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第127話 終わった世界ー1

 煌めく黄金の壁、まるで黄金を溶かしてしまったような紋様が灰の周囲を包んでいる。


 ほんの数秒、だが何もできずに灰はただぼーっとするしかできなかった。


「……一体これは。さっきの声はアテナさん?」


 だが、その箱はゆっくりと開き世界をもう一度灰に見せる。

静かに開いた箱、ゆっくりと差し込む薄暗い曇り空の日の光。

だがそこには先ほどまでの楽しかった日常などはどこにもなく。


「……はぁ?」


 変わり果てた世界の姿が佇むように灰を出迎えた。


 まるで終わってしまった世界に灰は一人立っていた。


 何もわからず、ここがどこかもわからずに。


 もう一度この世界で立ち上がる。


◇灰視点


「なにこれ」


 俺は理解できなかった。

先ほどまで彩と今日はもしかしたら一線超えちゃうかもな、なんて思っていたのになんだこれは。


 俺を閉じ込めたあの黄金の箱は、確かにあの神の試練の時と同じ。

アテナさんの声が最後に聞こえたが、なんだったんだろうか。


「廃墟? いや、なんだここ。村?」


 俺がいたのはのどかな村、ただし廃墟というか建物はほとんど潰れていて人が住んでいるような場所ではない。

どこか懐かしい記憶を感じるが、ここは一体どこなんだろうか。


「とりあえず、ライトニングで彩に……──!?」


 俺はライトニングの力で彩の影へと飛ぼうとした。


 だが飛べなかった。

正確にいえば、俺がライトニングで飛ぶときに頭の中に出てくる誰に飛ぶかという選択肢、それが全て消えている。


 そして直後エラーを教えてくれるように俺のスキル『ライトニング』には次の項目が足されていた。


「前回から時間が経ち過ぎています……はぁ?」


 理解できない文字だった。

俺はポケットのスマホを見る。


「圏外……まぁド田舎っぽいしな」


 だが案の定圏外であり、アンテナなんか立っていない。

俺はどうしたものかと、とりあえずこの村を捜索してみることにした。


「なんかここ見たことあるんだよな……ボロボロだからちょっとわからないけど……すみませーん。誰かいませんかーー」


 大きな声で呼んでみる。

しかし返事はない、やはり廃墟か。

どうしていきなりこんなところに俺は転移させられたんだろうか。


「アテナさーん。聞こえてたら返事してくださーーい」


 やっぱりアテナさんも返事はない。


「──ライトニング」


 バチッ。


 普通にスキルは使えるようだ。

ただ、人の影に飛ぼうとすると時間が経ち過ぎていますとスキルは使えない。


「うーん……どうしたものか」


 俺が廃墟になった村を探索していると、おそらく村の中心だろうか。

錆びたプレハブ小屋があった。

真四角で、まるで何かを囲っているかのようなそんな箱。


「……え?」


 それを見た瞬間、俺はここがどこかを理解してしまった。


「まさかここ……夜鳴村!?」


ブウウウウン!!!


 その瞬間だった。

後ろから大きな音、車の音、枝をへし折り草木をのけて走ってくるエンジンの音が聞こえてきた。

背後を振り返るとものすごいスピードでバギーのような軍用車がこちらに走ってくる。


「えええ!?」


 道路交通法、そんなものは知らないと言わんばかりに障害物を蹴散らして間違いなく俺の方向へと向かってきた。


「ちょ、え? なに?」


 俺が驚いていると、その後ろにはさらに信じられない光景。


「ま、魔獣!? ダンジョン崩壊!? スタンピード!?」


 100体ぐらいに魔獣達が、そのバギーを全力で追いかけていた。

中には王種とも思わしき、強力な魔獣も存在している。

どこかでダンジョン崩壊でも起きているのかと、考えたがどうやらあのバギーは追われているのか。

俺が唖然としながらもそのバギーは、速度を落とさずこちらに向かう。


 そして窓から運転手が体を乗り出して俺に叫んだ。


「乗って!!!」


 風よけのようなゴーグルをかけて、その運転していた人は軍服のようなものを着ていた。

そのあまりに必死な声に、俺は敵ではないと判断して目の前に止まったバギーに乗り込む。


「掴まって! 全力で飛ばします!!」

「おぉ!?」


 俺が乗り込んだ瞬間、全力でアクセルを踏み込んだ。

アスファルトでもない田舎道を四駆のバギーが全速力で走っていく。

だが今だ魔獣は追いかけてきて、捕まるのも時間の問題かもしれない。


「あ、あの何が起きてるんですか!? ダンジョン崩壊ですか!?」


 俺は何が起きているのか全く分からないと必死に車に掴まりながら質問する。


「よかった。本当に今日現れてくれたんですね。ちょっとだけ信じてませんでした。私のところで良かった」


 運転しながらその人は声を出す。

どこかで聞いたような声、軍服でゴーグルをしていたから分からなかったが女性のようだ。

年は大学生ぐらいだろうか、俺と近い年齢のような気がする。


「え、えーっと……話が全然」


「ゆっくり話している時間はありませんが、最後なので少しだけ我儘を……お久しぶりです。灰さん」


「ん? どこかで会いましたっけ」


「ふふ、本当にあなたはあの日から何も変わっていないんですね。ずっと会いたかったのに、ついに追いついちゃいましたよ」


 その人は、ゴーグルを外して俺を見て笑った。

にっこり笑った顔、どこかで見たような顔、誰かに似ている顔。


 記憶の中にその笑顔は確かにあった。


 確かにあったが、決定的に違う。


 でも俺の頭はその人とあの少女を結び付けようとしていた。


「え、え!? う、うそ。え?」


 俺はうまく言葉が出なかった。

だってほんの少し前に会ったときはまだ中学生だったんだから。

なのに、今はその面影を残していながらも大人の女性の顔つきになっている。


 あどけなさはどこかに消えて、美人なお姉さんという雰囲気に。


 出るところは出た女性の体、大学生ぐらいの成長期を終えた立派な女性。


「そうです。灰さん……覚えてますか? あの日、最後に交わした言葉。もっと大きくなったら会ってくれると言ってくれた言葉を」


「もっと大きくなります! そ、その時はまた会ってくれますか?」

「そうだな、楽しみにしてる。凪のいい友達になってくれそうだ。じゃあいつかまた会おう!」


 俺は昔言った言葉を思い出す。

いや、確かに言った、でもまさかこんな形になるなんて思いもしなかった。


「う、うそ……まさか……な、な、……」


「はい! 13歳のころ灰さんに恋してから一途に思い続けて18歳! こんなに大きくなりました!! だから、灰さん! あの頃と比べて」


 あのあどけない中学生の少女は、いつの間にか俺と同じ年齢に。

そして少しだけ妖艶な雰囲気で俺を見て言った。


「──女としてはどうですか?」

「渚ちゃん!!??」


 かつて俺がオークから救った当時13歳の少女、今井渚。


 だが今は18歳だと言う。


 つまり俺は5年後の未来に来てしまったようだ。

最強の鬼をこの身に宿す俺は、陰陽師なのにすべてをグーパンで解決する。


https://ncode.syosetu.com/n1457if/


新連載開始しました。

15万文字ぐらいかいてます、滅茶苦茶面白いですんでぜひ!

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