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第158話 白と黒、そして灰色ー7

 俺は静かに目を閉じた。

 ハデスの言っていることはわかる。

 そして、確かに解決方法なのかもしれない。


 でも、それはだめだ。


「ハデス……それは……だめだよ」

「……なぜだい」

「記憶の継承、ある程度の年齢にならなければそれはできない。赤ちゃんならいいと言ってるわけじゃない。でもそれはやっぱり魂の殺人と同じだ。誰かを殺して、その器に誰かを入れるだけだ。あなたが助けたい人たちは、誰かを殺して生き返ることを望んでいるのか」

「…………黙れ」

「それになにより……それは本当にあなたの助けたい人たちと言えるのか? 同じ経験をした別の人なんじゃないのか」

「黙れぇぇぇ!!」 


 その瞬間だった。

 黒い魔力が、まるで炎のように立ち昇る。

 圧倒される。


「記憶を引き継いだら、たとえ違う魂だとしても! それはヘラだ。それはアナスタシアだ。それは否定させない。絶対に!!」

「そう思い込みたいだけじゃないのか、ハデス。お前も本当はわかってるんだろ。まったく別の人に記憶を入れても、それは同じ経験をしただけの人だと。その人自体が経験した記憶ではないと意味がないってことを!」

「だまれぇぇ!!」 

「くっ!」


 ハデスの手から真っ黒な魔力の波動が放たれる。

 俺はぎりぎりでかわしたが、背後がどこまでも消し飛んだ。

 当たれば即死、一体どれほどの魔力が込められているのか。


「この方法しかない。この方法しか……これがダメなら……僕はどうやって約束を守ればいいんだ!!」

「何かほかの方法を探そう。誰も犠牲にしない、そんな方法がきっと――うぐっ!?」


 ただのダッシュ。

 それが音速は簡単に超えて、俺は蹴られた。

 ぎりぎりで、ランスロットさんの剣技で受け流す。

 しかし、手がしびれる。

 重すぎる一撃は、極みの剣技を貫いてくる。


「兄さんも、アテナも、ランスロットも。みんな同じことを言ったさ。誰かを犠牲にして望みを叶えることを悪とする。その眼を持つものは全員そうだ!! 自己犠牲こそが正義だと!! ふざけるなぁぁ!!」

「自己犠牲が正義だとは思わない!! けど!!」


 俺は切り返す。しかし、受け止められた。

 ただの腕一本で、傷一つ付けられずに受けられる。  

 

「やっぱり誰かを殺すことは良くないことだよ、ハデス。俺もたくさん殺したから偉そうには言えないけど、それでも無関係の子供を殺して、体を奪う行為は正義とは思えない」

「誰かを犠牲にしてでも助けたい人がお前にだっているだろう! 生き返ってほしい人はいるだろう! そうだ……ならあの女を殺そう」

「ま、まて!!」

「回復阻害」  


 ハデスから魔力が地球へと飛んでいく。

 今、レイナの傷はまた広がっている。

 回復を阻害されて。


「あとはだれを殺せばいい? 誰を殺せば、お前は俺と同じ答えにたどり着く。神の眼を持つ自己犠牲に酔いしれた偽善者ども!!」

「いや、俺がおまえを倒して……そして、ほかの方法を見つけて見せる。最優の騎士!!」


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

名前:天地灰

状態:良好

職業:神の騎士【真・覚醒】

スキル:神の眼、アクセス権限Lv2、心会話、最優の騎士、真・ミラージュ、真・ライトニング

魔 力:7400000

攻撃力:反映率▶75(+80)%=11470000+500000

防御力:反映率▶50(+80)%=6110000+500000

素早さ:反映率▶50(+80)%=6110000+500000

知 力:反映率▶75(+80)%=11470000+500000


※最優の騎士発動中+30%


装備

・龍神の剣=全反映率+50%

・鍛冶神の加護により全ステータス+50万

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 地上のキューブをほぼすべて完全攻略した俺の魔力は、740に。

 ライトニングさんとほぼ同等。

 しかしそれでも、ハデスはそれを上回っている気がする。


「ステータスが見えないと不安だよね。それが普通だけど」 

「神の体のせいなのか?」

「そうだね。君と僕では今違う次元の存在だ。でも、見えるようにしてあげる。そうすれば少しは心変わりするかもしれないだろう?」


 そういって、ハデスは自分の胸に手を当てる。

 光の鎧のようなものが剥がれて、ステータスを覆っていた黒塗りが剥がれる。

 視界が晴れるようにステータスの全容が明らかになった。


 そして俺は絶句した。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

名前:ハデス・ディース

状態:神域(神の体)

職業:冥王【神・覚醒】

スキル:冥府の王

魔 力:8100000(+12億3456万245)

※冥府の王により、死した眷属すべての魔力とスキルを獲得。


攻撃力:反映率▶100%=魔力と同等

防御力:反映率▶100%=魔力と同等

素早さ:反映率▶100%=魔力と同等

知 力:反映率▶100%=魔力と同等


※冥府の王により、100%に固定

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「神の騎士団と戦い命を落とした僕の眷属たち、そのすべての魔力が僕に集まっている。闇の眼とは、僕のスキル『冥府の王』で眷属とした者に与えられるスキルなんだよ。マーリンも、ガラハッドも、ビビアンも、そしてかつての大戦すべてで死した僕の家族たち、そのすべての覚悟を魔力として……僕はここに立っている」


 桁が違うなんてレベルじゃない。

 俺の740万の魔力が可愛く見える億を超える魔力量。

 

「これが最後の通告だ。神の眼を渡せ。でなければ僕は君を殺す」

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