第六話 嵐の前の静けさ
今回も読んで頂けると嬉しいです!
駿と入れ替われるのはあと2回だけで、その2回で家庭の問題とユイちゃんとの関係、この2つを両方解決できるのだろうか。
どのみち、まず今やる事はこの2つの問題に因果関係があるかどうかを調べる事が優先事項になってくる。
それに、入れ替わってた時の記憶はどうなっているのも確認しなければならない。
恐怖とワクワクが共存している状況だが、月曜日が早く来てくれとこんなにも思った事は初めてだった。
「夕飯できたわよー」
母親に呼ばれたので一旦思考を停止した真は、夕飯をしっかり食べ月曜日に備えた。
月曜日。
いつのと同じように登校していた真は、高校最寄りの駅の改札を出たところで、1人で歩いている香織を見つけた。
「おはよ」
音楽を聴いていた香織は、急な挨拶に少しびっくりしていた。
「お、おはよう 驚かさないでよー」
イヤホンを外し、ポケットにしまう香織。
「すまん。 昨日は解散したあとユイちゃん何か言ってた?」
「駿に関する話はしなかった。あんたには感謝してたよ!」
「俺は何もしてないよ」
「ユイちゃんからしたらさ、話聞けただけでも気持ちが楽になったんだと思うよ」
そういうもんなのか。と勝手に納得した真は話を変えた。
「そういえば、駿はもう教室にいるかね?」
昼休みや放課後はサッカー部の人達といつも過ごしてる駿と話す時間があるのは朝のホームルーム前くらいなのだ。
「いるだろうけど、机で寝てると予想」
香織の言う通り、駿は朝練のあと机で寝てる事が多い。
「ははっ確かに」
しかし、教室に着いてみるとそこに駿の姿はなかった。
廊下では、朝練終わりのサッカー部を見かけたので教室に駿がいないのは珍しい状況であったが、香織はそれに対して特に不思議がる事はなかった。
「今日はまだいないのか、、残念」
「珍しいな」
真はそう言いつつも不安を感じていた。
結局、駿が居ないままホームルームが始まり、担任からは今日駿が風邪で休みである事を知らされた。
その日の昼休み、真は隣の席の香織に一つの提案をした。
「香織、今日の放課後に時間ある?」
「あるよー。どこか寄ってく?」
「まだ駿には伝えて無いんだけど、駿の家にお見舞いに行かない?」
「大賛成!! ホームルームの後、駿にメッセージ送ったんだけど、まだ既読もつかないし心配してたんだよね」
香織も自分なりに駿の事を心配していたようだ。
「それなら家に言って大丈夫か俺が聞いておくよ」
「任せた! この後、お昼ユイちゃんと食べるんだけど一緒に食べる?」
一瞬ためらった真だったが、また何か聞けるかもしれないし、せっかくの誘いを2回も断るのは失礼だと思い一緒に食べることにした。
真が学食のパンに対して香織とユイちゃんのお弁当は華やかだった
「2人はいつも一緒にお昼食べてるの?」
「週に2回くらいかな。他の日は私はクラスの子と食べてるし」
「香織がクラスの人とそんなに仲良くなってるなんて知らなかった」
それに比べて真はまだ全然クラスに馴染めていなかった。
「香織ちゃんは人とすぐに仲良くなるのが早いんですよ。中学の時からそうでした」
ユイちゃんは自分の事の様に嬉しそうにニッコリして話している。
そして、その様子から2人の仲の良さがうかがえる。
「羨ましい関係だよ。てか、ユイちゃん俺に敬語じゃなくていいよ」
「私、この話し方に慣れてしまっていて、、、」
「ユイちゃんはお嬢様だから話し方も上品なんだよ」
香織から横槍が飛んできたが、確かに香織の発言には説得力があった。
容姿はもちろんだが、それとは別にたたずまいが落ち着いていて話し方だけでなく、動作一つ一つが丁寧で上品に見えるのだ。
「そうだったんだ。それならユイちゃんが慣れてる話し方で大丈夫だよ!」
「ありがとうございます」
ちゃんと真の目を見て話すユイちゃんに真は少しドキッとした。
そしたら今度は香織が急に爆弾投下した。
「今日、駿が風で休みなんだけど、ユイちゃんも駿のお見舞い一緒に行く?」
本気なのか冗談なのか香織の表情からは分からない。
「え、、え??」
さすがにユイちゃんも焦っているようだ。
本当は行きたい。けど振られた自分が行くのは迷惑。この2つの感情がせめぎ合ってるのが焦り具合から見てとれた。
