星座がよく見える公園
僕の家の隣には、「星座がよく見える」と噂の公園がある。
見晴らしがよく、交通アクセスも良いその場所は市民の憩いの場だ。昼は子どもたちの遊び場、夜はデートスポットとして幅広い人々に愛されている。
――隣に住んでる僕がクソ迷惑ってことを除けばだがなっ!!!
「あぁあぁあぁあぁ! うるせぇぇぇぇぇっ!!!」
怒りのまま、僕はそう叫ぶ。今日に始まったことじゃないこの騒音、しかしいくら僕がその不満をぶつけても……へこへこして「お願い」しても、高圧的に「文句」を言っても、実情は何も変わらなかった。
子どもがうるさいと文句を言えば「子どもは未来の担い手!」「子育て家庭に理解がない!」と喚かれ、恋人たちに苦言を呈すれば「ぷっ、独り身の僻みかよw」と鼻で笑われる。クソッ、いちいち腹立たしいことこの上ない。
あぁもう、今晩もやけにうるさい。子どもは早く寝かせるものだろう? 今は学習塾だのオンライン授業だのがあって夜更かしがやむを得ないとしても、親はもうちょっと配慮をすべきだろう。育児の大変さはわかるが、躾ができないのを「子育てが忙しいから」の一言で済まそうとするな。
イチャイチャするカップルどももそうだ。星座なんて黙って、遠くから静かに眺めていればいいだろう。それをわざとらしくキャーキャーはしゃぎ、挙句の果てに聞いてるこっちが困るような嬌声を上げ始めて……お前らは獣か、求愛行動なんてよそでしてくれ。
それにしても、今日の晩は一段と連中の声がうるさい。ドタバタ走り回る足音、甲高い悲鳴……チクショウ、せっかく買ったヘッドホンもこれじゃ台無しだ。僕はムカムカを抑えながら、窓側に向かう。
全く、これが「暴走族」とか「宗教団体」だったらすぐマスコミが騒いで大事にするぐせに「子ども」とか「カップル」だったら途端に微笑ましく見守りましょうだなんて実に馬鹿げている。社会的弱者、少数者の立場を笠に着て威張り散らす連中が結局、同法を追い込み肩身を狭くするんだ……そう考え、僕は今宵もさかんに迷惑な音を立てる連中の顔を一目見てやろうと窓を開ける。
――夜空が、光り輝いていた。
「悲鳴のような声」はどうやら本物の「悲鳴」だったらしい。
あぁ、星座っていうのはやっぱり遠くから眺めるものだな、こうも近くに来たらただの「爆弾」だ――そんなことを考えている僕は公園もろとも吹き飛び、辺りにはとんでもない爆音が響き渡るのだった。