このまま“恋愛しない人生”でも、別にいいのかもって思う夜がある。
夜中1時すぎ。
風呂あがりに冷蔵庫を開けて、
炭酸水をぐびぐび飲んだ。
洗濯機はさっき止まったばかりで、
部屋干しした洗濯物が、静かにゆれている。
テレビはついていない。
スマホも通知なし。
外は雨。
その“音のない夜”の中で、
ふと、こんなことを思った。
「なんかもう、ひとりでもいいかもな」
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別に悲しくない。
孤独に酔ってるわけでもない。
ただ、
ひとりで暮らすことに慣れすぎて、
“誰かと一緒にいる”イメージが、うまく浮かばなかった。
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誰かに合わせて寝る時間を変えたり、
テレビのチャンネルを譲ったり、
朝ごはんのタイミングをそろえたり。
そういうのが面倒、ってわけじゃない。
でも今さら、それを“当たり前”にする感覚が、
遠のいてしまっている気がした。
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恋をしていないわけじゃない。
むしろ、いろんな人に心を動かしてきた。
でもそれはどれも、
“通りすぎていった風”みたいなもので、
振り返っても「懐かしいね」で終わるようなものばかり。
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部屋にある家具は、すべて自分で選んだ。
ベッドの位置も、カーテンの色も、食器の種類も。
誰かの好みに合わせて“妥協した暮らし”って、
最後にしたのは何年前だっただろう。
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このままずっと、
誰も好きにならなかったらどうしよう、って
思ってた時期もある。
でも今は、
「別にそれでもいいかな」って
静かに思える夜もある。
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私は、恋愛がすべてだとは思ってない。
結婚だけがゴールだとも思ってない。
でも――
それを“思い込もうとしてる自分”がいるのも、
ちゃんと自覚してる。
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たぶん、
誰かを“必要としてない自分”を、
かっこいいと思いたいだけなんだと思う。
でもそうやって強がってる間に、
本当に“恋が必要ない人間”になってしまったら、
それはそれで少し怖い。
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夜風にあたりながら、
ベランダでぼーっと空を見てたら、
雨がやんでた。
こんな夜、
誰かと他愛ない話ができたらいいのに、って思った。
“恋しない人生でもいいかも”って思える夜は、
きっと自分が、
無理に前を向こうとしてる時なのかもしれない。
ひとりが平気なことと、
誰かと生きたい気持ちを失うことって、
似てるようで、ぜんぜん違う。
……私はまだ、
完全には諦めてないつもりです。