それ、いつの顔ですか?
プロフィール写真は、
爽やかな笑顔で犬を抱いてる彼。
自然光が似合うその横顔に、
「この人、写真で勝負してないな」って好印象すら持ってた。
チャットも軽すぎず、真面目すぎず。
なんなら、ちょっと会ってみてもいいかなと思った。
……結果、こうなるとは知らずに。
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待ち合わせは、19時。
待ち合わせの駅前、こっちに手を振る男性。
え?誰?
……いや、待って。
あの笑顔、見覚えある。
でも顔のパーツ配置が5年くらいズレてる。
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「はじめまして〜!」と近づいてきた彼は、
5割増しで年齢を重ねた“あの写真の人”だった。
まさかの、旧・彼本人。
髪の毛はプロフィール写真よりだいぶ後退、
輪郭はなぜか丸く強調され、
そして、あの犬、もういなかった。
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私のテンションは、3分で急降下。
でも、飲みの予約はしてるし、逃げるわけにもいかない。
乾杯してからも、彼はマイペースに話す。
「写真?あれね〜、大学のときのです」
「顔変わってないでしょ?よく言われるんだよね〜」
……いや、言われてないと思うよ。たぶんそれ、気遣いだよ。
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会話も特に盛り上がらず、
話題も「健康診断の結果」とか「最近の冷え」だった。
いや、なんでそのテンションで“恋人探し”しに来れた?
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帰り際、彼が言った。
「またごはん行こうね!次は写真撮るの、手伝ってよ」
違う、
そういう問題じゃないんだよ。
まず、本体と一致する写真にして。
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帰り道、
私の心には静かに疲労が蓄積されていた。
これが、写真詐欺。
まさか自分が遭遇する日が来るなんて。
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でもまあ、
こういう経験、ネタになるし。
って思えるあたり、
私もだいぶたくましくなったなって思った。
写真詐欺って言葉、笑い話かと思ってたけど、
いざ遭遇すると、感情より先に疲労がくる。
でも、“盛らない自分”を選んだ私は、
今日も正直に生きてます。
あと、犬はずるい。犬は。




