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軟派な男には気をつけて

極悪ホステスの最新話です。

楽しんでいただけると幸いです。



結局屋敷内はすぐに大騒動になり、公爵や奥様も出てきて、ヘレナの犯行はすぐにバレた。

私は慈悲深い義姉を演じながら「ヘレナ様がこんなことをするなんて...信じられませんわ」と泣き崩れた。

奥様は私の肩を撫で、ヘレナを優しく叱り(役に立たねーな)、公爵はヘレナに一応3日くらいの謹慎を命じ、私のアクセサリーやドレスをめちゃくちゃにしたメイドは解雇になった。さよならマリー。


私は「明日グロリア様のお屋敷へ行きますのにどうしましょう...舞踏会でのテストもございますのに」と困ったように言い、今度は公爵がすべて金を出して再びデザイナーを呼び、ドレスと壊されたアクセサリーや小物や化粧品を全部買い直してくれた。


私は今度は全部は買わずに、より気品高いもの、センスのいいものを選びドレスを揃え、靴も気品あるものを選び、香水もスイートピーからストレリチアの香りに変えた。薔薇ではちょっと派手すぎる。

リップの色もオレンジやピンクからローズや赤に変え、素朴な小娘から気品高い令嬢への準備を行った。


明日グロリア様の家へ行き、そして1週間後は舞踏会である。さあ、まずは試作段階の3か月の成果を見せてやるわ、と私は片付けられた部屋でパジャマに着替え、髪をとかしながら不敵に笑った。



グロリア様の教育というのは本当に素晴らしいものね、と私は藍色のベルベット生地に胸元にダイヤがちりばめられたドレスを着て舞踏会に出た。


髪は綺麗に結ってある。メイクはもちろんグロリア様の家でやったやつ。立ち振る舞いも仕草もまあまあ。

まだグロリア様のように場を圧倒はできないが、私が遅れて入った時、一瞬場が止まった。

そしてヨアンが笑顔で私の方へやってきた。なんか最近ヨアンの態度が違う。私と一緒にいたがるし、話したりすると嬉しそう。まあいいけど。夫婦仲はいいに越したことはないし。


私はアディンセル侯爵家のマシューを見つけてそっと笑顔で会釈をした。あの時はありがとう、の意を込めて。マシューも会釈を返し、私は夫に付き合ってお義父様のところへ行った。


「遅れて申し訳ございません。道が混んでおりましたので」

「いやいい、今日はまた一段と美しいなクラリス」

「恐縮ですわ」


気高く気品ある笑顔をし、私たち夫妻は貴族連中に挨拶に向かった。チラリと公爵の方を見ると何かを考えているようだった。そろそろヘレナを投入するかしら?私は内心クスリと笑いながら貴族たちに挨拶した。そしてその日初めてヨアンとダンスを一曲踊った。



珍しいなって思ってた時にどよめきが湧き、私はグロリア様きたかな?って扉の方を見た。


そしたらグロリア様ともう1人、王子の服着てる人がいた(また金髪かよ)彼は笑顔でグロリア様を放って私たちの方にやってきて挨拶をした。グロリア様は静かに遅れてやってきた。


「やあ、ウィリアムズ公爵家の皆、こんばんは」

「ご機嫌麗しく、アレキサンドル殿下」


一応私も皆と一緒に恭しく挨拶したけど、私の脳内では危険信号が鳴っていた。コイツは嘘を見破る。超キケン。軟派そうに見えてその実すごい計算高い。キケンキケンキケン。私は瞬時に演技をやめた。


「やあ、君がクラリス嬢かい?グロリアから作法を習っているという」

「はい、殿下。グロリア様の寛大なるお心で教育を施していただいております」

「ハハ、さすがはグロリアだ。聞いてた話と違うね。気品ある令嬢だ」


その言葉に私は「ありがとうございます」と礼をし、顔を上げた時、アレキサンドル殿下と目が合った。曰く「なかなかやるねえ」。もう気づいてる。私は迷ったがここは開き直ることにした。初めて素を出そうと。私は笑顔で言った。


「殿下はわたくしのような女が好みなのでしょうか?それともヘレナ様がお目当て?先ほどからグロリア様には一切構わないご様子ですが?」


私の言葉に公爵家は固まっていたが、殿下は「あーうん」と頭を掻きつつ、人好きしそうな笑顔で言った。


「私とグロリアは幼馴染でもあるからねえ。ついいつものように対応しちゃうんだ。気に障ったかい?」

「はい、わたくしの偉大なる教師でいらっしゃるグロリア様をそのようにぞんざいに扱って欲しくはありませんわ」

「クラリス」


ヨアンが止めに入ったが、ここで演技をするとすぐに見破られ、身の破滅、と思った私は実際ムカついてもいたし、殿下に言った。


「失礼ですが殿下、グロリア様は今後、伴侶になられるお方でございましょう?でしたらもっと大切になさった方がよろしいですわ。女というのは男の愛で輝くものですのよ。そして男は女の愛情で善くも悪くもなりますわ」

