第五話 知らぬが仏
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翌朝、部屋に響き渡るスマホのアラームの音で飛び起きた真。
昨日の出来事は精神的に真をかなり疲労させていたようで、朝になるまでが一瞬に感じ、二度寝をしたかったが、今日もかなり大切な用事がある事を思い出し、仕方なく布団から出るとにした。
アラームを止めると同時に、画面を見ると香織からのメッセージが一件ある事に気づいた。
「おはよ! 遅刻しないでね」
わざわざ朝に送ってくるあたり、香織にとっての今日のイベントの大切さが伺える。
「おは 了解」 と返し、真は支度を始めた。
待ち合わせ場所に10分前に着いたが香織とユイちゃんの2人はいなかった。
日曜日の駅前は活気があり、さまざまな人が歩いていた。
「この中にも、駿と同じ様に家庭に問題を抱えた人がどれくらいいるのだろうか」
そして、その事を知りつつも隠しながら香織とユイちゃんに会わなくてはいけないと思うと少し憂鬱になった。
そして、そうこう考えているうちに2人はやってきた。
「ちゃんといた!こちらがユイちゃん」
香織に促される形でユイちゃんが挨拶を始めた
「湯島 唯です。香織ちゃんから話は聞いてます、真島くんですよね?」
駿の元カノだから可愛いだろうなとは分かっていたがその予想は正しく、
ユイちゃんは華奢で黒髪、目はパッチリしてて守ってあげたくある様な美少女だった。
「こんにちは。真島です 俺もユイちゃんの事は香織から聞いてたよ」
ちょっとした挨拶を交わした後は本題に移る為にカフェへと入っていった。
それぞれが注文したドリンクを手に持って1つの丸テーブルに3人で座った。
「早速だけど、本題に入るね」
香織の一言をきっかけに会話が始まった
「ユイちゃんはできる事なら駿と寄りを戻したいと思ってて、真にもそれに協力してもらえないかと思って今回誘ったの」
香織の発言を受けて恥ずかしいのか、ユイちゃんはの耳は少し赤くなったいた。
「協力するのはいいんだけど、俺にできる事なんてあるの?」
入れ替わりを使って協力するよ!だなんて言えるわけもない。
「駿君が嫌がってるのに無理に復縁したいわけじゃなくて、私に非があったなら改善する事で復縁できるかなって、、。それでも無理ならきっぱり諦めようと思ってます」
こんな良い子をなんで振ったのか真は理解できないでいた。
それに、ユイちゃんからの発言から察するに駿の家庭の事はバレていないと思えた。
もし、家庭の事を知っていたら自分に非があったかもしれないだなんて考えには至らないだろう。
「そういえば!真は駿からユイちゃんについて何か聞けたの??」
香織が思い出したかのように聞いてきた。
「それとなくね、、、。本人から具体的な回答をもらったとかじゃなくて、駿の言動からしての俺の推測になっちゃうけど」
駿の言動とは、入れ替わってる時に駿のスマホにユイちゃんとの画像が残っていた事からきているものだった。
「それでもいいから教えて!」
「教えてください!!」
香織とユイちゃんからの圧すごい、、、
「分かったから、、。 駿が復縁したいと思ってるかはわからない。
けど、ユイちゃんの事を嫌いになったから振ったんじゃないと思う。」
あくまで俺の推測だからな と最後に付け足した。
「だとしたら何が原因なのかなぁ、、はぁぁ」
ため息をする香織。
「ユイちゃんは駿と連絡取ってないの?」
真の質問にユイちゃんが答える。
「取ってないです。 振られたのにこっちから連絡したらしつこいと思われるかもしれないですし」
「なるほどなぁ」
「、、、、、、、、、」
みんな黙り込んで、それぞれが頭の中で、自分なりの予想をしていた。
「本人に聞こう!!」
急に香織が喋りだすもんだから、2人はびっくりして現実に引き戻された。
「それしかないよな。昨日の夜、駿と連絡取ってて3人で遊ぼうって送ったんだよね。駿も乗り気だったし」
「それなら決まりね!」
この状況を香織は楽しんでいるように見える。
「2人に任せっきりになっちゃうけどお願いします」
ユイちゃんは少し表情が明るくなっていた。
香織は「任せて!!」と意気揚々だったが、真はそんなテンションになれなかった。
「俺は恋愛経験が無いからわからないけどさ、家庭の事情が恋愛に影響する事ってあるのかね」
疑問に思っていた事の答えを女子に求めた。
「考えたこともなかったな、、、私は」
「私も」
香織とユイちゃんの意見は同じ様だ。
「まぁそうだよな」
実際、真も今回の件がなければ考えることも無かったかもしれない。
なんでこの質問をしたのか理解できずに女子2人は真を見て不思議がっていた。
まさか駿の家庭に問題があるなんて2人は思いもしないだろう。
それに、事実を知ったところでユイちゃんは駿の事を嫌いになってしまうのだろうか?
もしかすると家庭の事がバレそうになったから、駿から振ったのかもしれない。
もしそうならば、ユイちゃんは真実を知らなほうがいいかもしれないし、駿も知られる事を嫌がるだろう。
もし、家庭の問題を理由に駿がユイちゃんを諦めたのだとしたら何か力になれないだろうか?
「俺が駿にライン送っておくから、明日また学校で詳しい日程決めよう」
「これ以上は私達だけで話してても解決しないしね」
そういって3人は解散する事にした。
香織とユイちゃんは2人で買い物してから帰るようだ。
真も誘われたけど、そんなに気にはなれず1人帰る事にした。
自宅に着いた途端、一気に疲れが押し寄せた真は誰もいないリビングのソファにダイブした。土曜と日曜の二日間のイベントでは相当神経をすり減らしていた様でそのまま眠ってしまった。
どのくらい眠ってしまったのだろうか。物音で目を覚ますと、買い物から帰ってきた両親が買ってきた物を冷蔵庫にしまっていた。
「おかえり」
まだ開けきらない目を真はこすっている。
「ただいま。今日の夕飯はハンバーグだぞ」
ハンバーグにテンションが上がっている父親が嬉しそうに教えてくれた。
「18時くらいには夕飯なると思うから」と母が情報を付け足してくれた。
「りょーかい」
そう言って真はリビングのテレビをつけた。
夕方前のこの時間はどのチャンネルもニュース番組ばかりだったが、あるタイトルに目をひかれた。
「家庭内暴力で夫を逮捕」といったものだった。以前なら大して気にもしなかったが、今は他人事と考える事はできなかった。
もし駿の父親を逮捕することができれば駿は解放されるだろうか?
けど、世間に知れ渡れば駿の生活はあっといまに豹変してしまうだろう。
「ひどい親もいるもんだよなー」
父もこのニュースに食いついていた。
「なんでこんな事件が起きるのかね」
「なんでだろうなぁ。いつの時代もこの手の事件は無くらないんだよな」
珍しくもないといった感じで反応する父親だったが、真はいつも以上に悲しく感じていた。
「部屋にいるから、夕飯できたら教えて」
リビングから自分の部屋へと移動し、今度は自分のベッドに倒れ込んだ。
仰向けになり、スマホを確認すると香織からメッセージが来ていた。
「今日はありがとう!ユイちゃんも感謝してたよ。ユイちゃんに真の連絡先教えておいたから!」
友達の欄を確認すると確かに、ユイちゃんから申請が来ていた。
香織には適当に返事をし、スマホを枕元に置いた真は次にどのタイミングで入れ替わりを行うかを考え始めていた。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
時間ある時にどんどん更新していこうと思います