン2世の質問にガルシア大公は顔を近づけて人差し指をピンと上向かせて言った。


「彼女の眼だ。彼女は決して屈しない。どんな手を使ってでも手に入れたいものを手に入れる。グロリア嬢に師事したのはグロリア嬢の所作や気高さに惚れ込んだんだろう。どんな苦境に立たされても必ず這い上がる。泥くさい女だ。そして頭もいい。弱弱しいのはあれは演技だな。彼女の方もこっちに目を向けたときに演技だとバレているのを知っていて演技をし、そのあとやめた。潔い決断だ。たぶんあの女は人が何を考えているかが目を見ると分かるんだ。そして何をしてほしいのかも。名女優だな。その後の動向を見ていたが、孤高の騎士と呼ばれるイーシーア女王国の長女・アルベルティーナ王女とドルトフ一家の智将と名高いアレクサンドラ王女と一緒に茶を飲んでいたよ。一回呼ばれただけのパーティーでここまでできる女だ。ーー兄さん、ここまで言ってももしや分からないのか?」

「どうだかな、お前の見解が知りたい」


ニヤリと笑うベンジャミン2世に「兄さんはまったく」と溜息を吐いてガルシア大公は口を開いた。


「兄さんの妻のユニティ王妃陛下の侍女にでもしろってことだ。彼女をイーシーア女王国に渡す気か?イーシーア女王国に渡せば最後、彼女は徹底的にやるだろうよ。あの女はそこらの女傑じゃないぞ。オーサ女王陛下が直々に陸軍参謀の席を空けて待っているとまで言ってるんだ。あのオーサ女王だぞ?兄さん、一度彼女に会ってよーく観察するんだ。それか王妃陛下をつけろ。彼女は逸材だぞ」

「お前がそこまで言うなら、今一度会ってみるかな。アメリアが機嫌を損ねなければよいが」

「彼女なら大丈夫だ。クラリス嬢に『感情で動く奴はバカ』とはっきり言われたからな。態度を改めるだろうよ。兄さんもそろそろアメリアを我侭なお姫様から卒業させてやれ。彼女だって成長は必要だ」

「それもそうか」


ベンジャミン2世は「まあ、お前も出るというのなら茶会を開催しよう、バーナード」と言い、引き出しから葉巻を出して口にくわえた。煙をくゆらせつつ考えた。


クラリス・ウィリアムズ。さてどんな女だろうか。




お読みいただきありがとうございます。

次回は明日に更新します。


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― 新着の感想 ―
面白く読ませていただいております。 なんとなく気になったのですが、既婚の女性にも「嬢」呼びするものなんでしょうか? 調べたこともないのですが「夫人」呼びが妥当な気がして。
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