転生賢者に憑り付かれたようです。
「結局ミラねぇはお父さん達が言うように妖精なの?」
『うーん。妖精とは別物かな。別にイストちゃんの魔力があふれているわけではないしね』
ミラねぇと初めて会ってから2年が経った。
あれからもミラねぇはずっと傍にいたが、お父さんやお母さんはミラねぇの姿は見えないそうだ。
始めはミラねぇの事を無視しているのかと思って怒った事があるのだが「妖精さんは守護を授けた人にしか見えないの。無視しているわけではないのよ?ごめんねイスト」と母さんに謝られてしまった。
僕はミラという名前の妖精と話しをしている。ということになっている。
妖精と話をするということは小さい子供の頃にはたまにあるそうだ。
魔力を扱うことの難しい子供は魔力を無意識に溢れさせてしまうことがある。その溢れた魔力に精霊が反応して話をするということがあるそうだ。精霊の干渉により現れる精霊の分身体の事を妖精と呼んでいる。ミラねぇは『あいつら子供のころにだけ構っているのよ?ロリショタ野郎よ精霊なんて』と吐き捨てていた。
妖精と話をする事を「精霊の守護を授かる」と呼び、その時に精霊の名乗った名前を
自分の子供に名付け、再び守護を頂こうという風習もあるそうだ。
ちなみに父さんも母さんも守護を授かったことはないらしいので、僕の名前は妖精とは関係はない。
「妖精じゃないならミラねぇはなんなの?」
『私はただの人間よ。ちょっと魔法が人よりできる只の人間。今の状況を考えるに本来の私の体は死んでしまって、イストちゃんの体に転生したっていうところなのかな?この状況を転生っていうのかどうかちょっと微妙なところだけど』
ミラねぇは大昔に賢者と呼ばれた凄い人だそうで、ミラねぇの生きていた時代の魔法文化を100年は進めたと言われる天才だったそうだ。ちょっとできる程度の人ではないと思ったが『できるできると言ってるとやっかいごとを押し付けてくるの。イストちゃんも謙虚さを忘れてしまったらダメよ』とのことである。
とある魔法を研究中に気が付いたら僕の体に魂だけ宿るような形になってしまったらしい。
ちなみにどのような魔法の研究だったかは本人もよく覚えていないそうだ。
魂だとか転生だとかそんなことを言われても僕にはよくわからないが、ただひとつ思ったことがあった
「え、じゃあ別にミラねぇって僕のお姉ちゃんじゃないじゃん」
『そっ、それは違うわイストちゃん!私とイストちゃんは体は一つだけど双子のようなものじゃない。双子だったら先に生まれた方が上!私達の場合だと、自我を持つのがどっちが早いかという話になるはず。私はイストちゃんが生まれた時から自我をもっていたから私がお姉ちゃん。そこだけは譲れないわ!』
ということで絶賛おねぇちゃん継続。非常に食い気味である。僕としては兄でも弟でも特に変わらないので従っておこう。それに妹弟はこれからできるかも知れないけど、姉は新しくは出来ないしね。
「ミラねぇはこれからどうするの?ずっと僕と一緒って言うのもいやでしょ?」
『確かに実体が無いことで不便はするかも知れない。今の状態じゃ自分の力で魔法も使えないし。でもね………』
「でも?」
問い返し見上げるとそこにはミラねぇの笑顔があった。
『私!むかしっから弟が欲しかったの!その弟の成長が特等席で見られる!そんな贅沢!これ以上の利点は存在しないわぁぁぁ!』
僕に実体はないので格好だけ抱きつき頬擦りしながらミラねぇが叫ぶ。
あぁ村の人が言っていた気がする。これブラコンって奴だ。
ミラねぇは実は精霊でしたって言われても今なら信じることが出来る気がしてきた。