抱っこのぬくもり
公園を出たぼくたちは、お家とは違う方に向かっていた。
ママさんはとてもゆっくり、いっぱいぼくに喋りかけていた。
ぼくはずっとママさんの胸の中で、ママさんを見上げていた。
お空はあまり明るくない曇り空で、まだひらひらとゆきが舞っていた。
あ、、、このゆきは、お空の上から降ってくるんだ。。。
ぼくは、ふってくるゆきを少し食べてみようと、ペロペロしてみた。
うーん、でもやっぱりすぐに消えちゃうみたい。
不思議だなぁ、どこにいっちゃうんだろう。
ママさんはぼくの頭を撫でて、ぼくにゆきがかからないようにしながら、温めてくれた。
ママさんの抱っこはとっても温かいです。
ぼくは、ママさんを見上げながら、なんどもママさんのお顔をペロペロした。
ママさんはその度に、ぼくの方を見てくれた。
いっぱい笑ってくれた。ときどき困った顔もしていた。
ママさんはずっとぼくに喋りかけていた。
ぼくはママさんの声を聞きながら、ママさんの胸に揺られていた。
さっきまでの寂しさは、この温かさで溶けていくみたいだった。
不思議だな。ぼくの中にぼくが見える。
ぼくの中のぼくが、優しく笑っていてるーーー
そんな気がした。
「ねえゆきちゃん。ここ覚えてる?」
ママさんがそう行って立ち止まったのは、少し広い場所。
始めはどこかわからなかったけど、すぐに思い出した。
「わたしたちが、はじめて会った場所だよ」
ぼくとママさんが出会った場所。
近くに大きな川がある広い原っぱ。
ぼくはここにたくさんの思い出がある、気がする。
でも、ぼくとママさんがここに来たのは多分あの日からはじめて。
ぼくたちはここで出会ったんだ。