いい意味で女っぽくないよね。
「つむぎさんってさ、いい意味で女っぽくないよね」
それを言ったのは、職場の後輩だった。
昼休み、何気ない雑談の中で、
コンビニスイーツを食べながら、笑いながら、
“軽いノリ”で口にした。
「さばさばしてるっていうか、媚びないし、いつも自分持ってて、かっこいいなーって」
それ、褒めてるつもりなのは、わかってる。
でも、その言葉が胸に少しだけ、重くのしかかる。
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女っぽくない、ってなんだろう。
私が“女らしく”しようとしてきたことって、
全部、届いてなかったんだろうか。
職場で変に色気を出さないようにしてるのは、
“ちゃんと見てもらいたいから”。
媚びてるって思われたくなくて、
でも、“女”として見られないのも、やっぱり寂しい。
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たしかに私は、サバサバしてると言われることが多い。
はっきりものを言うし、仕事にも感情を持ち込みすぎない。
ノリもいいし、無理に可愛く振る舞うタイプではない。
でもそれって、
“そうするしかなかったから”でもある。
20代の頃、仕事先でナメられたくなくて。
「女だから」って言われるのが嫌で。
がんばってがんばって、“頼られやすい女”になった。
だから今、“女っぽくない”って言われても、
なんだか全部、否定された気がしてしまう。
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“いい意味で”って、たまに不思議な免罪符だ。
「傷つくようなこと言ってるの、自覚してるよね?」って言いたくなるときがある。
きっと、何も悪気はなかった。
でも、だからこそ、たちが悪い。
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恋愛だってそうだ。
「つむぎって、恋愛脳じゃないよね」
「女のドロドロしたとこなさそうで安心する」
「なんか、そういうの超えてるって感じ」
それ、なんの“そういうの”?
別に、恋愛に必死でもいいじゃん。
感情的になったって、ちゃんと人を好きになった証拠じゃん。
“いい意味で女っぽくない”って言葉の裏には、
“女らしさ”に対する偏見がびっしり詰まってる気がする。
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帰り道、ガラスに映る自分の姿を見た。
仕事用の服、スニーカー、無造作に結んだ髪。
「……うん、たしかに女っぽくないかもね」
そんなことをひとりごちて、
でも家に帰れば、可愛いルームウェアに着替えて、
お気に入りの香水をシュッと一吹きする。
誰に見せるわけでもない、
“女っぽさ”が、ちゃんと自分の中には残ってる。
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私は、女であることを
武器にも、隠れ蓑にもしてないだけ。
でも、忘れてほしくない。
ちゃんと恋したいし、甘えたいし、
誰かに「綺麗だね」って言われたい。
そういう自分も、ちゃんとここにいる。
「いい意味で女っぽくない」って言葉が、
ずっと胸に引っかかってるの、たぶん私だけじゃないと思う。
かっこいい、頼れる、芯がある――
それらは全部“女らしさ”じゃないって、誰が決めたんだろう。
……たまには、女っぽいって言われたいよね。
やっぱり、ちょっとだけ。