なんで結婚しないの?って聞かれて、笑った私へ
「ねえ、なんで紬ちゃんって、けっこんしないの?」
――その瞬間、
時間が、ピタッと止まった気がした。
友達の子ども、5歳。
悪気なんて1ミリもない。
ただ、純粋に“気になったから聞いてみた”ってだけ。
その透明なまなざしに、
どんな嘘も通じない気がして、
思わず一瞬、言葉を失った。
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「それなあ、いい質問だね〜!」って笑って返したけど、
その裏側で頭はフル回転してた。
なんでだろう。
なんで私は、まだ結婚してないんだろう。
好きな人がいなかったわけじゃない。
結婚を意識した恋も、いくつかあった。
プロポーズされたことだって、一度ある。
でも全部、
“何か”が足りなかった。
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足りなかったのはタイミングかもしれないし、
覚悟かもしれないし、
たぶん――相手を信じる勇気、だったかもしれない。
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「お姫さまはね、だれかとけっこんしてるんだよ」
って言われて、
そっか、私、お姫さまじゃないんだなって思った。
でもそのあと、続けて言ってくれた。
「でも、つむぎちゃんはかわいいから、だいじょうぶだよ!」
……いや、フォローが天才すぎる。
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帰り道、
なんとなく胸の奥がジンとした。
自分でも気づかないうちに、
“この質問”を恐れてたのかもしれない。
でも――
ちょっとだけ、誇らしくもあった。
だって私、
この年まで“選ばれなかった”わけじゃない。
“選ばなかった”だけ、なんだ。
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今の生活に、不満がないわけじゃない。
でも、幸せでもある。
自分で決めた人生に、
少なくとも後悔はしてない。
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次にあの子に会ったら、
ちゃんと答えてあげようかな。
「まだ結婚してないけど、
そのぶん、おいしいアイスと出会う確率はめっちゃ高いんだよ」って。
そうやって、
自分の人生に、ちゃんと笑っていられたら、それでいい。
子どもって、ほんとズルいよね。
ストレートすぎて、刺さるのよ。
でも、
ちゃんと答えられた自分に、
ちょっとだけ“強くなったな”って思えた今日でした。