“どうせこの人も続かない”って思っちゃうのは、期待しすぎた過去があるから。
「紬ちゃん、いい人だと思うけど……なんかごめんね」
それが最後に言われた言葉だった。
LINEの画面に表示されたそのメッセージを見つめながら、
私はすぐにスマホを伏せて、もうそれ以上読まないことにした。
これ、何回目だろう。
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私は、自分から連絡を取りすぎない。
相手の返信速度や温度感に合わせて、やりとりのペースを調整する。
絵文字の数、スタンプのタイミング、
「!」の多さや「ね」の使い方にも、無意識に気を遣う。
でも、こうしてまた終わる。
“合わなかったね”って。
“ごめんね”って。
まるで、私に何か欠けているように言われるたび、
心の奥の何かがすり減っていく。
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昔は違った。
もっとストレートだった。
「この人のこと好きかも」と思えばすぐ伝えたし、
うれしいことは顔に出て、
会えた日は安心してすぐに眠れた。
でも、そんな素直な私を
大事にしてくれた人はいなかった。
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20代後半のある恋が、私の“基準”を変えた。
その人は最初、とても優しくて、丁寧で、
“この人なら信じていいかも”と思わせてくれる人だった。
週に3回くらい連絡が来て、
月に2回は会ってくれた。
付き合おう、という言葉はなかったけれど、
一緒にいる時間は、恋人のようだった。
でも、半年後に彼は突然言った。
「ごめん、他に好きな人ができた」
その言葉で、私の中の“何かを信じる力”が折れた。
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それからというもの、
誰かに惹かれそうになると、
「どうせこの人も途中でいなくなるんだろうな」って
思ってしまう自分がいる。
それは諦めとか強がりじゃなくて、
“防衛本能”に近い。
期待するから、傷つく。
信じるから、裏切られたと感じる。
だったら最初から“期待しない”でいた方が、
まだ心は平穏でいられる――
そうやって自分を守ってきた。
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でも、そのやり方って、
恋することからどんどん遠ざかっていくんだよね。
本当は、信じたい。
ちゃんと誰かを、まっすぐに好きになりたい。
だけどその気持ちにふたをしてるのは、
紛れもなく自分自身だった。
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最近、ふと思う。
「もしあの時の恋が、
もう少しだけ続いていたら、
私はもっと違う恋をできていたんだろうか」
答えなんて出ない。
でもそんなことを考えてしまう夜がある。
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“どうせこの人も続かない”って、
思いたくない。
だから今度、誰かを好きになったら、
一歩だけでいい、
踏み出してみようと思ってる。
期待なんか、していい。
信じたいなら、信じていい。
傷つくかもしれないけど、
それでもまた恋をしようと思える強さを
私はきっと、まだ持ってる。
“どうせ続かない”って思ってしまうのは、
続いてほしいと思った人が、
続かなかった過去があるから。
それでもまた、誰かを信じたいって思えることは、
たぶん、まだ私の中に恋する力があるって証拠。
傷ついたままじゃ、終わりたくない。
だから私は、また好きになりたい。