男
本やテレビラジオを見ていると、同年代が活躍している場面をよく目にするようになった。別段気にするほどでもないし、メディアに取り上げられる=素晴らしい才能の持ち主、として格付けされるのが世の常。一般常識だろう。
だが、この男は大した努力もせず。それに見合った知識も持たず。なんの行動もせず。その人たちに対して、嫉妬している。
そんなのはちゃんちゃらおかしいことは百も承知であるし、ネットで叩くことも貶すこともしない(人としての限度を超えたら裏垢でこれでもか、と貶すが)。だが、鼻で笑ってしまうぐらい、嫉妬している。
なぜかは分からないが、おそらく自己顕示欲と承認欲求の塊なのだろう。私は思う。そんなもの生まれてきたときにでも捨てておけ、今からでも遅くはない。捨ててしまえと男に散々つばを吐きかけながら言っているのだが、なに俺はまだ終わってはいないだの、俺は本気を出していないだの聞いていて恥ずかしいことを抜かしやがる。その分空想妄想はお手の物。架空の物語を作るのはどんどん作っては消して、組み合わせる。スクラップアンドビルド、と男は言うが普遍で有名なこの世の中だ。世に出さなければ、沈殿する一方である。
しかし、私はこの男はもう少しこの世の中を知り、他者の物語を好めば、ある程度の人間様にまでは上り詰められると確信している。まぁ、この男と同類である私は幾分か誇張する表現を使い、この男を甘やかしてきた。この男がこうなってしまったのは私の責任でもある。どうにかしなければ、と思う一方、何もしなければいいか、とそっぽを向く側面もある故、ほとほとこの男には飽きてきている。
この男にも何が人様並みの、趣味、というものがあればいいな、と思う日々である。