“恋愛向いてないかも”って言い出すのは、だいたい好きな人に傷ついた後。
「もう恋愛とか向いてないのかも」
その言葉を初めてつぶやいたのは、
ある人にひどく期待して、
そして綺麗に裏切られた夜だった。
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“向いてない”って言葉は、便利だ。
自分を責めすぎず、
でもちゃんと傷ついてることを伝えられる。
「誰も悪くないんだよね〜」なんて言いながら、
心の中ではずっと叫んでる。
「なんで私ばっかり、こうなるの?」って。
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相手にとっては、
ただ“会わなくなった女の一人”かもしれない。
でも私にとっては、
ちょっとだけ未来を想像した人だった。
LINEの返事が来るだけで嬉しかったし、
夜ごはんのタイミングを合わせてくれるのも、
本当に楽しみにしてた。
でも、だんだん温度が下がっていくのは
わかってた。
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連絡が“既読だけ”になり、
「ごめん今週も忙しくて」って、
テンプレみたいな言葉が続いた。
何かを聞いても、答えは淡泊で、
気づいたら、
“質問だけしてる私”と“答えるだけの彼”になっていた。
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気持ちって、
こうやって冷めるんだなって思った。
私のじゃなくて、
向こうのほうが。
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それでも最後は、
ちゃんと振られたわけじゃなかった。
“なんとなく終わる”って、
一番ダメージが残る別れ方だと思う。
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その夜、
お風呂の中でスマホを見ながら、
ふいに出たのが、「私って恋愛向いてないのかも」だった。
声に出して自分でびっくりした。
でも、少しだけ楽になった。
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本当は、向いてないんじゃない。
また傷つくのが怖いだけ。
好きになるたび、
“またああなるのかも”って思ってしまうだけ。
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“恋愛向いてない説”を唱えたくなる夜は、
だいたいちゃんと好きだった証拠なんだと思う。
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向いてないからやめる、じゃなくて、
ちょっと休みたいだけ。
またそのうち、誰かを好きになれる日が来ることを
ちゃんと自分に信じてほしい。
恋愛向いてないかもって、
本当に向いてない人は、たぶん言わない。
ちゃんと好きになった人がいたから、
傷ついて、疲れて、
その気持ちを一回置きたくなっただけ。
私は、まだ恋したいよ。
……もう少しだけ、休憩したらね。