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ぼくは気がつくと窓の外にいた。猫が見せた背中の取手、ぼく以外に初めてみた背中の取手。「なんでキミにもあるの?それはぼくのこれと同じなの?」頭に浮かんだたくさんの聞きたいことは口を通り過ぎていっしまい、ぼくはただひたすら猫のもとに駆け寄りたかった。


そこに窓があることなんて忘れていた。さっきお散歩に行ったばっかりなんてもう理由になっていなかった。ぼくは言葉よりも速く、考えるよりも速く、猫のところまで来ていた。


「やっと出てきたね」


猫はゆっくりと笑顔になってぼくに言った。


「さあ行こう。みんなが待ってるよ。」


猫の後を追ってぼくも体が動き出しそうだった。心は、考えるいとまもなく、自然に動いていた。

でも、ふと体が止まった。全く動かなくなった。


「でも、でも、ママさんが勝手にお外にでちゃいけないよって。1人でお外に行ったら危ないよって。」


ぼくはどうしたらいいか分からなくなって、ポロポロと涙か溢れてきてしまった。猫がぼくにぽんと手を乗せた。


「大丈夫。ちょっと行くだけだから。すぐにまた帰ってこられるよ。」


ぼくは勢いよくママさんの方に振り返った。でも、涙で滲んだぼくの世界では、ママさんも滲んでいて、よく見えなかった。ママさんに止めて欲しかった。窓の外に出ちゃったぼくを見つけて欲しかった。でもぼくはママさんが今何をしているかもわからないまま、猫はぼくを連れて行こうとしていた。


「ほら、行くよ」


猫はそう言うと、ゆっくりと宙に浮かんだ。ゆっくりゆっくり浮かんで行ってた。ゆきが体にかかるのを感じながら、それでも寒い感じはそんなにせずに、ぼくは猫に連れられて上って行った。次第にゆきはいなくなって、お空はパァっと晴れていた。猫はぼくの方を見て「さぁ着いたよ」と言って、手を離した。


ぼくの体に積もったゆきはすっかり溶けてしまった。ぼくは遠くに来ちゃったことだけわかった。そしてただただママさんを思い出していた。


「ママさん、ゆきはいなくなっちゃったよ」


猫がぼくの言葉を聞いてぼくの方に寄ってきた。


「こんなに自由な世界に来たのに、きみはまだママさんのことばっかり言っているのかい?もっと気になる事があるだろう?」


滲んでいたママさんが少しずつくっきり見え始め、次第に見えなくなった。すると温かいお日様と広い雲が広がる透き通った青い世界が見えた。そして、猫の向こうにたくさんのもふもふしたのがふわふわしているのがみえた。


「ここはどこなの?みんな何しているの?」


猫はニヤッと笑って答えた。


「答えはこれだよ」


猫はまたくるりと向こうを振り向いた。そしてぼくに見せた背中には、大きな翼があった。その翼をわさわささせて、猫はふわふわ飛んでいた。

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