第十二話 黒い真実
少し短いので近いうちに次話投稿します!
放課後。
真は石崎と入れ替わるために、すぐ帰路についた。
サッカー部の練習が終わるまでにはまだ2時間近くあるので、急いで帰る必要はないのだが、入れ替わる時はソワソワしてしまうので早く帰って心を落ち着かせようと真は考えていた。
放課後直後の通学路を駅に向かって歩いている生徒は少なく、多くの生徒が部活に所属しているのがこの光景からもわかる。
そんな道を1人で歩きながら、真は今の状況を1人で振り返っていた。
駿の父親の暴力。
そして駿は父親から暴力を受けつつも、本人はユイちゃんに暴力を振るっていた。
そんな駿に復讐をしたいユイちゃん。
駿とユイちゃんを復縁させたい香織。
この状況を考え、真は一つだけ確信している事がある。
みんながハッピーエンドを迎える結末は絶対に訪れない という事である。
そんな状況で自分に何ができるのか?と考えたとき、この能力を使ってハッピーエンドは無理でも、最悪のバットエンドだけは避けるために状況を変えて行くしかないだろうと思っていた。
駿を父親の暴力から助けたいという気持ちは変わっていない。
しかし、ユイちゃんに暴力を振るっていたのが真実ならば、その罰は受けるべきだとも思っている。
とはいえ、ユイちゃんの復讐が行き過ぎたものにならない様にもしなければならない。
正直言って、今ここで手を引く事もできると真は考えている。
ユイちゃんに協力するとは言ったが、能力を使わなかったら出来ることなどたかが知れていると思う。
そう理解しつつも、真は自分の好奇心を抑えられないでいる事も分かっていた。
自分が干渉することで、この物語はどんな結末を迎えるのだろうか。
少しは役に立てただろうか。
この能力を良いことに使いたい。
好奇心とちょっとした正義感に駆られた真は結局、深く関わって行く事に躊躇しない。
家に着いた真はすぐに自分の部屋へと向かった。
制服からラフな部屋着に着替えてから、スマホで石崎の生年月日を再確認し、入れ替わりの準備を始めた。
部活が終わる時間までまだ1時間近く時間があので、ベッドに横になりながらスマホをいじる真は睡魔に襲われいつの間にか眠ってしまった。
ハッと目を覚まし急いでスマホを確認した真。
時刻は19時15分で、部活が終わってから30分弱経っていたので急いで真は入れ替わりを始めた。
目を閉じ、石崎の名前と生年月日を頭の中で唱える。
目を開けると、目の前にはスマホをじっている駿がいた。
状況を理解するために、ゆっくりと周りを見渡す真。
多くの学生やサラリーマンがいて賑やかな店内は、学校の最寄り駅の前にあるファストフード店だと分かった。
ポケットに重みを感じたので取り出すと、それは石崎の物と思われるスマホだった。
そのスマホをインカメにし、自分の顔が石崎である事を確認した真は入れ替わりの成功に安心した。
「そういえば、前回紹介してくれた子とは長く続きそうだわ」
スマホをいじりながら、表情変えずに駿は言った。
「あ、あぁ。それならよかった」
駿の発言を全く理解できないでいた真であったがとりあえず返事をした。
発言から察するに、石崎が駿に紹介した女子と上手くいってるという事なのだろが、真に取っては初耳なので驚きが顔に出ていないか不安になる。
「その子とはどんな事してるの?」
「え??今更それを聞く? 知ってて俺に紹介してるくせにさー」
そう言ってスマホを置いた駿は、頬杖をついて真の方を見た。
「ほら、、最近は変化あったのかどうか気になってさ」
そう言って真も駿の方を見る。
「いやーー、ほとんど変化ないよ?プレイの一環として腹パンしたり、首絞めしたりだよ。」
やっている事に少なからず罪悪感を感じているのか、駿の表情は暗くなった。
「なるほどな」
あまりの衝撃に一言しか言葉が出ない真は、怪しまれないように必死に次の言葉を考えていた。
「やめるつもりは無いのか?」
「相手は納得した上でしてる事とはいえ、いけない事だとは分かってる。けど、やめられな。その理由もお前なら分かるだろ」
一定の反省はしつつも、駿がやめられない理由。
真の脳裏には、父親の暴力のがよぎる。
しかし、石崎が駿に協力している理由がその件と一緒なのかは分からない。
「あーーあ、こんなことしてなければユイちゃんと続いてたかもな。」
自虐的にそう言った駿であったが、顔はどこか悲しそうに見えた。
「まだ未練あるのか?」
こんなチャンスはないと思った真は質問をする。
「あるよ。 けど修復不可でしょ。長く続けばいずれ本性はバレるし、なんならバレかけたしな」
そう言った駿は、気を紛らわす為にスマホをまたいじり始めた。
「本性ね、、、。」
会話がひと段落した所で、駿は帰る支度を始めた。
「そろそろ帰るか」
そう言って駿とは駅の改札前で解散し、真も入れ替わりを解除した。
ここまで読んで頂きありがとうございました!