第十話 香織の悩み
今回も少し短いですがその分、更新頻度上げて行きます!
読んで頂けると嬉しいです
学校に向かう真の足取りは重かった。
いつもの様に教室に入ると、そこには既に香織の姿があった。
「おはよ」
真から声をかけるも、香織の返事にいつもの様な元気がない。
「悩み事?」
「コンクールに出す絵、どんなの描こうか全然決まらなくてさー。何か良い案があったら教えて」
そう言いつつ、香織はスマホで様々な絵画の画像を見ていた。
「分かった。けどあまり期待するなよ」
そうして始まった1日。
昼休みに、駿と遊ぶ日程を決めたくらいであっという間に放課後を迎えた。
「真、このあと暇?」
香織の言葉で真は帰り支度を一旦止める。
「暇だけど」
「それなら美術部の部室来ない?」
「興味はあるけど、俺は部外者だぞ」
「問題なし! 絵を描いてる子がいたら静かにしてれば大丈夫」
「それなら遠慮なく」
そうして2人は部室へと向かった。
美術部の部室は少し離れたところにあり、かなり静かな環境で絵が描けるような場所にある。
「失礼しまーす」
遠慮がちに言いつつ、真は部室へと入った。
そこには3人の女子生徒が絵を描く準備をしていた。
「今日、お客さんいるけどいい?」
3人の女子に許可を求める香織。
「はい!このあと私の友達も来るので。 香織先輩の彼氏さんですか?」
「ありがとう! ないないww」
どうやら先にいた女子3人は後輩のようで、真が香織の彼氏だと疑っている様だ。
「絵持ってくるからその辺に座ってて」
そう言って香織は準備室へと言ってしまった。
適当に置いてあった椅子に座った真であったが、後輩から観察されてる様な気がして落ち着かなかった。
「邪魔しちゃってごめんね」
真は後輩たちに断りを入れた。
「い、いえ!そんなことないです。香織先輩が人呼ぶの珍しいのでつい気になってしまって」
「そういうことね。香織って絵上手いの??」
その質問に、後輩たちは一瞬びっくりしていた。
「う、上手いどころじゃないですよ!」
このタイミングで準備室から戻ってきた香織の手には額縁に入れてある5枚の絵画があった。
「お待たせー」
「私たちも見て良いですか???」
香織の言葉に先に反応したのは、真ではなく後輩たちだった。
「も、もちろん」
後輩たちの食いつき方に香織もびっくりしたのか言葉が詰まっていた。
そして机に並べられた5枚の絵画。
大きさは縦が54cm 横38cm あり、どの絵もモチーフが違う事は素人の真にも分かった。
綺麗な海が描かれている風景画や、木々に囲まれた中で1人グランドピアノを弾いている女子の絵。
絵とは思えないぐらリアルに描かれているフルーツの絵があると思えば、見ているだけで暖かさを感じられる様な抽象的な絵もある。
「めっちゃ上手いな、、、」
真も素直な感想が口から出た。
「さっき言ったじゃないですか!上手いどころじゃないって意味がこれです」
後輩たちは自分の事の様に誇らしそうにしている。
そして、この5枚の絵画は全てコンクールで賞を取っている様だ。
「嬉しいけど、なんか照れくさいな」
珍しく香織の頬が少し赤くなっていた。
「こんなに上手いなら、何を題材にしてもいい絵が描けそうなのにな」
「私、気分屋な所があるからさー。自分の中で納得できたものじゃないと描く気になれないんだよね。実際、そうして描いた絵はどれも落選してるし」
「一枚描き上げるの大変そうだし、モチベーションは大切ってことか」
真の意見に賛同する意味で頷く香織。
「3年になったら受験も本格的に始まるでしょ?そう考えたら2年生の内に一枚で良いから最高の物を描きたいって決めたんだけど、そしたら全然モチーフ決まらなくてさ」
「それは悩むね、、」
みんなで良い案がないか考えていて静まり帰る部室。
1人の来客によって沈黙は破られた。
「失礼しまーす」
元気よく挨拶してきたの後輩の友達だった。
「お二人のお邪魔してすいませんでした」
3人の後輩たちは、尋ねてきた友達に合流して真と香織から離れっていった。
「香織には失礼かもしれないけど、こんなに上手いとは思わなかったよ」
「ひどいなーー」
そう言いつつも笑っている香織。
「普段はどうやって案を考えてるの?」
「んーー。私生活の中で急に思いつくんだよね。例えばこの絵」
そう言って指さしたのは木々に囲まれた中でグランドピアノを弾く女子の絵だった。
「これはユイちゃんなんだよね。ユイちゃんの演奏を聴かせてもらった時に思いついてね」
「それなら高校生の今しか描けない学校生活を描くのはどう?かなり範囲広いけど」
「それは私も考えたんだけどね。学生生活を特別って感じるのは学生じゃなくなったときであって、まだ学生の自分からするとそんなに特別感を感じられないのよね」
香織の意見に納得してしまい、結局この日は結論が出ないまま下校する時間になってしまった。
ここまで読んでくださりありがとうございました
主人公に身近な人物の悩みが判明し、これからそれらの悩みが交差して行きます!