表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/101

やっぱり私、この人が好き。

仕事を終えて、駅の改札を抜けたとき。

たくやからの「先に着いたよ」ってメッセージに、自然と顔がほころぶ。


少し前のすれ違いが、嘘みたいだ。

まるで昨日までの不安が、ふたりの絆を強くしたみたいに。


たくやを見つけた瞬間、

「待った?」と声をかけるより先に、彼の方からふわっと笑ってくれた。


「暑かったね、今日。歩きながら、どっか寄ろっか」


何気ないその一言が、なんだか心にしみる。

この人と、また普通に笑い合えてる。それだけで嬉しい。


歩き出してすぐ、駅前の小さな神社で人だかりを見つけた。

あれ?と思って覗いてみると、ちょうど夏祭りが開かれていた。

派手さはないけど、浴衣の子どもたち、屋台のあかり、夜の風。

ふわっと懐かしくて、胸がきゅっとなる。


「行ってみる?」とたくやが聞いた。


私は首を振ってから、にっこり笑って言い直した。

「ううん。行こう!」


かき氷を半分こしたり、

たこ焼きを食べて口の中を火傷したり、

金魚すくいをのぞいて「うまそうだね」とたくやが真顔で言ったり。


たいした会話はしてないのに、ずっと笑ってた。


「たくや」


「ん?」


「次の夏も、ここで笑ってたいな」


言ったあとで、自分でもちょっと照れてしまったけど、

たくやは特別な顔をせずに、ただ「うん」とだけ返してくれた。


ちょうどそのとき、

どこか遠くで花火の音が鳴った。


空を見上げると、住宅街のすき間から、

ひとつ、ふたつと、小さな花火が見える。


人混みから少し離れた場所にふたりで移動して、

縁側のような段差に腰掛けて、

たくやの肩にもたれる。


花火の音が、夜の静けさを破るたびに、

私は胸の中がぽっと温かくなる。


たくやは黙って、そっと私の手を握ってくれた。

その手が、ちょっとだけ汗ばんでたことも、嬉しかった。


(隣にいるだけで、

こんなに幸せなんだな。)


そう思った瞬間、

目に映るすべてが、愛おしくなった。


たくやも、今の自分も、

この静かな夜も。


この夏の記憶が、

ずっと色あせずに残りますように。




あのとき見上げた花火、すっごく小さかったのに、

心の中では、すごく大きく広がってたんだよね。


正直言うと、たくやと一緒に笑ってるだけで、

もうそれだけで“幸せ”って感じられる自分にちょっとびっくりした。


昔の私なら、

「ちゃんと付き合ってどれくらい?」とか

「そろそろ将来のこと考えるべき?」とか

勝手にひとりで焦ってた気がする。


でも、今の私は――

ただ、手を繋いで笑ってる瞬間にちゃんと心が満たされてる。


うん、たぶんこれが、

「やっぱりこの人が好き」ってことなんだと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