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第124話 この剣は守るためにー5

◇灰 視点


「会長!!」


「なに心配せんでよい。こいつ力はS級以上じゃが戦闘はなっておらん。ガハハ、昔のアーノルドを見ているようじゃの!! のう! アーノルド!!!」


 そういって会長はことごとくマーリンの攻撃をいなし続ける。

合間合間にアーノルドへと叫ぶ会長の声、しかしアーノルドは一切反応はしない。


「まったく……脳みそまで筋肉でできとるとはいえ……操られるなど不甲斐ないのぉ……お前さんを倒せば解けるのか?」


 そういって会長は再度構える。

怒り狂ったマーリンは剣を握りしめ力の限り振り下ろす。

しかし、くるりと後ろに投げ飛ばされて、宙に舞う。

圧倒的な技術の差、かつて俺が遊ばれて倒されたときのように会長はマーリンを翻弄する。


 攻撃はいなせる、しかし会長の攻撃はマーリンの魔力の鎧は超えられない。

ダメージはほとんどないように見えるが、それでも時間は稼いでくれる。


「わかりました……」


 俺はその姿を見て頷いた。

そうだ、この人は天道さんやレイナの師であり、誰よりもこの世界で長く最前線で戦ってきた人だ。


 なら俺が今やることは。


「……信じます!!」


 俺は白剣を構えて、視線を移す。

彩は会長に一旦任せることにした。

まずは目の前の暴君と、龍神に集中する。


 集中し、全力を出す。


 それでも届かないかもしれない頂点にいる二人なのだから。


 その時だった。


「……白の神。神の騎士!!」


 龍神オルフェンがまるで人間のような叫びをあげる。

突如その体に黒い魔力がまるで鎧のように纏われた。


 さらに直後、まるで黒い風を身に纏う。

その黒い風が龍神の黒い鎧をさらに守り、風神の名を体現する。

俺はそれがおそらく、もう一つのスキル風神なのだと直感した。

俺は心会話を発動し、オルフェンの言葉の意味を理解する。


「殺す……」


 しかし理解した言葉に込められているのは憎悪と殺意。

決して分かり合うことなどできないと感じさせるほどの怒りだった。

そして俺はランスロットさんの記憶で知っている。


 かつて白の一族が龍の一族にしたことを。


「……恨んでも仕方ないとは思うけど。俺にだって負けられない理由がある」


 生存競争、近くに強者同士がいるのなら争いは生まれるだろう。

白の一族と龍の一族も同じことが起きていた。

そして勝者は白の一族で、龍の一族は居場所を奪われた。


 その結果が、黒と共闘して白の一族を滅ぼそうとしたのだろう。


「我らの同胞をお前達、白がどれほど殺し、その手に持つ剣のようにしたと思っている!! 忌々しい白の神のせいで、我ら最強だったはずの龍の一族はまるで奴隷だ!!」


 怒りと共に空を飛ぶ龍神オルフェン。

どうやら話など通じないし、俺は自分の手に持つ剣を見る。

龍王という魔獣の魔石から作り出した剣、きっと昔も同じようなことが起きていたのなら彼らの怒りはもっともだ。

同胞を殺されたんだろう、俺のランスロットさんの記憶にはしっかりとそれがあった。


 かつて魔獣として、害獣として龍を討伐し国を支えた白の一族。

食料にだってしていたし、武器の素材にだってしていた。

違う種族が近くにいれば争いが起きるのも仕方ないのかもしれない。


「……どっちが正しいかなんて言うつもりはないよ。それでも俺は……」


 俺は黄金の目を輝かせ、龍神を見る。

向かってくるのなら敵だ、それにこいつはもう止まらないだろう。


 だから。


「……戦う覚悟はもうできている」


 神の眼を発動させて、スキルを確認した。


 龍神オルフェンが持つスキルは二つ。


 風神と龍神装。


 龍神装は、オルフェンが纏っている黒い鎧、反映率を30%上昇させる。

俺の最優の騎士の上昇と同等の破格の性能。


 そしてもう一つのスキル、風神。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

属性:スキル

名称:風神

効果:

・あらゆるデバフ無効

・自身の魔力に触れている空気を自由に操作することができる。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 直後、龍神が空を飛ぶ。

