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第162話 その黄金色に輝く魂に、感謝を込めてー2

 ゼウスさんは立ち上がる。


「ライトニングを残し、それ以外の者は外へ出よ」

「陛下!! そ、その者たちの素性は知れません! 危険です!」

「この者達が、敵ならどうせ止められんよ」


 そして渋々、大臣たちや護衛が全員外に出た。

 ゼウスは、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。


「そうか…………そうか…………」


 ハデスさんを見て、その肩を掴み、頭を下げた。


「すまなかった。私の選択が、お前をそうしてしまったんだな。すまなかった」

「兄さん、いいんだよ。兄さんの気持ちも、葛藤も全部僕はわかってるから」


 おそらくゼウスさんは、星の記憶を見たんだろう。

 ゼウスさんのステータスを見ると、俺と同じようなステータスをしていた。

 星の記憶と星の魔力にアクセスできるゼウスさん、そりゃこの時代で誰も勝てない最強と呼ばれるはずだ。


 するとハデスさんが、ゼウスさんを抱きしめた。


「俺こそ、ごめん。兄さんの苦しみを理解してあげられなくて」


 二人が抱きしめ合い、涙を流すのを俺はライトニングさんと静かに見守った。

 すると落ち着いたようで俺を見る。


「灰殿、申し訳ない。お待たせして。それと、失礼ながら記憶を参照させてもらいました」

「いえ、俺も同じことをしましたから。その方が早いですし。だからわかってもらえたと思います。俺は未来からこの世界を救いにやってきました」

「はい。説明するまでもありませんが、この星の魔力は尽き欠けている。私もどうにか対応を考えましたが、何もできそうもない。何をするにも魔力を使う我々は、そもそも星の魔力が無くては何もできないのです」

「え!? 星の魔力が尽きる!?」

「あ、ライトニングさんは知らなかったんだ……」


 俺はライトニングさんに事情を説明した。

 衝撃で、しばらく口をパクパクさせていた。


「それで、灰殿。その……何かこの星の魔力を復活させる策があるとお見受けするのだが」

「いえ、それはありません。どんな手を使っても復活はできないでしょう」

「…………そうですか」

「ですが、解決方法があります」

「なんと!?」

「はい。それを説明します。なので八つの大国、赤の国、蒼の国、緑の国、山吹の国、紫の国、琥珀の国、浅葱の国、白の国。それぞれの代表。つまり神々を呼んでいただけますか?」

「すべての国の神々を集める!? そ、それは難しいぞ、灰……我々の国はそもそも国交が」

「いえ、やりましょう。必ずやります」

「えぇ……」


 ライトニングさんが、驚く。

 がゼウスさんが俺の手を握って頷いた。


「あなたの戦いの記憶を見た。あなたは心から信頼できる人だ。その眼があなたに渡ったのも必然なのでしょう。誰かのために命を懸けられるあなたならば、我々も全てを委ねられる。確かに我が国は、国交を拒絶し続けてきたが任せてください。必ず全員を席につかせて見せます」

「はい!!」

「こ、これはとんでもないことだぞ……一体何から手を付けていいか」

「灰君、僕にできることはないだろうか」

「ヘラさんとアナスタシアちゃんと追いかけっこして遊んでください!」

「し、しかし……」

「ずっと待ってたんでしょ、この時を。大丈夫、俺の方はもう少しかかりそうですから」

「…………ありがとう」


 ハデスさんは、頭を下げた。

 それから丸一日ハデスさんは家族と遊んでいた。

 いきなり泣き出すハデスさんをヘラさんとアナスタシアちゃんは不思議に思うだろうな。


「さて……俺もお節介を焼いちゃうか。ゼウスさん、アテナさんとお会いしたいんですが」

「ん? 娘と? もちろん構わないですが」


 そして客間で少し待っていると、アテナさんが入ってきた。

 もっと若いのかと思ったが、そもそも彼らは俺達人間とは年の取り方が違うので、俺が良く知っているアテナさんそのままだった。


「初めまして。天地灰さん、私はアテナと申します。父のご友人とお伺いしておりますが、何かお手伝いできることがありますでしょうか」

「ええ! ちょっと待ってください! あなたに会わせたい人がいます」

「会わせたい人?」

「ええ、ちょっと影を失礼。それと……ライトニング」


 俺は転移した。

 そしてその男の子を連れて、また転移した。


「こちらはランスロットさん。ランスロットさん、こちらはアテナさん」

「え? あ、あの……こ、これは一体。僕は、剣の稽古をしていたはずですが……」


 ほとんど拉致である。

 ランスロットさんは、この時間はずっと黒の帝国の騎士団として訓練をしている。

 それぐらい俺は知っている。なぜなら彼の記憶を俺は知っているからな。


 さて、二人は初対面である。

 というか俺とも初対面である。

 一体何をするのかというと。


「すみません、お節介で。でも……約束しましたから。必ずもう一度……この眼で見つけると」

「「え?」」


 俺は星の記憶を、『神の眼』で参照する。

 そして、それをアテナさんとランスロットさんに、渡した。

 二人の記憶。

 愛し合った二人の記憶を。

 時空は違えど、間違いなくその魂に刻まれている星の記憶を。


 そのあとは語る必要はないだろう。

 俺に感謝を述べた二人は、何やらもじもじしていたので、サムズアップして俺はその場を後にした。

 よかったですね、アテナさん! 夢が叶いましたよ!



