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ある書籍化作家さんに聞いた怖い話

作者: しゃぼてん

 これはある書籍化作家さんに聞いた話です。

 僕はランキングや書籍化とは無縁ですが、その書籍化作家さん(仮にA先生としておきます)は、小説家になろうやカクヨムのランキングで上位に入って何作も書籍化をしている作家さんです。僕はA先生と小説投稿サイトとは違う場所で偶然出会って仲良くなりました。


 A先生は感想コメント欄に悩んでいました。僕のような投稿してもあまり読んでもらえない作者はめったに感想やコメントをもらうことがなく、数少ないコメントやレビューではむしろ温かい励ましをいただけることのほうが多いのですが、ランキング上位の作品ともなると沢山の感想コメントが付き、中には心ないコメントも多くあるそうです。


 A先生も書籍化するようになってからは沢山のひどいコメントを受け取っていたそうです。もちろん小説家というのは時には厳しい批評をいただきながら腕を磨きより良い作品を作り上げていくものではありますが、A先生が受け取ったコメントの中には、小説への真っ当な批評や建設的な意見等何もなく、只管(ひたすら)、お前なんか作家になる資格はないと主張する、ただの誹謗(ひぼう)中傷もあったそうです。


 A先生はひどい感想コメントを送ってくるユーザーはミュート・ブロックして対処していたそうですが、その中に、何度ブロックしても新しいアカウントを作って執拗(しつよう)に誹謗中傷を送ってくる人がいたそうです。もちろんアカウント名が違うので同じ人だという証拠はありませんが、文章や記号の使い方に特徴があるので、同一人物だとわかります。僕も見せてもらいましたが、同じ人であることはまず間違いありません。

 A先生はついには感想欄・コメント欄を閉じ、送られてくるメッセージも全て無視して見ないようにしたそうです。


 僕は以前、ここまでの話を聞いていました。

 最近、再びA先生と話をする機会があったので、「あのネットストーカーはどうなりましたか?」と尋ねたところ、A先生は震える声で事の顛末(てんまつ)を話してくれたのです。



 ある晩、A先生のXに例の投稿サイトでのストーカーらしき人物からDMが送られてきました。

 そのアカウントは作家として使っているアカウントとは別だったのですが、ついにここまでやってきたかと思いながら、A先生はブロックしようとしました。

 ですが、そこには、こう書かれていました。


「ずっとずっと無視しやがってヽ(`Д´)ノプンプン!!! 許さない!!! 絶対に絶対に許さない!!! お前の家はわかっているのだ!!! わかっているのだ!!! 実家も今のマンションもな!!!」


 最初見た瞬間はただの脅しだと思ったそうですが、その次のメッセージに、本当にA先生が住むマンション名が書かれていました。さらには、A先生の実家の庭の様子まで書かれていました。


 本当に家が特定されている。実家まで。


 A先生がその事実におののいた時、さらにメッセージが届きました。

 そこには、「来てやったぞ!!!」と書かれていました。


 ガタガタと、ベランダの方から音がしました。

 風が強い日だったので、「風のせいだ、絶対そうだ」と自分自身に言い聞かせながら、A先生はベランダのカーテンをそっと開けたそうです。


 ベランダのガラス戸いっぱいに男が張り付いていました。

 青白い顔の男が、顔をガラスに押し付けて血走った目でA先生の方を睨んでいたのです。

 A先生は思わず叫び、ベランダと反対側にある玄関の方から外へ飛び出し、マンションの外へ出るとそのまま必死で夜道を走り続けたそうです。


 幸い、A先生の家からほど近い所に交番があったので、A先生はその交番に駆け込みました。警官と一緒に家に戻った時には、すでに男の姿はありませんでした。


 A先生は当然その家で一夜を過ごす気にはなれず、その日はホテルに泊まったそうです。

 ホテルのベッドで震えていると、何度もあの恐ろしい青い顔がフラッシュバックしてきます。

 そして、A先生は気がついたのです。あの顔に見覚えがあると。


 もうしばらく会っておらず、また、ガラスに押し付けられた男の顔は、あまりにも恐ろしい苦悶に満ちた表情だったためにすぐには気が付かなかったそうですが、彼は高校の時に同じ文芸部にいたA先生の作家友達でした。

 小説を投稿サイトに投稿するようになってしばらくの間、A先生も彼もどちらもランキングと無縁の作者だった頃は頻繁(ひんぱん)に連絡を取り合い、お互い(はげ)まし合っていたそうです。

 しかし、A先生の作品が次々に書籍化されるようになって以降、彼とは疎遠(そえん)になっていました。彼の作品はいまだに一度も浮かび上がることなく、苦節の年月が続いています。


 そうだったのか、とA先生は納得がいきました。

 彼ならA先生の実家を知っていても不思議ではありません。このマンションのことは教えていなかったはずですが。

 それに、酷いことをされたわけですが、彼の嫉妬(しっと)や悔しさという気持ちは理解できないわけではありません。常軌(じょうき)(いっ)した行動は、きっと精神を病んでいるからでしょう。

 そう考えれば彼のことが可哀想(かわいそう)にも思えてきます。


 A先生は彼が昔から使っていた表のXアカウントを探して開きました。

 連絡を取ろうとしたのか、近況を知ろうとしたのか、その心は僕にはわかりませんが、とにかくA先生はそのアカウントのポストを見てしまいました。

 そこに投稿されている最後のポストを。


「このアカウントの持ち主の母です。息子は昨日永眠しました。」


 彼はすでに死んでいました。A先生はさっき彼から送られてきたはずのDMを見ようとしましたが、見つけられませんでした。

 一睡(いっすい)もできずに夜が明けた後、A先生はすぐにお(はら)いと引っ越しの準備をしたそうです。




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