あの子が選ばれる理由”はわかる
「今度、入籍することになりました!」
そのメッセージは、
何の前触れもなく、グループLINEに届いた。
メンバーは、昔からの仲のいい女友達たち。
何度も飲みに行って、恋バナも仕事の愚痴も全部話して、
“似たような場所にいる”と思っていた仲間。
なのに――いや、“だからこそ”、
その報告は、ちょっとだけ、心に刺さった。
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「えー!おめでとう!!」
「まじで!? うれしすぎる!!」
「早く顔見せてよー、指輪も!」
タイムラインのように次々と流れる祝福の言葉。
私も、もちろん「おめでとう」と送った。
本心だった。
本当に、彼女の幸せは嬉しかった。
……でも、正直、少しだけ泣きそうになった。
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あの子は、昔から“選ばれる側”の人だった。
派手じゃないけど、華がある。
すごくモテるわけじゃないけど、なぜかちゃんと見つけられる。
言葉選びが上手で、甘え方も自然で、
人との距離の取り方が絶妙だった。
誰かを責めるつもりなんて、ない。
でも、なんとなく、わかってしまう。
――あの子が選ばれる理由。
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自分と比べてるわけじゃない、
……って思いたいけど、
やっぱり比べてる自分がいる。
私だって、ちゃんと頑張ってる。
仕事もしてるし、生活も整えてるし、
恋も、何度もチャレンジしてきた。
でも、
“私が選ばれる理由”って、なんだろう?
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いい子でいること?
気を遣えること?
一人でも生きていけそうなこと?
そういうのって、
“便利そう”には見えても、
“守りたい”とか“手放したくない”には、なかなか繋がらない。
わかってる。
でも、どう変えたらいいかもわからない。
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みんなが集まったグループ通話に、私は顔を出した。
「おめでとうー!」
「いつもの彼女感、なくなってるじゃん!」
「幸せオーラやばい!」
そんなやり取りを笑いながら聞いて、
私もちゃんと笑って、
でも、画面の向こう側にある“差”を感じてた。
たぶん、それは“選ばれた人”と“まだ選ばれてない人”のあいだにある、
小さくて大きな距離。
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スマホを置いたあと、
ベッドにごろんと倒れて天井を見つめる。
「私にも、ちゃんと理由、あるよね?」
自分に問いかけてみる。
でも、返事はない。
人の幸せをちゃんと喜べるのに、
そのぶん、自分の心がぽっかり空いてしまうこと、あるよね。
嫉妬じゃない。
羨ましい気持ちでもない。
ただ、
「私もああなれたらよかったのに」って、
ちょっとだけ、思っただけ。