 そして一週間が経過した。

 

 白の国、神都。

 ゼウスさんのお城の最も高い場所。


 太陽の下で、神々が揃った。

 初めは拒んでいた国も多かったそうだが、ゼウスさんが直接赴いて、頭を下げ続けたそうだ。

 そんなのは危険だという声もあったし、謁見を拒否された国もあった。

 しかし、ゼウスさんの歩みは、護衛だろうが何だろうが、誰も止めることが出来ずその神々の前まで無理やり歩いて、そして頭を下げたそうな。

 

 まぁごり押しである。

 星の魔力を使えるゼウスさんに勝てるわけもなく。

 それでも俺の時代なら超越者と呼ばれる人たちが、集団で止めに行ってもなすすべないのだからチートである。

 危険とか言っているけど、殺そうと思えば無理やり殺せるんだから裏とかないよね。という圧に神々は屈した。


 それでも一週間ほどかかったが、今、世界の神々がこの場所に集合した。


 巨大な円卓を囲み、皆が平等であるという意味を込めて。

 そしてゼウスさんが話しだす。

 

「良く集まってくれた。感謝する」


 ほとんど脅迫だろ。という顔をしているが否定はしない。

 するとゼウスさんが俺を見る。

 俺は頷いて、前に出た。神々の視線が俺に集中する。


「初めまして、天地灰です。信じられないかもしれませんが、俺はここよりずっと未来から来ました。単刀直入に言います。この星は魔力欠乏症と呼ばれる病で、滅びます」


 神々がポカンという顔をしている。

 当たり前だ。

 するとハデスさんが立ち上がる。


「彼の言っていることは本当です。僕と、そして兄のゼウスが保証します」

「ハデスさん。大丈夫、いきなり信じろと言われても難しいでしょう」

 

 だから俺は少しだけ記憶を参照する。

 ハデスさんが戦争を起こした記憶は、今後の火種になりかねないので隠させてもらおう。

 俺が参照したのは。


「…………これが世界を蝕む病の記憶です」


 AMSで苦しみ、そして死んでいった人々の記憶だ。

 荒療治で申し訳ないが、大丈夫ほんの一瞬……彼らが感じた1分ぐらいの記憶だ。

 

 しかし、それをぶつけられた神々は、震えて、嗚咽し、涙を流した。

 荒療治だ。でもこれは確実に来る未来で、しかも、ほんの一瞬だけの感情を彼らに見せただけだ。


「現在……この世界ですでに100人を超える人がこの病にかかりました。そしてこれはこの星に住むすべての魔力生命体が確実にかかる病です。原因は、星の魔力が尽きること。そして今皆さんに見せたのは、星が尽き欠けた魔力を補充するために、分け与えた僕たちから奪おうとした結果です。魔力欠乏症と呼ばれる病にかかる未来です。これは避けられません。そして例外はなく、この星に住むすべての魔力生命体が疾患します」

「そ、そんな……ことを信じろと」


 俺はその神を見る。

 黄金色に輝く瞳で。


「赤の神――アグニ・ヴェルドラゴさん。魔力は567万。職業は炎龍、スキルは……」


 俺はそのステータスを羅列した。

 慌ててストップとアグニさんが止める。

 

「神の眼です。これが俺が未来から来た証明になるでしょう。ゼウスさんの神の眼が、たくさんの想いと共に俺に受け継がれました。俺は……この世界を救いたい。どうか……お願いします」


 俺は頭を下げた。

 沈黙、そして最初に口を開いたのは蒼の国の神だった。


「蒼の国は、彼を信じます」 


 蒼い瞳に銀色の髪。

 どことなくレイナに似ている気がするが、非の打ち所がない程に美しい。

 その吸い込まれそうな瞳で俺をまっすぐ見る。

 あと露出がすごい。エッチすぎないか、その服。


「私のスキルは、相手と自分の強さを測る力を持ちますが、彼もそしてゼウス殿も……1秒あれば私たちを殺せるほどの強さです。そんな彼が頭を下げている。それだけで信じるに値しませんか?」

「ありがとうございます。アフロディーテさん」

「はい。あとすごくタイプです」

「ありが……えぇ!?」


 舌なめずりされて、猟奇的な眼で俺を見る。

 やっぱりどことなくレイナに似ているなと思ったが、俺は頭を下げた。


「すみません、心に決めた人がいます」

「ふふ、やっぱり信じられますね。残念ですが引き下がりましょう。それで、皆さんはどうですか」


 アフロディーテさんが回りを見る。

 

「わかった。信じよう」

「信じるしかないようですね」

「琥珀もだ。そもそも悪魔の証明を、ここまで誠意をもって対応されたなら信じるしかない」


 続くように神々は、世界の滅びる未来を信じると言った。

 俺はハデスさんを見る。

 ウィンクしてくれた。ゼウスさんも、肩を叩く。

 これで準備は整った。


「それで、一体どうすればいいんでしょうか」

「何を言われても驚きませんよ」

「灰殿。それで一体どのように?」


 俺は大きく息を吸い込む。

 そして空に向かって指をさす。

 

「みんなで移住しましょう。魔力の豊富で豊かな星へ!!」

「「……………………ええぇぇぇぇぇぇ!?」」


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