まるで自由自在に体を操っている。


「空を飛べるのは一応龍だしなって思ってたらスキルの効果か……──!?」


 空で龍神が手を振るった。

それだけでその手から真っ黒な斬撃の刃が飛んでくる。


 空から次から次へと黒い刃が俺に向かって飛んでくる。

一撃一撃で、地面がまるで避けたように切り裂かれる威力。


 俺は神の眼でその動きを確認し、よけ続ける。

当たればさすがに今の俺でも骨まで達するかもしれない斬撃が無尽蔵に飛んでくる。


 だから俺は避けるのではなく。


「……よし」


 剣を構えて、息を吐く。


 集中。

先ほどまで色々ありすぎて、混乱していたがやっと戦える。

深呼吸して、心を落ち着かせ、怒りで沸騰していた脳を切り替える。


 俺は白い剣を振るって。


「はぁぁ!!」


 その黒い刃を切り裂いた。

龍神が手を振れば刃が飛び、俺が一振りすればその刃は真っ二つに叩き割れる。


 レイナを圧倒した龍神オルフェン。

俺の今の真覚醒したステータスですら圧倒されている。

でも俺にはこの剣技がある。


「その剣技!! やはりお前か! 神の騎士!!」


 その剣技を見て龍神オルフェンが叫ぶ。

かつてランスロットさんと戦ったオルフェン。

その時は五分の戦いだったと記憶している。


「あのときは邪魔が入ったが! 今度こそ──!?」

「いや、今度は俺が勝たせてもらう」


 だが俺にはみんなの光がある。

俺は上空に飛んで一方的に攻撃してくる龍神を見て発動した。


「真・ライトニング、真・ミラージュ」

「──!?」


 雷鳴一閃、雷神と化し、幻影となる。

龍神の側面に瞬間移動した俺はその速度そのままに剣を振るった。

ミラージュも発動し、透明になり一瞬だけは認識できない俺の初見殺しの合わせ技。


 龍神は反応できていない。

この一撃で決めて見せる。

俺はその龍神の首だけを見つめて、剣を振ろうとした。



ぞわっ。



 直後全身から寒気がした。


 死の感覚。


 俺の戦いの経験が、ランスロットさんの磨き上げてきた経験が、今すぐそこから離れろと警鐘を鳴らす。

このまま振り切ればオルフェンを倒せる。

だが、その欲を振り切って、俺はライトニングを発動させてその場から逃げた。


バチッ!


 全身から汗が吹き出し、体中の鳥肌が立っていたことに気づく。

俺は今ほんの少しのミスで死んでいた。

少しでも欲に負けて、剣を振っていたのなら死んでいた。


「はぁはぁ……まじか……」


 俺の髪の毛の端がまるで焼け焦げたように消滅している。

もう少し遅ければ俺の頭がこの髪の毛のように塵も残さず消し飛んでいただろう。

俺は先ほど自分がいた場所を見る。


 空間をえぐり取るように空中で、その巨大な手を振り切ってたのは最強。


 再度俺に立ちはだかるこの世界の頂点。


 その頂点が空から落ちて、俺の前にもう一度立つ。


「Hey……ボーイ。リベンジマッチだぜ?」


 黄金色に輝く髪をまるで獅子のように逆立てて、獣の神が俺を見る。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

属性:スキル

名称:獣神化

効果:

・全ステータス30%上昇

・超直観:自身より魔力の低い存在の位置を常に把握できる。

・攻撃時のみ知力を攻撃力に合算させる。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

「……お前の力も大概だな。アーノルド」


 俺のミラージュは看破される。

さらにいえばライトニングで死角に移動しようが、こいつは獣神化の力の一つ、超直観で俺の位置を把握する。

まるで本当に獣だな。

さらに攻撃時に知力を反映? ということは260万? そろそろインフレがおかしいことになってきてるぞ。


「当たれば一撃KO、骨すら残さずぶっ殺すか……」


ドスン!


 そして俺の後ろの龍神オルフェンも落ちてきた。

俺の前には獣の神アーノルド、俺の背後には龍の神オルフェン。


 どちらも俺より圧倒的上のステータス。

一対一でも苦戦は必至、二対一など希望はほぼない。


 彩は人質に取られ、逃げられないし、会長は何とか時間を稼げている状態。


 状況は絶望的。


「卑怯とはいうなよ、神の騎士!! これは生きるか死ぬかの戦いだぁぁぁ!!!」


 俺の背後からオルフェンが叫んで風神を発動させる。

アーノルドも拳を握り、魔力の放流が瓦礫共々吹き飛ばす。

確かに絶望的だ、それでも俺は逃げるわけにはいかないからと剣を握って叫びをあげる。


「それでも俺は!!」


 俺が剣を構えて、たとえ二対一でも勝ってみせると覚悟を決めた時だった。


『疾風迅雷!』


 空からまるで隕石のような勢いで何かが落ちてきた。


 俺とアーノルドの間に落ちてきた何か。

その衝撃に、一旦距離を取るアーノルドとオルフェン。


 俺は一体なんだとそれを見つめていた。

砂煙が落ち着いて、視界が開けた時見えたのは真っ赤な棒?


「これって……もしかして……」


 俺とアーノルドの間に落ちてきた風と雷を纏った真っ赤な棒。

まるで物語に出てくる如意棒のよう。


 そして俺はこれを知っている。


『よっと……さすがに日本は遠いな……』


 その如意棒の上に空から音すら立てずに降りてきた英雄を知っている。

地面におりて、突き刺さる如意棒を手に取った。


『おい、糞脳筋わがまま大王』


 黒い髪に鋭い目、それでもどこか優しそうな柔らかい雰囲気。

少しだけ癖がある髪と耳に真っ黒なピアスをはめて、右目の下には泣きぼくろ。


 手に持つ如意棒をくるくると器用に回して構えを作り、アーノルドに向かって言い放つ。


『大事な弟なんだ、守らせてもらうぜ』

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