師匠発見、早急ニ弟子入リスベシ・
極悪ホステスの最新話です。
楽しんでいただけると幸いです。
2回目の舞踏会にお義父様が1点物のドレスを用意した。せざるを得なかったみたい。
でもこのピンクのドレス、どう見てもヘレナに似合うのよね。ていうか絶対これヘレナにプレゼントするために作ったけど、私がブチギレしたからヘレナを宥めて私に渡したでしょ。
わっかりやす。これだから男ってダメなのよね。
だから私「お義父様、こちらのドレスは私にはもったいなく思います。それにこちらはヘレナ様の方がお似合いになりますわ」って辞退したの。
だって似合うわけねーし。
ヘレナは「そんなことないわクラリス」って謙遜してたけど目が欲望でいっぱいよ。
それでその1点物のドレスはヘレナが着ることになって、私はいつものようなフツーの素朴な女ががんばっておしゃれしました感を出す深緑に金糸の刺繍が入っているドレスで出席したの。
だってこっちの方がヘレナの引き立て役みたいでいいでしょ?他の人間は気づいてないみたいだけど、舞踏会で私が下を向いて歩くだけで皆私のこと不憫って思うわけ。
あー政略結婚させられた上に最初はドレスもなくてボロボロで、次はどうにかメンツを立てるためにドレスを買ってやったようだけど、あれじゃあね、みたいな。
ドレスのランクももちろん1点物には足元にも及ばないくらい落としてある。
それでアクセサリーももちろん買ってもらった中のやつで一番安いやつ。貴族が見ればすぐ気づくやつ。
後ろからそっとついていくと、公爵もナサニエルもヨアンもヘレナも気づいてないみたい。
おめーら私が家出したこと割と社交界にも広まっているだろうになんでそんなバカでいられるんだ?
そしたらラッキーなことにこの間のエイベル伯爵夫妻が挨拶に来て夫人が私とヘレナを見比べて「まあ」とでも言いたげに扇で顔を隠し、「ごきげんよう」って挨拶したの。
それで分からないアホな貴族はいないわよね。公爵もナサニエルもヨアンもヘレナもようやく気付いてまずいって顔してた。
私はエイベル伯爵夫人が嘘が上手くないことを見抜いていた。顔に出ちゃうのよね。
私はアホ嫁を演じつつ笑顔でエイベル夫人に挨拶をした。
「クラリス嬢は今日は落ち着いたドレスですのね」
「はい。本当はお義父様が私に1点物のドレスを用意してくださったのですが、私には似合わなかったのでヘレナ様に着ていただきました。ヘレナ様お美しいでしょう?」
「え、ええ、そうね」
ゴシップ好きって邪推するの。どう見てもサイズがヘレナにぴったりのドレスを見て私を見て「そうでしたの」って笑ったわ。
不憫な子ねえ、って目をして。この人はさらにおしゃべりだと私は察し、ニコニコとアホのフリして笑ってた。
エイベル伯爵夫妻が去って行くと私は「飲み物を取ってまいります」と言って1人で行ったの。ヨアンを連れずに。
どうみてもおかしい状況にヒソヒソクスクスって声が聞こえて私は心の中で微笑んだ。
やっぱし家出と離婚騒動、社交界まで届いてんなって考えていた時どよめきがし、私はそちらの方を見たの。そして、
ーーー出会ったわ。イイ女に。
私みたいにいろんな人間と関わっているとね、分かるのよ。最高級の女ってやつ。
私みたいな小手先の演技だけでどうにかしてるんじゃなくて、圧倒的なオーラがあって、気品があって、いるだけで皆の視線をかっさらう女。
カッコイイ女。敗北すら感じない、ただ尊敬する女。
それが今日の舞踏会に出席していたオルコット公爵家のグロリア様だった。黒髪に紫の目が素敵。
ウィリアムズ公爵家の人たちが挨拶してて私は飲み物を取るのを忘れて戻ったわ。
皆が挨拶する中、私はポーッと見ているだけだった。そしてグロリア様がこっちを向いて「あなたは?」と声をかけた時、私思わず言っちゃったの。
「グロリア様、未熟なわたくしをご指導してくださいませ」ってね。
グロリア様もウィリアムズ公爵家の皆も見ていた貴族の人たちもびっくりしてたわ。
でも私はどうしてもこのカッコイイ女にカッコイイ生き様を教えてもらいたかった。
私の必死な目を見て、グロリア様は何かを察したのだろう、クスリと笑い、こう言った。
「まずは名を名乗りなさい。話はそれからよ」
私は慌てて名前を言い、ダンスも忘れてグロリア様と一緒に話し込んでいた。
オルコット公爵家は歴代の王妃も何人か輩出している家柄。ウィリアムズ公爵家は王妃は一人も輩出していない。
お義父様はさっきの私の言葉に驚いたようだけど、仲良くしたかった分、ちょうどいいやと思ったみたい。何も言わなかったわ。でもそんなの私にはどうでもいいことよ。
それよりもこのカッコイイ女の話を聞きたくてしょうがなかった。
「グロリア様のその気品は一体どこから出ておりますの?御本は何がお好きですの?観劇はお好きですか?その美しい身のこなしはどうやって?どうやればそのように美しくそして気高くーーー」
「質問は1つずつになさい、クラリス」
グロリア様はクスクス笑って私の髪を優雅に撫でた。ああ素敵。銀座で出会った超カッコイイママみたい。グロリア様は1つずつ答えてくれた。
「気品は分からないけれど、信念があるわ。誰にも屈しないという信念がね。本は哲学や詩学が好きよ。観劇は、そうね、たまに観に行くわね。身のこなしは幼いころに教師に習っただけよ。気高いのもまた信念ね。信念があれば自分を曲げることは無いわ」
「なるほど」
「でもあなたもなかなかやり手ね。頭の回転速いでしょう?」
グロリア様がコソリと私にそう言って私はバレてた、とグロリア様にこっそり「これが私の唯一の武器ですの」と囁いた。グロリア様はクスリともう一度笑い、「でもね」と囁いた。
「小手先の演技じゃあそのうち知られてしまうわ。よろしいこと、私の言うことをよく聞いて今から気品高い令嬢になりなさい。私は悲劇のヒロインは嫌いよ」
「はい、グロリア様」
私が素直に頷くと、グロリア様は「そう、素直な子は好きよ」と私に微笑みかけた。
読んでいただきありがとうございました。
次は明日に更新します。




