第十一話 焦り
今回も読んで頂けると嬉しいです!
夕日に照らされている通学路。
部活終わりの学生達が駅へと向かって歩いて歩いている。
その中に、真と香織の姿もあった。
「結局、具体的な事は決まらなかったな」
「そんなすぐに決まるもんでもないし気にしないで。コンクールまで時間あるし」
学校から駅まではそんなに時間は掛からないが、この短い時間で真は行動を起こすことにした。
「今度、駿も含めて3人で遊ぶときにユイちゃんとなんで別れちゃったのか聞いてみない?」
「私も気になってたし聞いてみたいと思ってた!」
香織もその事はずっと気になっていたのか、すんなり賛成してくれた。
「けど、駿が嫌がる様なら無理に深掘りするのはやめておこうな」
「もちろん。 真は彼女いた事ないの?」
「悲しいことにないな、、。 香織はどうなんだよ」
「片想いならあるけど、付き合った事はないよ」
ここで俺に彼女の有無を聞くって事はもしかして香織は俺の事を気になってるのか?なんて自惚れるほど真は自分に自信があるわけではないので普通に聞き流した。
帰宅した真は、ユイちゃんにメッセージを送っていた。
「今週末、3人で遊ぶからその後で空いてる日あったら教えて」
送った後はすぐSNSアプリを開き、駿のアカウントのプロフィールから
石崎 陸のアカウントを真は探した。
そして発見した石崎のプロフィールにはしっかり生年月日が表示されていた。
入れ替わりに必要な情報を手に入れた真。あとはいつ実行するかだ。
時間が短い昼休みよりかは、部活終わりのタイミングで入れ替わり、駿と一緒に下校するのが理想である。
部活の終わる時間はどんなに遅くても18時50分と決まっているので、その時間になるまで適当に時間潰して過ごそうと真は決めた。
明日の事を考えていると、スマホが振動し、メッセージが届いたことを真に知らせた。
送り主はユイちゃんだった。
「わかりました。 来週の水曜日の放課後でどうでしょうか?」
オッケー と返信し真はスマホを置いた。
翌朝、真はいつも通りに登校していた。
教室に着くと、朝練が終わった駿や石崎たちがいつもの様にグループを作り会話していた。
すでに香織もいて、自分の席でスマホをいじっていた。
「おはよ。今日、放課後に美術部行ってもいい?」
「おはよー。え、、美術部に入るつもり?」
香織は若干、引いていた。
「いや、今日放課後に予定あるからそれまで時間潰したいなと思って」
「美術部をなんだと思ってるの。 まぁいいけどさ」
香織に不機嫌そうな様子はなく、あっさりと許可が出たことに真は少し驚いていた。
「サンキュー。他の部員の邪魔になりそうだったら帰るから」
香織から許可も貰ったところで会話を一旦切り上げ、真は自分の席に座った。
昼休み。
香織からまさかの声が掛かる。
「お昼、美術室で食べない?」
「い、いいけど。ユイちゃんもいるの?」
まさかの問いかけに少し動揺する真は香織の真意が理解できないでいた。
「いないよ。 もしかしたら後輩たちがいるかも」
予想外の誘いに緊張気味の真にとって、2人っきりより後輩たちがいた方が少しは気が楽になる気がしたので後輩達がいる事を願いながら、香織と一緒に教室を出て美術室へと向かった。
美術室の前まで来ると、中から声がするのが聞こえ、真は少し気が楽になった気がした。
「お邪魔しまーーす!」
元気な香織の挨拶に続き、遠慮がちなトーンで真も またお邪魔します と挨拶をした。
2人の挨拶に気づいた3人の後輩達が一斉に2人を見るが、そこに警戒した様な意思は感じられず、むしろ歓迎してくれてる様な視線を2人に向けていた。
「こんにちは!先輩達もここでお昼ですか?」
「そう。お邪魔じゃないかな?」
遠慮がちに聞く香織とは対照的に歓迎ムードの後輩達は一つの提案をしてきた。
「お邪魔じゃないですよ。 よかったら一緒に食べませんか?」
後輩達がいる事を予想はしていた香織だったが、まさかこんな提案されるのは予想外であったのだろう。
真の方を向き、真に判断を仰ぐかの様に目線を合わせた。
「俺は構わないけど」
悪い後輩達ではなさそうだし、ここで断ったら香織の印象にも関わりそうだと思った真は提案に賛成した。
「2年の真島 真です。よろしく」
美術部の輪に加わるにあたり、真は自己紹介をした。
真の後に続き、後輩達も順番に自己紹介を始めた。
ロングヘアーで黒縁メガネをかけているルミちゃん。
黒い髪をポニーテールしているアキちゃん。
こげ茶色の髪でショートヘアーのコノミちゃん。
3人の顔と名前が一致したところで早速、後輩達からの質問が真と香織を襲う。
「お二人は本当に付き合ってないんですか?」
高校生の男女2人が一緒に昼を食べる=カップル思われても仕方にとは思いつつも改めて真は否定する。
「そんな関係じゃないよ」
信じてもらえたかは別として、真はしっかり否定しておく。
「じゃあなんで2人で一緒に過ごしてるんですか?」
「香織に誘われたからだけど、、、」
そう答えた真は香織の方を見た。
「友達の恋を成就させるための作戦会議をしよう思ってね」
そう言いつつ、香織は真と目を合わせる事なく下を向いている。
そんな香織の様子を見て後輩達はニヤニヤしていた。
「それより、3人はみんな彼氏いるの?」
香織のこの発言によって形勢は逆転した。
今度は先輩からの質問攻撃が始まった。
「まだ入学したばかりなのでいませんよ、、」
「彼氏はいないけど、片想いはしていると、、」
香織の推理によってアキちゃんの顔が赤くなっていくのがわかった。
「アキちゃんは誰に片想いしているんだい?先輩に教えてみ?」
さっきとは打って変わって香織が生き生きしている。
「無理に言う必要ないからね?」
真はアキちゃんに助け舟を出すが効果はなかったようだ。
「サッカー部の駿先輩かっこいいなって、、、。話したことすらないんですけどね」
恥ずかしさが頂点に達したのか、アキちゃんは赤くなった顔を手で隠した。
「駿イケメンだもんねー!」
真がそう言いつつ香織と顔を合わせた。
「後輩からも人気とはすごい!」
香織も必死にフォローしつつも、真と香織の間には焦りがあったが後輩に悟られるわけにはいかず、どうにか誤魔化す。
駿を復縁させるための作戦会議するために美術室に来たとは口が裂けても言えないと思いつつ、恋愛話をして昼休みを過ごした。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
次回は入れ替わりによって新たな真実がわかります!