たぶん、まだ恋じゃない。でも。
「○日の夜、空いてますか?」
たくやから届いたLINEに、
返信を送る指が、思っていたよりも早く動いた。
「空いてます!」
……いや、“!”いらなかったかな。
一度送ったあと、画面を見つめながら、
自分のテンションの高さに、ちょっと引いた。
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その日から当日まで、
私はちょっとだけ、いやかなり、そわそわしていた。
洋服を見て、なんとなく“綺麗めカジュアル”を選ぶ自分。
髪の巻き方を、久しぶりにYouTubeで検索してる自分。
そういう自分を見ながら、
「……なにこれ。付き合ってもないのに気合い入りすぎ」って苦笑いした。
でも、止められなかった。
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待ち合わせの夜。
少し早く着いた私に、
「すみません、ちょっと遅れます」と連絡が来る。
「大丈夫ですよ」と返して、
駅ビルのウィンドウを眺めてたら、後ろから声がした。
「待たせてすみません」
たくやだった。
スーツにトレンチコート。ちょっと大人っぽい。
「お疲れさまです。お仕事大変そうですね」
「まぁ、まぁ。でも今日、会えるから頑張れましたよ」
サラッと言われたその一言が、
なんか心のどこかに、ふっと染みた。
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向かったのは、小さなビストロ。
店内の音楽が心地よくて、
たくやと向かい合って座る時間が、変に緊張しなかった。
お互い、好きなつまみを選んで、
ワインを半分こしながら話す話題は、どうでもいいことばかり。
でもそれがすごく心地よかった。
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「紬さんって、思ってたより、よく笑う人なんですね」
たくやが言ったその言葉に、ちょっと驚いた。
「え、そんな笑ってました?」
「はい。最初はもっとキリッとしてる人かと思ってました」
「いや、それは仕事モードの顔です」
そんなやりとりで、またふたりで笑う。
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帰り道。
電車に乗るたくやを見送りながら、
私はまだその笑顔を頭の中で再生してた。
これが恋なのかは、まだよくわからない。
でも、「また会いたい」って思ったのは、本当だった。
誰かの“特別”になる前に、
その人のことを、ちょっとずつ考える時間が増えていく。
それって、もうたぶん、
「恋がはじまってる」ってことなのかもしれない。
……でも、まだ言わない。
自分でも、もう少しだけ、じらしてたいから。