「言うねえ、自分たちの夫婦仲はどうなんだい?」

「最近はよくなっておりますわ。まあわたくしはしょせんどこにでもいる伯爵家の小娘。どうにでもなります。しかしグロリア様は違います。未来の王妃陛下を約束された方ですわ。殿下に進言して当然でございます」

「ハハ、参ったな。君は私が未来の王になると思ってるんだ?」

「はい、スキャンダルで身を滅ぼさない限りは。聡明で皆の上に立ち導く偉大な王になると確信しております」

「おもしろいねえ、気に入ったよ。グロリア、君の教育はさすがだ」


アレキサンドル殿下はグロリア様の黒髪をさらりと撫でて、手の甲にキスをした。グロリア様の眉が少し動いた。


「では私は今日はグロリアと一緒に舞踏会を楽しむとしよう。君、クラリス嬢と言ったね?気に入ったなあ。今度王宮で催されるパーティーに来ないかい?」

「わたくしには夫がおりますので、夫と一緒でしたら参りますわ」

「そっか、そういえばヨアン・ウィリアムズの妻だったね。いいよ。招待状を出そう。ついでに家族みんなで来るかい?」

「殿下の御所望でしたら」

「よっぽどヨアン殿を愛しているんだねえ。私にそんなにツンケンする女は初めてだよ。気に入った。皆で来るといいよ」


殿下は機嫌よくグロリア様の手を引いて「一曲踊ろうか」とダンスを踊ってた。あーグロリア様のダンスってすごい優雅。

ダンスも習おうと思っていたら後ろから「クラリス」という声がして振り返った。公爵がこっち見てる。なによ、打つ気?ご勝手に。


「クラリス、先ほどの殿下への言葉は失礼ではあるが、よくやった」

「は?」


私は何のことか分からず首を傾げた。なんかナサニエルも「やるなこいつ」みたいな顔で見ている。なんなのよ。


「王宮のパーティーに招待させるとはね。グロリア嬢の教育は素晴らしいな」

「そうでしょう、お義兄様。グロリア様は素晴らしいのです」


私がナサニエルにグロリア様の素晴らしさを語っているとヨアンが割って入ってきた。


「クラリス、君は分かっていないようだが、王宮のパーティーは限られた者しか参加できないんだ。オルコット公爵家や武勲を数多く上げているマルティネス侯爵家、そしてガルシア大公などだな」


へーウィリアムズ公爵家って公爵って言われてるけどそんなに立場低いんだ。なるほど、どーりでショボイ伯爵家の私を嫁にするはずだわ。私は本当に知らなかったので「そうですの」と答えた。


「もしや君、本当に知らないであんなことを言ったのかい?」


ナサニエルが呆れていった。私は「はい」と頷いた。今日は一度素を出したために、このままでいないとならない。


「お義兄様、尊敬する方がぞんざいに扱われていたら怒るものですわ。わたくしにとってはグロリア様がそうですの。敬愛するわたくしの教育者をあんなふうに扱うなど言語道断ですわ」

「そうか...まあ、君はそういうところがあるしな」


言外にアホって言われているけどまあいい。要はグロリア様が今日楽しいかよ。私はもう一度グロリア様を見た。あ、案外楽しそう。よかった。その時に公爵家の人たちのヒソヒソ声が聞こえて私は耳を傾けた。


「ーードレスを新調しなければな、ヘレナ」

「なに、お前ならやれる。クラリスはどうでもいい。単なる嫁だ」


ふーん、これはヘレナを王太子に気に入らせる気だな。だがしかし、この私が今までどれくらいグロリア様から教えを賜ったと思う?パーティーに向けていっちょやったりますか、と心の中で決心していたところ、ヨアンが「クラリス」と話しかけた。


「なんでしょうか?」

「今日の君はとても強気だったな。そんなにグロリア嬢が好きなのかい?」

「はい、わたくしのもっとも尊敬し、敬愛する教師で人生の師匠でございます」

「そうか。ーー私たちも踊ろうか」


そう手を伸ばしたヨアンの手をそりゃ取らなきゃな、啖呵切ったしと諦めて取り、一曲踊った。踊っている際中にヨアンは小声で私に言った。


「今日の君は気高くて、その、ものすごく、格好よかったよ」

「そうでございましょうか?」

「ああ。本物のエリザベート女王のようだった」


あの時のような君は好きだ、とヨアンは言い、私はどうしようかと考えた。金髪の男は嫌いだが、素直に感想を言う誠実な男は嫌いではない。


「ありがとうございます」


そう言って、私たちはダンスを続けた。



お読みいただきありがとうございました。

次回は今日の18時に更新します

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「おもしれー女」枠。。。
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