その時、一旦場を落ち着かせる様に真のスマホが振動した。
送り主は駿だった。
返信遅くなって悪い!嬉しいけど風邪移したくない
駿の意見はもっともである。
香織とユイちゃんにも内容を見せると、香織にスマホを取られた
長居しないから! それにどうせ仮病でしょ??笑 BY香織
真がスマホを取り返し、画面を確認した時にはすでに既読がついていた。
分かったよ お持ちしております笑
駿からの返信も早く、家の場所が送られてきた。
「私の勝利!」
そう言った香織は誇らしそうにしている。
この強引さが嬉しい時もあるのだろうなと真は思っていた。
「で!ユイちゃんはどうする??」
意地悪な表情でユイちゃんを見ている香織は何だか面白がっているように見える。
「行きたいけど、放課後部活あるので、、、。」
「それなら俺たちはお見舞いの後で、ユイちゃんは部活の後で集まる?駿には会えないけどさ」
ユイちゃんに助け舟を出す真。
「それでお願いします」
結論が出た所でお昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴った。
放課後、下駄箱に行くとすでに香織が待っていた。
「早くー」
香織に急かされ、2人は駅に向かって歩き出した。
「そういえば、ユイちゃんて何部なの?」
昼休み本人に聞きそびれたことを香織に聞いた。
「吹奏楽だよ。中学の時からやってて、何回も表彰されてるくらい上手だよ」
「そんなに凄いのか。香織は部活入ってないの?」
「美術部入ってるよ。うちの高校の美術部緩いから、毎日行く必要ないし書きたい時に書けるから良いんだよね」
偏見ではあるが、性格的にスポーツをやっているかと思っていた真は驚いた。
「美術は予想外だった。今度、絵見せてよ」
純粋にどんな絵を描くのか真には興味があった。
「機会があればね〜。真は部活入ってないの?」
「俺は帰宅部だよ。部活入ってないからバイトでも始めようかなって思ってる」
「帰宅部なのは知ってた バイト始めたら教えてね!遊びに行くから」
なら聞くなよと思ったが、悪い気はしなかったし真は会話を楽しんでいた。
「話変わるけど、香織は駿とユイちゃんが付き合ったキッカケとか知ってるの?」
「私がどこまで話していいのか分からないから、今日ユイちゃんと合流した時に話すね」
ちゃんとその辺の配慮ができる香織は本当にユイちゃん思いだなと真は思った。
駿の家の最寄駅に着いた2人は、駿に渡すスポーツドリンク等を買うためにドラッグストアに立ち寄った。
ドリンクはお店の一番奥に置いてあり、そこに向かうまでに通った店内の棚に避妊具が置いてあることに気づいた真は勝手に1人で気まずくなっていた。
その棚を過ぎ、飲み物を選びながら香織が話しかけてきた。
「ユイちゃんてヤリ捨てされたとかじゃないよね?」
このての話をするのは香織でも恥ずかしいのだろう。こちらを見ないで、飲み物を探しているフリをしている。
「ないと思うけどな」
「だよね。その辺の事はユイちゃんにも聞き辛くてさ。それにユイちゃんは純粋で優しいから男に都合いいように利用されないか心配になるんだよね」
香織の言いたいことは真にも理解できた。
優しいユイちゃんは、ヤリ捨てされてる事に気づかず、自分に非がある振られたと考えてしまっても不思議はない。
「憶測で駿を悪者にするのはやめよう」
真のこの発言で一旦この話題は終わりを迎えた。
そして買い物を終えた2人は、駿の家へと向かった。
まだ距離はあるがすでにマンションが見えていた。
「あれが駿の家」
「すご!イケメンでお金持ちって噂は本当だったんだ」
感心している香織を横目に真はある質問をしてみた。
「駿のご両親てどんな人なのかね?」
父親の方は知ってるだけにかなり意地悪な質問だと自覚はしている真。
「優雅そう。けど意外と厳しかったりするのかね? ユイちゃんの家も門限とかあったりするからさ」
少し当たっている香織の推測に肝を冷やす真であったが、表情には出さない様に頑張った。
「2人ってもしかして共通点多いのかもね」
そんな話をしているうちに、いよいよマンションへと到着した。
次回から一段と話が進んでいきますので早めに投稿します!