次は紬ちゃんだね〜!に、何年耐えてきたと思ってる?
披露宴のラスト、
ブーケトスの代わりに、花嫁から手渡されたブーケ。
その行き先は――
「紬ちゃんに渡したいなって思ってて!」
……うん。知ってた。
だいたいこのパターン、私になるのも慣れてきた。
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20代後半あたりから、
この“次はあなたよ圧”を、
笑って受け取るスキルは完璧に身につけてきた。
「わ〜嬉しい〜!」
「ありがと〜!絶対幸せなる〜!」
はい、即興のリアクション、完璧。
でもその笑顔の奥、心の中ではこう思ってる。
――次って、いつ?
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その日の主役は、大学の友達・ななみ。
誰からも愛されるタイプで、
「この人なら幸せになるだろうな」って素直に思えた。
新郎も優しそうで、
ふたりの空気感もあったかくて、
ああ、これは“本物”だなって感じ。
だから、ほんとにおめでとうの気持ちはある。
でも!
その流れで“私の番”を予告されるの、
ちょっとプレッシャー強すぎない?
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みんな悪気ないのはわかってる。
善意だし、応援だし、祝福のリレーだってこともわかってる。
でも私、今まで何本ブーケ抱えて帰ってきたと思ってる?
部屋に花瓶ないから、翌朝にはタオルで巻かれて横たわってるんだよ、花たち。
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「次は紬だね」って言われ続けて数年。
その“次”って、順番待ち制でもあるの?
前の人の幸せが終わらないと、私の番来ないの?
っていうか、私、
その列にちゃんと並んでるのかすら怪しい。
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帰り道、ヒールを脱ぎ捨てたくなる足と、
満員電車で崩れそうなブーケ抱えて、
心の中でちょっとだけつぶやいた。
「私、今もそれなりに幸せですけど?」
でも、
ブーケを持つこの姿が、
“まだ独身”のラベルに見えてることも、
なんとなくわかってる。
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次、か。
正直、次が来なくても別に困らないけど、
来るならそろそろでもいいかなとは、思ってる。
でも!
「次は紬」って言われすぎて、
そろそろ“最終兵器感”出てきてるの、ちょっと嫌。
ブーケ渡されたの、もう6回目。
しかも全部、違う友達。
「次は紬ちゃん」って言葉が、
だんだん“煽り”に聞こえてきた今日この頃。
それでも笑って受け取る私は、
たぶんまだ、ほんとに次を信じてる。