言葉と気持ち
ぼくは誰かに見つめられたり、声を掛けられたりするのが好きだ。だっていつもいっぱい褒めてくれるしいっぱい撫でてくれる。
みんな笑顔でぼくの方に来てくれるから。
でもここのところは、あんまり嬉しくない。やっぱりきっと、あれがあるからだと思う。ぼくは、あれが誰かに見られるのがとっても嫌なんだ。
だからなのかな。いつもなら楽しいはずの公園なのに、ぼくは一刻も早く帰りたかった。
だってほら、ぼくの周りにはたっくさんのもふもふたちがぼくにつきまとってくるから。
「ねーねーあそぼー!」
「ぼくと遊ぼー!」
「なんかひらひらしたの降ってるよね!」
「お尻嗅いでもいい?ねー嗅いじゃうね!」
「ちょっと体当りしまーす!どーーん!」
「こっちはわたしの陣地だからあっちでやってよね!」
「えっと・・・お腹こしょこしょしてもらえますか?」
「まったくうるさいのぉ、、、、うるさい!うるさい!うるさい!!!!」
「あー、お腹へったかもしれないなぁ・・・」
「あそぼー」
「ねえねえ、ここ寒くない?」
「追いかけっこしよー!」
・・・いつものぼくはこうなんだろかと思うととっても恥ずかしくてたまらないほどに、公園のもふもふたちは、わちゃわちゃしている。
いつもなら楽しくって遊び回っているんだろう。でもなんか気が乗らないんだ。
ママさん・・・早く帰ろ。
じっと座り込んでママさんを見つめた。ママさんもそんなぼくに気づいてくれた。
ゆっくりとぼくの方をみて、ぼくを撫でてくれた。
「どうしたのゆき?帰りたい?」
ぼくは、うんっていいたかった。
でも、ぼくがうんっていっても、ママさんにはわからないから、ぼくはママさんをじっと見つめていた。
それに、ぼくも本当はもっと楽しみたかったから、うんって言えなかったのかもしれない。
ごめんねママさん。ぼく今なんか変な気持ちなんだ。
楽しかったはずなのに、悲しくって。
ひとりじゃないのに、さみしいんだ。
ああ、ぼくがママさんと同じ言葉を話せたらな。
ママさんにいまのぼくのこと、ちゃんとつたえられたのにな。
キュルンーーー キュルンーーー
ぼくの声は、ゆきといっしょに溶けていくみたいだった。
「そっか。ねえゆきちゃん。わたしもね、なんだかわからない気持ちなの。」
ママさんの声は、とっても優しくって、ぼくは思わず泣きそうだった。
でも、そういって微笑んでくれたママさんも、とっても悲しそうに見えた。
「ねえ、ゆきちゃん。すこし寄り道して帰ろっか」
ママさんはぼくを抱っこして、ぼくたちは公園を出た。