第十八話 駿の想い
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スマホのアラームが鳴り、朝が来たことを知らせている。
真は憂鬱そうにアラームを止めるが、ベッドから起き上がる様子はない。
「なんで打ち明けちゃったんだろ、、、」
昨日の自分の行動を真は後悔していた。
香織を信じていない訳ではないが、香織の行動ひとつで嫌われ者になる可能性がある事に真は少し怖くなっていた。
しかも、打ち明けた次の日に休んだとなれば不審がられても仕方ないので、結局は登校するしか選択肢はないと判断した真は、ようやく起き上がった。
そして、いつも通りに支度を済ませ、家を出た。
いつもと変わりなく学校に到着したが、教室の前の廊下で香織とユイちゃんが2人で談笑してるのを見かけた真は、自分の心拍数が上がるのを感じた。
昨日の段階でユイちゃんにも駿の秘密は打ち明けているが、香織にもその秘密を打ち明ける事を伝えてはいない。
つまり、香織とユイちゃんは2人とも「私と真だけが駿の秘密を知っている」と思っている状況なので、香織とユイちゃんの間で駿の秘密が共有されたら少し面倒な事になると真は思っていた。
「おはよ」
流石に無視する事はできず、真は2人に挨拶をした。
「「おはよー」」
真に気づいた2人も返事をした。
その様子に違和感はなく一安心した真は教室へと入り、自分の席についた。
しかし、安息も一瞬だった。
「おは!! ちょっと話せる??」
声の主は駿だった。
「お、おはよ。 いいよ」
「ありがとう! じゃあ放課後、帰らないでちょっと待ってて!」
そう言うと駿はいつも一緒にいるグループへと戻って行った。
そこにはやはり石崎の姿もあった。
ユイちゃんとの会話を終えた香織は教室へと戻ってきた。
「ユイちゃんに言ったりしてないから大丈夫よ」
「それは助かる」
「協力して欲しいことがあるんだけど」
香織からの申し出に真は少し警戒した。
「どんなこと?」
「アキちゃんに駿を諦めてもらうように説得したい」
周りに聞こえない様に香織は小声で言ってきた。
「それは俺も思ってたし、協力するよ」
こうなる事は何となく予想していた真は提案を飲んだ。
駿の正体を知っているにも関わらず、応援する方が酷だと思っていた。
「ありがとう。とりあえず今日の部活でアキちゃんの状況を把握してくるから、また連絡するね」
悩みがまた別の悩みを引きつけてくる状況に真はうんざりしつつも、その現実を受け入れるしかない事も知っていた。
あっという間にやってきた放課後。
「じゃあ連絡するから」
そう言い残して香織は部活へと向かった。
いつものグループとの会話を切り上げた駿が約束通り、真の所へとやってきた。
「食堂行かね?」
本題には入らず、移動を提案してきた駿に真は従った。
食堂と隣接している購買部の前に来た時、駿は止まった。
「相談料として好きなもん奢るよ!」
やっぱり何かの相談か、、と真は思いつつも遠慮する事なくお菓子を選び、食堂へと入っていった。
「お待たせ!」
そう言って駿は、真と自分の分のお菓子を持って、真の向かい側の椅子に座った。
「それで相談の内容なんだけど、、、。今度、俺と真、香織、ユイちゃんの4人で遊びたいんだけど、、」
そう言って駿はさらに言葉を続けた。
「俺とユイちゃんが付き合ってた事はみんな知ってると思うけど、結構後悔があってさ、、。復縁は無理だろうけど最後に一回だけでいいから遊べたらいいなと思って」
そう言うと駿は恥ずかしさを誤魔化すために、お菓子を食べ始めた。
「分かった。 けど香織にも相談していい?」
「もちろん。 ユイちゃんと仲良い香織は俺を警戒するだろうし、真から伝えてくれた方が助かる。」
「香織がユイちゃんと仲良い事はやっぱり知ってたんだ」
「うん。 付き合ってた時にユイちゃんから聞いたことあったし。 ユイちゃんと別れて、香織にも嫌われてると思ってたからクラス同じって知った時は怖かったよ」
「そう考えても仕方ないか」
そう言って真もお菓子を食べ始めた。
「だからこそ、今こんなに仲良い事が信じられないよ。」
駿のこの発言に真は心が痛んだ。
自分が駿の秘密を打ち明けたことで香織に嫌われてしまっている可能性が高いからだ。
「本当は復縁したいの?」
答えは入れ替わりの時に知っている真だが、あえて聞いてみた・
「したいけど、色々あって無理な状況な感じでさ。ハハハ」
駿は愛想笑いして誤魔化した。
「駿の気持ちは分かったから、香織に聞いてみるよ。ただゴリ押しはできないと思う」
「それだけでも嬉しいよ! そろそろ部活行かないとだから、何か分かったら教えて!」
そうして駿は去って行った。
1人残された真はまだ食べ終わってないお菓子をつまみながら、今後の立ち回りを考えていた。
また近いうちに更新します!
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