第三話 光と闇
今週中に次話投稿します!
他の部屋と変わらず、バスルームもかなり綺麗だった。
脱衣所には、真っ白なフェイスタオルとバスタオルが畳まれた状態で3枚ずつ重ねてあり、これから使ってしまうのが勿体無いくらいだ。
この状況からして、両親は出かけているのではなく、仕事で家にいないのではないかと真は思い始めていた。
このマンションの家賃が高いであろう事は、高校生の真のも分かる事である。
そして、そこに住んでいるとなると駿の両親は収入も多く、仕事で忙しくても不思議はない。
この家の綺麗さもハウスキーパーさんを雇ってると考えれば辻褄が合う。
そう考えつつ、シャワーを浴び始めた真は浴室内にある鏡で駿の体を見て、胸のあたりにアザがある事に気がついた。
服を着てる時は痛みがなかったので駿がこの前怪我をしていた事をすっかり忘れていた。
シャワーを済ませ、洗面台の鏡の前で髪を乾かし始めた。
「やっぱり駿の顔って整ってるな」と思いつつ、出かける準備を始めた真は
自分がイケメンとして女子達と遊ぶ事にワクワクし始めた。
「まだ少し時間に余裕あるな」
そうして真は、再び駿の部屋に戻り香織の為に何か情報はないか探し始めた。
カーテンを開けるだけで駿の部屋はガラリと雰囲気が変わった。
窓からの見える景色は綺麗な青空で、部屋にはしっかりと太陽の光が入り一気にお洒落な部屋に変わった様に真は感じていた。
しかし相変わらず、部屋に物は全然置いてなく有力な情報が得られそうな物は探しても出てこなかった。
次に真が狙いを定めたのは駿のスマホだった。
罪悪感を感じつつもまずは写真フォルダから見始めた真は、駿が女子と2人で映ってる写真が数枚ある事に気づいた。
「この子がユイちゃんだろうな。写真残してるって事は未練あるのか??
けど、駿からフったって香織は言ってたしな。」
この場で考えても結論は出ないので、真は写真意外にLINEのトークやSNSをチェックしたが特に有益なものはなかったし、
ユイちゃんとの写真は残していたが、ユイちゃんとのトーク履歴は消されていた。
これ以上、家からは何も出てこないと思い、真はこれから会う駿の友人達の名前や関係をLINEのトーク履歴で確認してからマンションを出て、集合場所に行く事にした。
集合場所に着くとそこにはすでに男の友達が来ていた。
「お待たせ!シンジ!」いつもの駿の様にテンション高めで真は挨拶した。
シンジは駿と同じサッカー部だ。
「よ!部活お疲れさま!」
そうやって会話をしている内に女子2人も合流した。
真にとって女子2人とも初対面であり、クラスも同じになったことがない。
1人は上村 凛
もう1人は江藤 春
2人とも駿と去年同じクラスで、クラスが違う今でも仲が良いようだ。
「お待たせーー!待った??」リンが言った。
「かなり待った。待ちくたびれた」シンジは遠慮せず返した。
「そんなんだから彼女できないんだぞー。駿からも何か言ってやってよ」
「2人が付き合えばいいじゃん」真は咄嗟に思いつきで言ったが、それが2人には受けたようだ。
「ないない」そうやって声を揃えて否定した2人は笑っていた。
「私も2人お似合いだと思うけどなー」ハルがさらに追い討ちをかけた。
「シンジは友人としてはいいけど、男としては最低でしょ〜」
「そこまで言う??」
そんな冗談まじりの会話で遊びはスタートした。
真はこの前まで、駿は住む世界が違うと勝手に思っていた。
しかしまだ入れ替わって数時間しか経っていないが、その考えが間違っている事に気付かされた。
イケメンだからといって、お店でサービスされる事もない。
面白い事を言えば3人は笑ってくれるが、つまらない事を言えば、しっかりつまらないと言ってくれた。
これは駿がイケメンだからではなく、人望があるからであって顔は関係無いと真は理解し始めた。
「ここで休憩してこーぜ」
シンジの提案で4人はカフェに入り、それぞれが飲みたいものを注文してから、テーブル席に座った。
「あー疲れた、、」人を演じることに神経を使って。いた真は結構疲労していた。
「俺もだよ。明日も部活と考えると憂鬱だ」そう言ってシンジは甘そうなホイップが乗ってるドリンクを飲み始めた。
女子2人も少し遅れて席にきた。
「このフラペチーノめっちゃ可愛くない?」リンのテンションが上がっている。
「確かに」
真は普通に答えたが、それを駿の友人達は見逃さなかった。
「駿、何かあった??」リンの質問に緊張する真
「部活で疲れてさ」この回答で誤魔化せるか不安な真は頭をフル回転させ、次の質問に備えた。
「疲れてるにしても、今日の駿は静かすぎるだろ。もしかして恋の悩みか??」シンジは恋愛話がしたそうにしていた。
「確かに!駿がここまで静かなのってユイちゃんと別れた時以来じゃない?」
ハルのこの発言に真は慎重になった。
ユイちゃんとの情報を得られるかもしれないが、検討違いの発言をしてしまったら駿のイメージを変えてしまいそうであったからだ。
「まさか未練があるとか??」リンがニヤニヤにしながらこっちを見ていた。
「俺からフったんだし、未練とかではないよ」必死に作り笑いで誤魔化した。
「そもそもなんでフったんだよ。いまだにそれが謎だわ。めっちゃお似合いだったのになー」シンジは駿の恋愛が上手くいかなかった事を自分の事の様に思っていてくれた」。
「それ同じこと思ってた!モテるのにずっと彼女作ってこなかった駿にようやく彼女できたのに、すぐ別れちゃうんだもん」リンも残念そうにしている。
真が知っている事は 駿がユイちゃんをフった という事実だけである。
駿がすぐに彼女を一方的にフる人間とは思えないし、
あまり考えたくはないが、ユイちゃん側に問題があったのかもしれない。
「駿、まだユイちゃんとの写真消してないでしょ??ほんとは未練あるんでしょ??」
「俺もそれは思ってた!」ハルとシンジは同じ考えの様だ。
真もそれについては同じ事を思っていた。
「うーーん、、、少し、、」
写真が残ってるなら、嫌いではないだろうと勝手に解釈し、人の事を少しくらいなら理解できると勘違いしたこの発言は、この先の結末に大きな違いを作るキッカケとなってしまう。
「やっぱり〜」3人はニヤニヤしてこっちを見てくる。
その時、助け舟の様に駿のスマホが鳴った。
相手は駿の父親で、「これから帰る」とだけLINEに送られて来ていた。
「もうこんな時間か。駿は門限大丈夫なの?」
シンジは当たり前のように言ってきたが、真には初耳であった。
「少し帰るの遅くなる」父親に素早く返信し、スマホをポケットにしまった真は、シンジに返事した。
「門限といってもそんな厳しいわけじゃないから」そう言ってまた、4人で談笑してから、20時半くらいに解散した。
家の最寄り駅に着いたのが、21時であったが特に父親から連絡もないので
門限はまだ過ぎてないと思っていた真は今日の事を振り返りつつマンションに向かっていた。
「ただいまー」そう言って部屋に入り、リビングへ向かうとそこにはスーツ姿の父親がテレビを見ながら、コーヒーを飲んでいた。
「おかえり」そう言って父親は立ち上がり、真の方にやってきた。
ドンッッ!!
鈍い音とともに胸あたりに痛みが走り、その場に倒れこんでしまった真、、、、
読んでいただきありがとうございます!
次話でさらに色々なことが起こるので、そちらも読んでいただけると嬉しいです!